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13歳、幽霊なんているはずない!





もう。本当にやってらんない。

私は心の中で天を仰いだ。貴族の令嬢として完全にアウトなので、現実には出来なかったのだ。


「エルディ嬢、このお菓子も美味しいんですよ。どうぞ召し上がって」

「まぁ……ありがとうございます」


そろそろ笑顔がひきつりそう。





国王夫妻からの接触でかなり目立ってしまった歓迎パーティーのあの日から、私の学生生活は結構変わってしまった。まぁ、国王夫妻が去った後、自己紹介の嵐に巻き込まれたあれで、ある程度予想はついていたけど。

私は、次の日から令嬢方のお茶会に引っ張りだこだったのだ。


(そりゃ、女の子の友だちはやっぱり欲しいし、この状況は美味しいと思わなくもなかったけど……)


二言目には皇太子の話を聞きたがるので、そりゃ天も仰ぎたくなるというものだった。


『この紅茶いかがです?美味しいでしょう?殿下はお好きかしら?』


『私はこのアップルパイが好きなんですのよ。その……殿下はどうでしょうか?』


知らんがな!

げふんげふん。思わず口が悪くなってしまった。はあ。

確かに皇太子がチョコレート好きっぽいことは知ってるけど、紅茶の好みとか、他になにが好きだとか、そんなこと知っているわけがない。本人じゃないんだから。

まぁ、素で「知らんがな!」と、そっくりそのまま伝えると、卒倒する令嬢もいるだろうと思うので、やんわりとした物言いであくまで私が親しくしてるのは皇女であるセルシアさまだと伝えてはいるものの、あまりにもしつこい令嬢もいるので、そういう令嬢には、直接聞いてみては?と勧めている。ようは、皇太子に丸投げである。

まぁ、流石にそれは……と恥ずかしがる令嬢がいるので──そりゃ、皇太子に急に馴れ馴れしく話しかけられないか──最近では手紙で聞いてみては?と勧めている。皇太子は優しいから無下には断らないと思ったのだ。

恥ずかしくて直接渡せないので渡して欲しいと頼まれたこともあった。仕方がないので面倒に思いつつ私から渡しに行ったときは、流石に皇太子は顔をひきつらせていたっけ。もうしないでくれと頼まれたし。やっぱり丸投げするのはよくなかったかも。

でも、知らんがな!という心の声を押し殺して笑顔でいるのにも限界がある。今度からどうしたものか。


「エルディ嬢?」

「はっ、ええと、なんでしたかしら……?ごめんなさい、よく聞こえなくて」


しまった。お茶会の真っ最中だった。慌てて笑顔を張り付ける。幸い、聞いていなかったのを咎められることもなく、相手の令嬢は笑顔で言った。


「だから、第四庭園の白い影のことです」

「……白い、影?」


ひくっ、と顔がひきつった。令嬢は、そんな私に気付くことなく続ける。


「ご存知ありません?カルバン嬢が見たらしいですわよ」

「あっ、私も聞きましたわ。ほら、あの庭園、女子寮から見えますでしょう?夜中、目の前を白い影のようなものが横切ったのを、確かに見たそうで」

「へ、へぇ……」

「そうそう、サーヴァン嬢も見たと言ってましたわ」

「まぁ、なんて恐ろしい……」

「恐ろしいですわよね」


いや、恐ろしいと言うわりには皆さん興味津々っぽくない?私は出来ればこの話題聞きたくないんだけど。


「そこで、今度、その真相を確かめるべく、肝試しというイベントをやるのですって」


(はい?!)


ちょっと、ファンタジー世界で聞くような言葉じゃない言葉を聞いたような?


「まぁ!なかなか興味深いですわね!」


(えっ!嘘でしょ?!)


令嬢たちはきゃっきゃとはしゃいでいる。白い影よ?つまり、幽霊でしょ?令嬢としては怖がるもんじゃないの?


「エルディ嬢!ぜひ一緒に参加しましょうよ!」

「それはいいわね!ねぇ、エルディ嬢?」

「素敵ですわ!そう思いませんこと?エルディ嬢!」


「……はは」


全く断れる雰囲気じゃなかった。






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