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私はただ、普通に部屋へ帰ってきただけだったのに。

部屋の扉に封筒が挟まっていた時点で嫌な予感はしたけど、そういう予感ばっかり的中するんだから。私はげんなりした。


(はぁ。これどうしたらいいの)


というか、なんでこの手紙は攻略対象じゃなくて、私の部屋にあるんだろう。

私は、おもだってエミリと仲良くしたつもりはない。話しかけられて、皇太子がそれに合流すると、用事があると言って毎度抜け出していたし。そこまで一緒に喋ってもいないはず。


(だからって、こんなの届けられて黙ったままでいられないけど……)


とにかく、手紙に書いてある通り、旧図書館へ向かわなければ。


「……よし」


流石に罠だとは分かっているけど、一人で来ないと主人公が殺されるというのなら、一人で行くしかない。

まぁ、問題は大いにあるけど。


(旧図書館ってそんなのあったの?たどり着けるかしら……)


そう、流石に手紙を置いた犯人も予想外だろう。私が方向音痴だってこと。

大問題である。


「……誰かに場所を聞くのくらいは「このことを誰かに話したら」に入らなかったりしないかしら……」


多分駄目だろうなー……と思う。前世も含めて、こんなことに巻き込まれたことなんてないが、しょうがないそれはいいよーと快く許してくれる犯人なら、そもそも人質なんて取らないだろう。


「……」


私は、ロイ経由で兄からもらった学園の地図を広げた。旧図書館の場所を見つけて、ペンで丸をつける。そして、無くさないように、大事に制服のポケットに入れた。これがなければ、私はそもそも目的地にたどり着けそうもない。


(自分を信じるのよ、リーリア!多分きっと大丈夫!)


頭の中の兄が「なにを根拠に、そんな自信満々なんだ……」と呆れた声を出したけど、そんなのは無視だ。

脚に小さなポーチをつける。学園の制服はスカートが長いので見つかることはないだろう。罠と分かって、なにも本当に身一つで行く訳がない。私にはミゼフじいという心強い味方がいるのだ。

赤い煙が要改良となった日、私は早速ミゼフじいと連絡を取った。なので、赤い煙自体は我ながら完璧な仕上がりだと思う。

そして、私が赤い煙のそれに感動している間に、ミゼフじいはなんと、色々な護身用グッズを作ってくれていた。ミゼフじいったら父や母みたいに心配性なんだから、とそのときは思ったけど、こうして役に立つかもしれない日がくるんだから、ミゼフじいは予知能力でも持ってるのかもしれない、なんて真面目に考えてしまった。

ともかく、だ。

よく分からないけど、手紙が来た以上は、私が主人公を助けなきゃいけないらしい。

げんなりとした気持ちがなくもなかったけど、私は再び「よし!」と気合いを入れて、寮を後にした。

そして、


「リーリア……?」


数分で皇太子に見つかってしまった。





(なんでなの?!)


「……もうそろそろ門限の時間だよ。こんな時間にどこへ行くのかな?」

「ええと……」


そもそもどうして皇太子が女子寮の近くにいるのか。私の顔に書いてあったのか、皇太子が困ったように笑う。


「……なんだか嫌な予感がして、ここで見張りをしていたんだ。アーデム嬢がいなくなっただろう?手がかりがなにかないか、アウクリア先生が調べてくれているけど、まだなにも出てこないし、もしかしたら……リーリアも、狙われるんじゃないかと思って……」

「……」


私はなんとも言えなかった。狙われてないけど、こうしておびきだされようとしているからだ。


「……リーリア、危ないから戻るんだ」


皇太子は固い表情でそう言った。まるで私が、おびきだされようとしているのが、分かっているみたいだ。

でも、それに従う訳にはいかない。なんといっても、人一人の、命が懸かっているのだ。


「……」

「なにか、あった?」

「殿下、」

「なに?」


本当ならこんな手は使いたくなかった。だって相手は皇太子だ。下手したら不敬罪とかあるでしょ。貴族社会だもん。それでも私は、一人で行かないといけないから。


「……すみません!」

「え?」


脱いだ上着を皇太子の顔めがけて投げた。そして、脚のポーチから一つを取り出して、地面へ思い切り投げつける。


「!リーリア!」


黒い煙が辺りを覆った。うわ。これ忍者が使う煙玉みたいじゃない?!ミゼフじい、すごすぎ!


「リーリア、リーリア!」


私を探す声を背にして、私は必死に駆け出した。後が怖いな、と思いながら。


(主人公救出に免じて、どうか、不敬罪とかになりませんように!)






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