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「……あの?」
あまりにもはっきり笑われるものだから、訝しげに見てしまった。ディーは特に表情を正すこともない。
「いいえぇ。どうぞ続けて」
「……えーっと、今、あの男たちになにか問題がおきてるみたいですけど、このままじっとしていても、助けがくるかは、はっきり言って分かりませんよね」
「ちょっとあんたね、なに言っ……もごっ!」
「お願いですから、大きな声を出さないでください」
咄嗟に女の子の口を塞いだ。先ほどまでみたいに、喚かれたらたまったものじゃない。
「……いいですか。この場所は地下とかじゃありません。ということは、ろうやからさえ出られれば、逃げ出すことができます」
「その、牢屋から出るのが難しい状況だと思うのだけど。なにか方法があるのかしら?」
ディーが言った。
「……どなたかに、見張りの男をろうやまで引き付けてもらいます」
「……それで?」
「見張りの男がこのろうやの鍵を開け、入ってきたところで、こう、ぽかっとして、眠ってもらいます」
「まぁ。そんなにうまくいくの?」
ディーがびっくりしたように言って、私のどこをどう見ても細い腕を見る。
そうよね。相手は大の大人。十代そこそこの小娘がどうにか出来るなんて普通は思わない。
「それは任せてください」
なんせこのために領地で鍛えてきたと言ってもいいので。
架空の兄が「そうじゃないだろ!」とか怒ってるけど、無視だ。
「そのあとは、みなさんで一斉にここから逃げ出すだけです。みなさんは方々に散って逃げてください。そうすると、男たちは絶対に私を追ってくるはずですから」
「……断言するのね」
「この中で、私が商品価値が最も高いと話しているのを聞きました。全員を捕まえるのが難しいとなれば、男たちは、私だけでも捕まえようとするはず」
「……」
また囮か、と言われそうだけど、しょうがない。捕まっているのは全員女な上、みんな華奢で、はっきり言うと、全然走れなさそうだった。なら、私が走るしかないでしょ!
もはや、これ以外に、逃げ出す方法はない。
「いいわ。協力する」
「……!」
そう迷いなく言ったのは、ディーだった。
「幸い、皇太子の兵が近くにいるみたいだし、必死で逃げれば絶対に助かるわ。少なくとも、ここでじっとしているよりはましだと思うんだけど、どう?」
ディーは他の五人へ言う。五人の女の子たちは顔を見合わせて困惑していたけど、しばらくして、力強く頷いてくれた。例の女の子だけは訝しげだったけど、一応頷く。よし。
「……ありがとうございます、」
「見張りを誘導する役目は私が引き受けるわ」
ディーは続けた。それは、効果抜群だろう。
「……いやな役目をさせてごめんなさい」
「ここから出られるんならなんだってやるわ。はっきり言って貴方の方が危ないのよ?だから、これくらいはね」
本当は、出来ることなら全部自分でしたいところだけど、13歳だし、しかも絶望的に色気がないので、無理に等しかった。ディーがいて、引き受けてくれて助かった。
「……ねぇ。貴方、本当に大丈夫なんでしょうね?見張りを眠らせるって言ってたのもそうだけど、最終的に、男たちは貴方を追いかけるんでしょう?また捕まったらたたじゃすまないんじゃなくて?」
「大丈夫!」
心配はもっともだ。でも、こういう時のために、私は領地で開発を頑張ったのである。自信満々にもなるというものだろう。
「私にはとっておきのものがあるので!」




