皇太子、たびたび
『
リーリア、君が領地へ行ってから三年が過ぎたね。元気にしてるだろうか。
最近は僕も忙しくしているせいでなかなか筆を取ることが出来なかった。やっと君への手紙を書くことが出来て嬉しいよ。
僕は今年、学園へ入学したよ。まだ慣れないこともあるけど、君が入学してきたら学園を案内出来ればと思ってる。
まぁ、君は別に必要ないとか、兄であるアヴェルに案内してもらうとか言うのかもしれないけど、君が入学したら次はセルシアが入学だ。セルシアのことなら僕はよく分かってるからね。一緒にセルシアの好きそうな場所とかを教えてあげられると思うよ。ぜひ君が僕の案内を受けてくれるといいな。
遠くから君が健やかに日々を過ごせることを願っている。
ジルディオ・リデル・レーヴァルト
』
『
リーリア、首都はだいぶ暑くなってきたよ。君のいる場所は大丈夫だろうか?
アヴェルは長期の休みは君のいる領地で過ごすんだと、昨日聞いたよ。この手紙が届いてる頃には、アヴェルはそこにいるんだろうね。羨ましい。
エルディ領には穏やかな人たちが多いと聞くから、君は伸び伸びと過ごせているんだろうか。そうならいいな、と思うよ。
君に少しでも嫌なことが起こらないように願っている。
ジルディオ・リデル・レーヴァルト
』
『
リーリア、首都は過ごしやすい季節になった。君のところは結構暑くなって来たんじゃないかな。体調には十分に気をつけて。
そういえば、首都へ戻ったアヴェルから君が孤児院へ遊びに行くようになったと聞いたよ。ご両親のお仕事を代わりに引き受けているのはとても立派だと思う。君のことだから、子どもたちととても仲良くしてることだろうね。
ただ、君と同じくらいか年上の男と話をするときは気をつけて。アヴェルから言われているだろうけど、ご令嬢は何かと噂になりやすいからね。一対一では話をしないように。
君が毎日楽しく過ごせることを願っている。
ジルディオ・リデル・レーヴァルト
』
リーリアは何度か読み返した文章を指でなぞる。いつ見ても綺麗な、整った文字だ。
書いてある内容は、いつ見ても、何気ないあれこれ。でも、いつでもリーリアの健康や色々なことを願ってくれている。
「ふふっ……なんだか、お兄さまが二人になったみたい」
まぁ、本当の兄は手紙なんか送ってきてくれやしないけど!
リーリアは機嫌よく筆をとった。
『
皇太子殿下。いつもお手紙ありがとうございます。兄、アヴェルは手紙なんて送ってくださらないので、いつもとても嬉しいです。
こちらも寒さが本格的になってきました。私は寒さに強いほうだと思うのですが、こちらの真冬はやはりこたえます。でも、体調をくずさないのは、殿下が私の健康を願ってくれたからかもしれません。ありがとうございます。
さて、エルディの真冬が落ち着いたら、そちらは花開くころかと思います。そのころには、私もそちらの花をお目にかかれるでしょう。セルシア様や殿下と再びお茶をいただけることを楽しみにしております。
リーリア・エルディ
』
節くれだった指がその文章を何度もなぞる。
その手紙が届いてから何度も読み返した文章を再び読み返しては、ふ、と笑みがこぼれた。
「リーリア……」
これほど待ち遠しかった春はない。




