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そりゃ、こんだけ至近距離で、しかも隠れてもないから、気付かれてもおかしくないけど。

ていうか、私、名前で呼ばれた?えー……流石に馴れ馴れしすぎない?

エミリは、器用に茂みの隙間からこちらを見ている。

エミリがこちらに気付いたことで、囲んでいた五人も、皇太子に気付いたみたいだ。一斉に礼をとる。と、同時に、一人が前に出た。

銀髪に、ロイと同じ、綺麗な紫の瞳。さっきまでは他の人に隠れて見えなかったけど、かなりの美人さんだった。

美人さんは、実に優雅に礼をとる。私は思わず見惚れてしまった。


(うわぁ……これぞ貴族のお嬢様って感じ……)


多分、高位の貴族令嬢だ。皇太子と同い年くらいの歳だったのは、確か公爵令嬢だったはず。

公爵令嬢ともなれば、所作がこれほど優雅なのも当然だろう。

イケメンな皇太子と二人近くで並んだら、さぞかし絵になりそうな、そんなご立派なご令嬢だった。


「……レティア・ヴァルティス、皇太子殿下にご挨拶申し上げます」

「うん。楽にして。ごめんね、なにか話しているところだったろう?」

「……いえ、初等科最高学年として、お話していただけですので、」

「あの!ヴァルティス様は、作法に疎い私を、嗜めてくださっていただけなんです!」


一瞬、沈黙が広がった。

よりにもよって、皇太子と高位の貴族令嬢との会話に割り込むなんて。


「……アーデムさん、貴方、私たちの話を、全く理解していなかったようね?」

「そんな……私は、ヴァルティス様たちが私を囲んでいたことを、変に誤解されてはいけないと思って……!」


いやいやいや。

変に誤解されるように言ってるように聞こえるのは気のせい?

一瞬、私がおかしいのかと思ってロイを見たけど、ロイは気配を消すことにしたらしい。無表情で口を引き結んでいる。ずるい!


「あ、これは違うんです。ちょっとびっくりして……」


エミリは更に言葉を続けて目尻をこすった。いや、こっちからは涙なんて全く分からなかったけども。

今、凍りついているこの場の空気に気付いているのかいないのか。

いずれにしても、ものすごいガッツだ。


「……」


公爵令嬢は唖然としている。その周りにいる他四人も、二の句が告げないようだ。


(……これどうするの?!)


皇太子も流石に困惑しているのか、少しだけ眉をひそめて、何も言えないままだった。


(攻略対象なんだから、なんとかしてよ!っていうのは、この状況で流石に酷かな……)


私は覚悟を決めて、一歩前に出た。このままの空気でここにいつまでもいなきゃいけないのは、辛すぎる。


「……恐れながら、発言させていただきます。わたくし、リーリア・エルディと申します」


エミリが怪訝そうに眉をひそめた。いやいや、そういうのは、バレないようにしないと。

まぁ皇太子からは見えないようにしてるのかもしれないけど。


「……確かに、アーデムさんはマナーが足りないようです。ですが、こうしてご指摘いただけたので、これから気をつけていけますわ。ねぇ、アーデムさん」

「……え、あ、はい……」

「ヴァルティス様、同じ新入生として、素晴らしい先輩へ感謝申し上げます」

「え、ええ……」


公爵令嬢は困惑したように、それでもしっかり返事をしてくれた。


「ですが。アーデムさんも、まだまだ勉強不足の新入生です。返事を出来なかったのも、立派な皆さま方に、一人で向かい合ったからかもしれませんわ。どうぞご容赦くださいませ」


つまり、話をするにしても一対五はいかがなものだったのか、と言外に伝えたわけだが、そうして礼をとった私の対応は正解だったらしい。

公爵令嬢は考えるように黙ったまま私を見て、すぐに笑みを見せた。


「……そうね。私たちも、対応が少しきつかったかもしれないわ。ごめんなさいね、アーデムさん」

「い、いえ」

「新入生といえども、この学園の生徒になったからには、これからしっかりマナーを学なければなりませんわ。よろしくて?」

「はい……」

「エルディさん……だったかしら?」

「え、はい!」

「自分の物差しで判断するなんて、初等科最高学年のすることではなかったわ。他の学年のことは分からないものね。だから、また色々とお話させてちょうだい。わたくしのお気に入りのお茶をご馳走するわ」

「えっ、いいんですか?」

「ええ。今度お誘いするから、ぜひ、断らないでちょうだいね」

「は、はい!もちろん!よろしくお願いします」

「……殿下、わたくしどもは失礼させていただきますわ」

「うん。君が下級生も気にかけてくれるから助かるよ、ありがとう」

「……わたくしが気になっているからしているだけですもの。お気になさらず。では、」


また礼をして、公爵令嬢たちは去っていった。


(流石、去り際も優雅だわ……)


社交辞令かもしれないけど、まさか、棚ぼたでお茶のお誘いをもらえるなんて思ってもみなかった。すごい。

絶対関わりたくなかったけど、巻き込まれてみるものだ。まぁ、今回に限ってだけかもしれないから引き続き気をつけないといけないだろうけど。


「……あ、あのっ、ありがとうございました」





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