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ここはどこ?
ベタだけど、本当にそう思うしかなかった。
「……」
薄暗い中でも見えるのは、苔やら蔦やらが生えた壁だ。先程まで外にいたはずなのに、どうして、気付いたら周囲を壁に囲まれた謎の場所にいるのか。そして、どうして私以外に誰もいないのか。
(……白い影の話の流れからの一人っきりの謎の室内、本当こわいんですけど!)
今の状況を正しく把握するためには、多分周囲を探索なりするべきなんだろうけど絶対動きたくない。やっぱり肝試しなんか参加するんじゃなかった。
(……帰りたい)
悲鳴を上げたのが主人公だったのなら、主人公も多分この変な場所にいるんだろうか。そして、皇太子が探しにきてイベント発生、とかかな。
私は誰が探しに来てくれるだろうか。というか、ちゃんと探しに来てくれるだろうか。
(流石に兄は助けに来てくれるだろうけど……あとロイ)
肝試しは別のグループだったので、まず私が消えたところから把握しないといけない。時間がかかるだろうなぁ、と落ち込んだ。
(そりゃ、見つかるまでなにも起こらないならいいけど……)
そのとき、なにもない場所に、コツ、コツという多分靴の音が響いた。
(ほらー!こういうことになるー!)
別に、主人公じゃないんだから、放っておいてくれたらいいのに。
私は、無駄だと分かりつつ、身を縮こませた。
コツ、コツ。足音はなおも近付いてくる。
(うわぁもうやだぁ)
このまま私をスルーしてくれたらどんなにかいいだろう。
そんな願いもむなしく、足音はすぐ近くで止まった。
「……そこにいるのは誰?」
「……?!」
私は慌てて顔を上げる。
「……り、リーリア……?」
私よりも驚いた顔をしてそこにいたのは、赤い髪、緑の瞳。お色気お姉さんこと、ディーと呼んでくれと言っていた、その人だった。
「……」
「……」
二人して開いた口が塞がらない。
だって、まさか、人身売買事件で会ったお姉さんと、学園で再会するなんて思わないじゃない。
「お、お姉さん……どうして……」
「!」
私が思わずそうもらすと、ディーははっと気付いて、一つ咳払いをした。そして、屈んで私と目線を合わせてくれる。
「ディーでいいのに。ふふ。リーリア、また会えて嬉しいわ」
「あ、えっと……」
「まぁ、色々聞きたいことがたくさんあるんだけど……どうしようかしらね?」
ディーはそう言って、いたずらっぽく笑った。
どうしようって……私に言われても。私がどうしよう、って感じなんですけども。
「……ねぇ、リーリア。貴方、肝試しに参加してたのよね?」
「えっ、そうですけど……」
「それで、どうしてここにいるの?」
「……えっと、なにかに引っ張られたと思ったら、気付いたらここにいて……」
「そう……」
ディーはそこまで聞くと、なにやら考え込むように顎に指を当てた。
それはそうと、美人はそんな姿も綺麗だ。
「リーリア!」
えっ。
ぼんやりディーのことを見ていたら、なんか分からないけど、皇太子が急に現れた。一体なにごとなの?
「で、殿下……」
「大丈夫?怪我はない?」
「えっと、はい……」
「……先生、一体どういうことなんです?」
「……先生?」
先生って、もしかして教師って意味の先生?
ここにいるのは私とディーと皇太子だけ。と、いうことは。
「せ、先生……?お姉さん、先生だったんですか……?」
ディーはにんまりと笑った。
「だから、ディーでいいのに」




