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「……」
(……そうよね。分かってたわ。ええ。分かってましたとも)
「きゃ!」
「っ、と……大丈夫?」
「す、すみません……!そこの茂みが動いた気がして……」
もし今までも私の願いが叶っていたなら、そもそも、皇太子や主人公と出会っていないだろう。人生はそんなに思うようにはいかないものだ。
私は結局、肝試しに参加することになった。
私が参加したことに意味があったのかは分からないけど、皇太子ももちろんというか、参加していた。いや、普通に兄とかも参加してたし、私の参加は関係ないと思うんだけど。
生徒会の主宰ではないといっても、参加者は思ったよりもいた。まぁ、男女が誰でも参加出来るんだからそりゃそうか。
グループ分けの時点で、私は肝試しの参加行列から何気なく外れたかったのに、例によって主人公がまとわりついてきたので叶わなかった。うう。
そして、案の定というか、私は主人公と、皇太子と同じグループになってしまったのだった。
なんでなのよ?!
でも、唯一救いだったのは、主人公と皇太子と私の三人じゃなくて、四人だったことだ。
「……エルディ嬢、また顔色が悪くなってるみたいですけど、大丈夫ですか?」
「……大丈夫ですわ。ありがとうございます、ソフィレ様」
「いえ!なにかありましたら遠慮なくこの腕を掴んでくださいね」
なんて優しいのかしら!
アンリエッタ・ソフィレ。桃色の髪に、アクアマリンの瞳をもつ、暗がりでも分かる儚げな美少女だった。初めて見たときは肝試しのことを一瞬忘れて、思わず見惚れてしまったくらい。これぞまさしく、深窓の令嬢だと、感動した。ものの十分くらいで、深窓の令嬢というイメージは砕け散ったけど。
『もしかして、エルディ嬢はこういうの苦手ですか?』
『……もしかして、顔に出てますか?』
『いいえ。でも、顔色が悪いですわ』
『……』
『エルディ嬢、実は、私はこういうの、大好きなんです』
『え、ええっ?』
『だから、怖くなったら、いつでもお助けいたしますわ』
『……!』
なんていけめんなの?!いや、令嬢だからいけめんはないか。男前!いや、これも違うか。でも、そう思ってしまうくらいかっこよかった。見た目儚げ美少女なのに。
「……」
それにしても、いつまで歩いていればいいのか。
肝試しのルールはシンプルだ。あくまで白い影の正体に迫るのが目的なので、各グループ別々のルートで出ると噂されている第四庭園を目指すというもの。
(第四庭園なら、もうついててもおかしくないはずじゃないの?)
いくら私が方向音痴でも、先導してるのはソフィレ様だし、そもそもグループ行動なので、四人が四人、道を間違えてる、なんてことはないと思うんだけど。
(……このまま普通に帰りたい……)
主人公と皇太子がきゃっきゃうふふしてるのを、いつまで見ていなければいけないというのか。
思わず溜め息がもれたときだった。がさり、と音を立てて茂みからなにかが出てくる。私は恐ろしすぎて喉が凍りついた。
「きゃあ!」
主人公が皇太子の腕へ抱きつく。いや、それは流石に不敬じゃ?とか考えてる暇もない。私は一瞬頭が真っ白になった。
「ご、ごめんなさい!」
あ、ちゃんと人だった。
茂みから出てきたのは男子生徒だった。こんな人肝試しに参加してたっけ?と思ってしまうくらい、あまり特徴はない。
「いや、大丈夫だよ。どうしたの?こんなところから」
皇太子が尋ねる。確かに、肝試しにこんなルートはない。
すると、男子生徒は突然顔色を変えた。真っ青な顔色に、嫌な予感しかしない。
「……で、出たんです……白い、影が、」
もう、本当に帰りたい。




