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13歳、歩けば棒じゃなく厄介ごとに当たる!





私が通うレヴィローズ学園は、13歳から入学出来る学校だ。

平民も通えなくはないけど、入学試験があって、貴族ですら下級だとそう易々とは通えないため、貴族のためにある学園といってもいいと思う。

初等科三年、高等科三年で構成されていて、クラスは各二つずつ。全部合わせると初等科高等科で12クラス存在していることになる。

だからこそ、私が初日から迷うくらい、この学園はものすごく広大だった。


「だからね、探検するしかないと思うの」

「……」


ロイはなにを言われたのか分からない、と言わんばかりに口をぱかっと開け呆けた顔を見せた。

いやまぁ、確かに授業終わりにロイの席に詰め寄って──私とロイは同じクラスだったけど、席は思ったより離れていたから──急に突拍子もないことを言ったとは思うけど、そこまで?


「……ロイ?聞いてるの?」

「……いや、聞いてますけど、」

「だったら、返事は?どう?」

「……まぁ、いいですが……」


全然乗り気じゃなさそうだから、連れ回すのは微妙な心持ちだけど、兄に出来るだけロイと一緒にいなさいと言われてるから、誘わないわけにはいかなかった。


「じゃあ、行きましょう」

「は?今から?!」


当たり前だ。だから今言ったのだ。

私はロイの腕を掴んで引っ張り、立ち上がらせた。まぁ、そこそこ身長のあるロイなので、私の力じゃびくともしないから、ロイは自分で立ってくれたわけだけど。


「……いや、いいですよ。いいんですけどね。なんで急に『探検』なんです?」

「だから言ってるでしょ?こんなに広いんだから、探検しなきゃ!」

「はぁ、そうですか……」

「私、探検大好きなの!」


遠くで、お前方向音痴だろうが……。という兄の声が聞こえた気がしたけど、きっぱり無視した。それとこれとは話が別!





数分後、今度は私が呆けたように口を開けていた。


「……規模が全然ちがう……」


教室はいちいち広いし、食堂は高級レストランのようだし、音楽室とか小ホールだし、なんか音楽室の他にも練習個室があって、ピアノはそれぞれにあるわ、ヴァイオリンとかもあるわだし、それに、サロンなるものもいくつかあった。ここで令嬢方が度々お茶会を開くのである。


(うわー……ここ……)


前世の頃から旅行へ行っては探索するのが好きだったので、探検が好きというのは事実だけど、私がこうして探検と称して学園を巡っているのには訳があった。


「……だめだ。肝心のことが全く思い出せない……」


そう、乙女ゲームの世界へ転生してしまったらしいということは思い出してしまったものの、主人公と、攻略対象が皇太子ということと、あとはイベントが起こる場所をうっすらと、そしてあとは断片的な記憶しか思い出せていないのは、大問題だった。


(あのサロンだって、イベントでよく映ってたような気がするんだけど、どんなイベントだったのかとか、全然思い出せないし……)


すでに主人公と皇太子の再会イベントに巻き込まれてしまった。

またお邪魔してしまうことになると、なんかよく分からない申し訳なさもあるし、そもそも、変に恋愛沙汰に巻き込まれるのだけは、どうしても避けたい。

だから、こうして学園内を探検していれば、何か思い出せて、うまくイベントとかを回避出来るんじゃないかと思ったのに、甘かった。

肝心のことが思い出せないなら意味がない。


「?なにが思い出せないって?」

「……ちょっとね、」


また、再会イベントの時と同じように、遭遇してから思い出したりするんだろうか。ちょっと憂鬱だ。

この際なんにも考えずにいこうかな。そうよね、何事もなるようになるもんね。


「なぁ」


ロイに声をかけられて、やっと自分が思考の渦に飲み込まれていたことに気付いた。慌てて足を止めたロイに向き直る。

ロイは私のために同行してくれたのだ。一瞬存在を忘れてた。


「あっ、ロイごめん。なに?」

「……あんた、あんまり楽しそうじゃなくねぇ?探検好きなんじゃないのかよ?」

「え?いや!まぁ、ものすごい場所が多いから、楽しいは楽しいんだけど、それ以前の問題があって……いや、ちょっと待って」

「あ?」

「ねぇ、いつまで私はあんたなの?ロイは私の兄で友だちなんでしょう?名前で呼んでくれないの?」

「……あー……」


えっ。なにそれ。

私、結構全うなこと言ったつもりだったんだけど?

ロイは気まずげに視線を外す。


「ロイ?」

「流石にそれは呼べないだろ……」

「どうして?」

「どうして、って言われても……あーっと、お嬢様、あの建物はなんでしょうかね!」

「ちょっと、ロイ!」


ロイは逃げるように、さっさと行ってしまう。意地でも名前で呼んでくれる気はないらしい。なんで?


「誤魔化されないわよ!なぁに?遠慮してるの?」

「ちょ……っあ!あそこにあるのは温室では?」

「ロイ!」


私はロイの真正面に回って、下から睨み付けるように顔を近付けた。紫色に私が映るくらいに、その瞳を見つめる。

効果は抜群だった。ロイは「う"っ」と唸って固まる。

人間、誰しも瞳を見つめられると弱いみたいだ。


「私の目を見て」

「……」

「で?」

「……」

「ロイ」


はぁ。

ロイは小さくため息をついた。


「……別に、遠慮とかじゃなくて、」

「?なに?」

「……女の名前を、そう易々と呼べないだろ……」

「はぁ?ルルだって女の子じゃないの」

「……っそりゃそうだけど……いや、とにかく!兄だろうが友だちだろうが、俺が孤児院出身なのは変わらないんだから、あんたは俺にとって「お嬢様」だ」

「……むぅ、」


別に普通に呼べばいいのに、と思うが、ここまで言われたら無理強いは出来ない。


(まぁ、呼びたくなったら、呼んでくれるよね)


「……というかお嬢様、そろそろ門限の時間です」

「え」


ちょっと!そういうのは、もうちょっと早く言って!

私たちは結局道半ばに、なんとも慌ただしく寮に帰る羽目になったのだった。





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