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「……」

「……」

「あんた、まさか……」


うわぁ「貴方」から「あんた」になってる。


「あんた、転生者なの?!」

「……」


この言い草だと、エミリもその「転生者」なんだろう。つまりは、私と同じように、前世を覚えてるということだ。


「……っ、どうりで、モブのくせにでしゃばってくると思った……前世の記憶があるのをいいことに……最低!」

「……はぁ?」

「展開が分かってるんだから、自分のいいように出来るもんね!そうやって自分が主人公に成り代わろうって魂胆だったんでしょ!信じられない!」

「はあぁあ?」


あまりの言いように、私の令嬢の皮もどこかに行ってしまった。さようなら、後でちゃんと戻ってきてね。


「だいたいねぇ、」

「……黙んなさい」

「は?」

「こっちの言い分も聞かず、好き勝手言うもんじゃないわ」

「っ、な!」

「いい?貴方がいくつまでの記憶があって、転生?したのかは知らないけど、私28よ。いい歳した大人なの」


エミリは気圧されたように黙っている。言動を見るかぎり、恐らく年下だったに違いない。


「私、この世界のことは何も知らないのよ。精々、主人公の貴方と攻略対象とさわりのエピソードくらい。ゲームなんてほとんどしなかったからね。ふっ。それで、誰が主人公に成り代わろうって?冗談じゃないわ。私はそういうのには興味がないの。それなのに色々巻き込まれて、逆に大変なのよ、こっちは」

「……」

「それに、貴方が巻き込んだこともあったでしょう。人身売買の事件のとき、私を引っ張ったのは貴方よ。覚えてないの?」


今、思い出したのかもしれない。エミリは唸った。


「いい?いつまでもゲームがどうとか、主人公がどうとか言ってる場合じゃないわ。攻略対象とやらが助けに来てくれるわけじゃないなら、私たちだけでここから出なきゃ。そうでしょ?」

「……」


エミリは一言も発せられないまま、それでもこくり、と頷いた。


「……よし、素直でよろしい」

「!な、なによ?!」


思ったより素直だったので、思わず頭を撫でると、エミリは顔を真っ赤にしてしまった。え、可愛い。


「かわいい!」

「はぁ?!」


あ、思わず声に出ちゃった。

まぁ、すでにお互い令嬢としては手遅れなので、今さら取り繕う必要はないだろう。

エミリは嫌そうな声を上げたけど、照れてるだけにも見えたので、私は遠慮なく頭を撫で続ける。


「ちょ、ちょっと!」


毛を逆立てた猫みたい。呑気に思った。猫はあまり好きなわけじゃないけど、ツンデレ美少女は可愛らしくて、なんだか癒される。


「……エミリちゃんって呼んでいいかしら?」

「はぁ?もうなんなの?!そんな場合じゃないんでしょ!」

「あ、そうだった」

「なんなのよ、もう……」


つい、テンションが上がってしまった。だって最近、こういうのなかったから。

私はとりあえず息を吐いて落ち着く。可愛らしいツンデレ美少女を、私がここから救い出してあげなくては。


「さて、エミリちゃん。体力に自信はある?」

「……ていうか、勝手に呼ぶんじゃない……」

「私のことも、どうぞリーリアで呼んでね。で?どう?」

「……あんまり。前は学生だったけど、部活は文化部だったし、今は貴族令嬢だから、運動なんてしないし……」

「そうよね……」


私だって同じようなもんだ。皇女の事件があったから領地で体力つけた訳だけど、それがなかったら多分もっと体力はなかっただろうから。


「……」


人身売買事件とは違って、情報は全くない。あの男子生徒が単独犯とは限らないのだ。


「……ねぇ、あの男の子の目的はなんなのか分かる?」

「分からないわ。私、ただ連れてこられただけだもの」

「なにか脅されたの?」

「……」

「ん?」

「……ついてくれば、私の願いが叶うって、言うから……」

「……」

「ちゃんと、私が主人公の世界に戻るんじゃないか、って思ったの!」


よくそんな怪しい誘いについて行けるものだ。ちょっと呆れてしまうけど、まぁ、男子生徒についていって命の危機に陥るとは思わないか。


「……まあ、それはいいわ。情報はないけど、とりあえず外に出ましょう。ここがどこかは分からないけど、学園の中であることは間違いないないだろうから、外に出さえすれば多分大丈夫だと思うから……」

「そんなの許されるわけないだろう」


で、ですよねー……。






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