13歳、余所でどうぞと言いたいですが?!
「だからね、」
「……」
「なにがどうしてこうなったのかな、って!」
そういう風に、エミリちゃんに泣き言をもらすことが出来たのは、皇太子の爆弾発言から丸二日経った後だった。
というのも、あのあと家に帰らず真っ直ぐエミリちゃんの家に行ったら追い返されたのだ。いわく。
『あのねぇ、こちとら下級の、しかも結構底辺のほうの男爵家なのよ?急に伯爵家のご令嬢が来て対応出来るわけないでしょ!話があるなら、あんたが招待しなさいよ!』
私とエミリちゃんの仲だし、別に大した対応しなくてもいいのに……と思わないでもなかったけど、言われたことはマナー的にももっともだったので、私はその日は渋々家に帰って、言われたとおり招待状を用意した。
返事としては丸一日後に「明日行きます」って一言だけ。来てくれるのはありがたいんだけど、しょうがなく感はちょっとだけでも隠して欲しかったな、と思った。
まぁ、そんなこんながありつつも私は、ようやくロイやサーシャを追い出した二人きりの部屋で、遠慮なく、エミリちゃんにことの次第をぶちまけられたというわけだ。
「……」
なのに、あらかた話し終えて若干すっきりした私を、エミリちゃんはじとーっとした目で見た。
「……?な、なに?」
「いや……本当に分かってなかったんだと思って。呆れてたの」
「えっ、」
「あんなに分かりやすいこともないわよ」
「う、うそぉ」
そういえば、セルシア様も皇太子は分かりやすいって言ってた気がする。
やっぱり、家族の成せるわざとかでもなんでもなかったのか。そして、そんなに分かりやすいと言われているのに、なんで私は全然気付かなかったんだろう。
「……というか、皇太子って裏表キャラじゃなかった?」
「……ここまでストーリー変わってたら、キャラもなにもないでしょ、絶対。そもそも、俺様キャラが全然違うじゃない」
「……確かに、」
私が唸ったのを鼻で笑って、エミリちゃんは紅茶をすすった。いや、だから、主人公としては、どうなんだろう、それ。
私の前だし、攻略対象もいないし、今さらなのかもしれないけど。
攻略対象……うーん。
「……ねぇ、エミリちゃん」
「なに?」
「この流れであれだけど、皇太子の好きな人って……」
「あんたでしょ」
実にばっさり言われてしまった。皇太子ですら、ふんわりと言ってたのに。
「うう、」
「なにを今さら」
「だ、だって、おかしいでしょ?主人公はエミリちゃんなのに。私なんか、出てくるかどうかも分からない脇役だし、どうしてこんなことになっちゃったのか……」
「……」
「エミリちゃん?」
「あんたが言ったのよ?いつまでもゲームがどうとか、主人公がどうとか言ってる場合じゃない、って」
う。
確かに、二人揃って男子生徒に捕まってたとき、頭に血がのぼって、そんなようなことを言ったような気がする。
「言われたときはあんたの言う通りだと思ったわよ?あそこから出るのが最優先なのは本当だったし。でも内心ではやっぱり、モブのくせに、とか、私は主人公なのに、って思ってたのよね、実際。でも、あんたは目の前で、あんなことになって……それどころじゃなくなった。怖かったわ。あんたが、本当に死ぬんじゃないか、って」
「エミリちゃん……」
「その時、改めて思ったの。ここはゲームの世界なんかじゃなくて、現実なんだ、って……ここで、生きてるんだわ、私たち……って」
「……」
「だから私も、乙女ゲームの世界がとか主人公がとかはもう、いっそ夢だったと思って、この世界で、普通の男爵令嬢のエミリとして、ちゃんと生きていかなきゃって思ったのよ。だからあんたも、前世とかゲームの世界とか考えてないで、皇太子に言われたみたいに、しっかり向き合ってみたら?」
「う、うーん……」
(……そりゃ、そうしたいのは山々なんだけども)
──向き合う。
かつて私が皇太子へ向けた言葉だ。いくら面倒でも、女の子たちの好意をちゃんと拾って欲しかったから。それが、巡りめぐって、まさか返ってくるとは思わなかった。完全に、予想外である。
「えっと、あのね、エミリちゃ……」
「なーんて。今のは全部建前よ!」
「は?」
「ぶっちゃけ私、こうなったらなんか、プレイヤーになったつもりで、あんたが皇太子攻略するの見てるのもありだな、って思ってるのよね」
「…………な、え?」
「だってほら、もうこれってもう、あんたが主人公の別ストーリーみたいなもんじゃない?攻略対象者が皇太子の。こうなったら、私がモブみたいなもんよね。で、傍でゲームのストーリーを楽しむ、と。完璧!」
「え、えぇ……?」
これは本当に「主人公に成り代わろうとしてるなんて信じられない」だの「最低」だの言ってた人と同じ人だろうか?
というか、エミリちゃん……それは流石にぶっちゃけすぎでは?




