13歳、歓迎パーティーで目立ってます?!
──また、こうして、二人で話せると嬉しいな。
──約束だよ?
あんな約束するんじゃなかった!
だってまさか、その次の日、有言実行しにくるとは思わないじゃない!
移動教室からの帰り道。今日はこれで終わりだと、ほっと一息ついていたところだ。
「やあ、」
皇太子が渡り廊下の途中でひょい、と顔を覗かせてきた。
(ひえっ)
声が出なかったのを誉めて欲しい。
私の周りは黄色い悲鳴が漏れていたけど。
そんな周囲に構うことなく、皇太子はにっこり笑みを見せた。
「殿下……こんにちは」
「うん。会えて嬉しいよ、リーリア」
うっ。
突然の美しい顔に思わずひるんでしまう。
皇太子は尚も続けた。
「よかったら、今から学園を案内したいと思うんだけど、どうかな?」
「それで、そういう文句を言いたいがために、忙しい兄の邪魔をしに来た、と」
兄を訪ねてやってきた生徒会室。都合よく兄以外がいなかったので、私は仕事中の兄へこれまでのあれやこれを、ぶちぶちと語っていたところ、兄は、呆れたように言ったのだった。
「……邪魔してるつもりじゃないんですけど。だから、お仕事お手伝いしますと言っていますわよね?」
「阿呆。いくら家族でも、生徒会の人間以外に仕事を任すはずがないだろう」
「……」
でも、ここじゃないと兄とゆっくり話せる場所がない。諦めきれずにむっすり口をつぐんでいると、兄は呆れたように息をついて手を止めてくれた。
やっぱり兄は私に甘いところがある。
「……で?なんだって?殿下が迎えに来たと?」
「……」
「いいじゃないか。別に教室までくるわけでもなし」
「そのくらい多くの生徒から、ものすごく見られてたんですけど」
結果目立ったので、同じことだったような気がした。
「……この国の皇太子殿下が近くにいるんだぞ?新入生だったら、そりゃ見るだろ」
「……」
分かっている。実際黄色い悲鳴も漏れているわけだから。
問題は、その瞬間辺りの女子生徒たちの目がきらっと光ったこと。そして、
「……」
──リーリアさん!あ、殿下もいらっしゃったんですね。エミリ・アーデム、皇太子殿下にご挨拶致します!これからどこかにいかれるんですか?すてき!私もご一緒したいです!
どこから聞き付けてくるのか、主人公が付きまとってくるようになったことだ。
(友だち、というか、皇太子ほいほい扱いされてる気がするのはどうして!?)
「……で?お前は何をしに来たんだ。文句を言いたいだけなら、ロイを相手にしろ……って、そういえば、ロイはどこだ?出来るだけ行動を共にしろと言っただろう」
「……ロイは……置いてきました」
「は?」
「女の子に囲まれてたので……」
「ああ、パートナーの勧誘か……」
兄はすぐに納得した。
もうすぐ新入生の歓迎パーティーがある。
パーティー!ファンタジーの王道だ!
って、最初は喜んだけど、ファンタジーの王道ということは乙女ゲームの王道でもある。
そりゃ、色々なイベントが盛りだくさんだろう。
ちょっと嫌な予感しかないのが、ものすごぐ嫌だ。
げんに、新入生代表で顔と名前が知られているロイは、パートナーの誘いで引っ張りだこだった。
「……ロイ、かっこいいですもんね」
「……お前、そんな風に思ってたんだな」
「え?かっこいいですよね?女の子に誘われるのも無理はないと思ってますわ」
「……まぁ、ロイには言うなよ?」
「え?」
「いや……とにかく、お前もう帰りなさい」
「えっ!」
──話はこれからなんですけど?!
「いいか?お兄さまは、その、きたる歓迎パーティーの準備で、これから園内を回るところなんだよ。残念だなー、話を聞きたいのは山々だが」
うわ。どう考えても体のいい厄介払い。
「お兄さまのいじわる……」
「じゃあ、意地悪しない、第二のお兄さまに聞いてもらうんだな」
「……」
「ああ、今からロイを呼んでくるから、お前はここで待っていろ。絶対に、勝手に帰るなよ?」
「……はい」
結局あしらわれて拗ねる気持ちがないことはなかったけど、まぁ、主人公とか皇太子に会わない避難的な意味では助かったので、そういう意味ではここに来て正解だったと思うことにした、うん。




