プロローグ
気付いたら赤ちゃんだった。
なにそれ、って話だけど、冗談とかではない。
私はさっきまで、確かに28歳の婚活女だった。正確に何をしていたのかは全く記憶にないけれど、少なくとも、こんなキラキラした部屋でばぶばぶ言ってはなかったはずだ。
なのに、どういうこと?
ままならない身体で(赤ちゃんだからね)過ごすこと、約半年。季節は多分春から秋になった。
どうやら私は、生まれ変わったらしい。
そんな馬鹿な。といくら思っても、寝ても覚めても、私は赤ちゃんのままだった。
順調に食っちゃ寝して(赤ちゃんだからね!)成長すると、色んな情報を入手出来るようになった。
その情報によると、私の名前はリーリア。現在2歳。
あんまり裕福じゃない(それでも日本にいた頃の私よりは裕福だと思う。だって、メイドに執事にドレスだもん。セレブとかってレベルじゃない)エルディって伯爵家に生まれた、母から亜麻色の髪、父から薄い翡翠の瞳を受け継いだ、待望の女の子、という話だ。
それから、私の面倒を見てくれてるのはメイドのサーシャ。若いけど孤児院で育ったことがあって、子どもの世話も慣れているだろうと私付きになったみたい。
初日、私に律儀に挨拶をしてくれた。私が前世の記憶がない純粋な赤ちゃんだったら、絶対伝わってないと思うくらいの仰々しさで。笑ってしまったのは仕方ないと思う。
母は、あまり身体がよくないらしい。といっても、なにか重い病気とかじゃなく、ただ体力のない虚弱体質みたい。私に会いに来るのは三日に一度だった。
すごく美人で、すごく優しくて、え、本当に私のお母さん?って疑問に思うほど素敵な人。今世すごい。
「リーア。私のかわいいリーア。また大きくなったわね」
いやいや、三日じゃそんなに変わらないのでは?
とかは、絶対言えない。(まぁそもそも喋れないけど)
父と兄は、一週間ぐらいに一度のペースで会いに来る。
父はこれがもうびっくりするくらいのイケメンで、母と並ぶと、二児の子持ちと思えないほどの美男美女カップル。
なんで並んでくれないのー!と思ったけど、別に仲が悪いわけではないらしい。
私を見ては「リーリアはアティア(母の名前だ)にそっくりでかわいいなぁ」とか言って、めっちゃ誉めてくれるから。そりゃ兄も引くわ、ってくらい。
そんな兄・アヴェルは私の三つ上。
父から金髪と翡翠の瞳を受け継いだ、5歳のはずなのになんともまあ、仕上がっている男の子だった。
「ちちうえ。リーアをそんなふうにだっこしてはくるしいですよ」
君も赤ちゃん抱っこしたことないでしょ?って年頃なのに、兄はひょい、と私を抱っこしてはクールにあやしてくれた。
出来た兄過ぎる。
こうして、こんなファンタジー?な世界に生まれ変わるなんて!と少なからず動揺していた私は、サーシャや家族からたゆまない愛情を受け続け、ま、そういうこともあるか!と流しつつ、すくすく成長していった。




