5
ある晴れた日。いよいよ作戦決行の日である。
私は比較的小さい子どもたちと輪を作り、作戦の最終確認をしていた。
「いい?何があっても、変にさわいではだめよ?」
物分かりのいい子どもたちは素直に頷いている。
う~ん。なんていい子たちなの。
こんな子たちを苛めてるなんて、やっぱり許せない。俄然、やる気が出た。
「それから、もし、ねらいが他に移ったらややこしいことになるから、みんなは固まって私の後ろにいてね。分かった?」
「分かった?じゃない!」
「ん?」
話をしている私の後ろから現れたのはロイだった。わー。見事なツッコミ……。じゃなくて!
私はむ、と眉をひそめて腕を組んだ。
「ちょっと。貴方には仕事をたのんだのに。なんでここにいるのよ」
「……別に、あんたの兄さんへの合図は、ルルでもできるだろ」
「あのねぇ。貴方がいたら作戦が成功しないでしょ。身体もそこそこ大きい男の子なんだから」
「……」
「いい?彼女みたいな令嬢は小さい子とか女の子にしか手を出せないのよ。今までもそうだったでしょ?」
「……そうだけど、」
「だから、合図をするまでは私に任せて、って言ったじゃない」
「でも!」
言い聞かせるように言ったつもりだったけど、ロイは勢いよく身を乗り出しだ。私は思わずのけ反る。
「なに?」
「……あんた、そんな、孤児院で俺たちが着てる襤褸を着ていいのかよ」
「え?動きやすくていいわよ?」
私は、孤児院の子たちに紛れるように孤児院の子たちの服を着ていた。しかもズボン。
令嬢的にはアウトかもしれないけど、そもそも前世ではこういう格好が普通だったんだから、違和感があるわけでもない。両親やサーシャにバレなければ全てよし、だ。
「じゃなくて!そんな格好してたら、あんたがあいつに狙われるかもしれないだろ!」
「ああ」
ロイは最初の出会いから分かるように、正義感が強いっぽい。だから、私の作戦が気にくわないんだろう。
でも、成敗にも名文が必要だ。私が急にしゃしゃり出て成敗したら、それこそ身分を笠にきた、偽善行為になってしまうと思うので。
「だから、そういう作戦だって言ったでしょ。聞いてなかったの?」
「……そりゃ、聞いてたけど……なにされるか分からないじゃないか」
「はぁ?私より年下のお嬢ちゃんに?なにされるっていうの」
「……色々だよ。あんた、そんな格好してるといっそう、なんていうか……ちぃせぇし、」
「はぁ?!小さくないわ!11歳の平均体型よ!」
サーシャだって、最近また大きくなりましたね、って言ってたんだからね。
「……俺らに比べたらちぃせぇだろ」
「当たり前でしょ!貴方は男の子なんだから!」
「いやまぁ、そりゃ、そうだ……」
「ルルより私の方が大きいでしょ?だから、マリー・ワーゲンより私の方が絶対大きいわ!」
「……そうだとして、言っとくけど、あいつ殴ってきたりするからな」
「それでも大丈夫よ」
「大丈夫つったって、」
「もう!大丈夫ったら大丈夫だってば。貴方に石打ち返したのはこの私だって忘れたの?」
「う"」
私はふふん、と笑った。あーだこーだ言うロイは、これを出すと途端になにも言えなくなってしまう。これはいい弱点である。
私はロイの顔を覗き込んで、指を突き付けた。
「私、強いの。そんじょそこらの令嬢には負けないんだから。分かった?」
「……」
分かった、と言いたくはないらしいが、納得はしたのだろう。ロイは小さく頷いた。私は満足したので、ロイの肩を押す。
「ほら、さっさと持ち場について」
横目に、馬車が止まったのが見えた。ついに主役のご登場である。
「作戦決行のお時間よ」




