5.誰のために。
次回、第1章のエピローグ。
_(:3 」∠)_
区切りは良さげなので、面白かったらあとがきも読んでね?
――その少年は、薬草学が好きだった。
騎士の家系に生まれながら、剣術とは無縁の日々。
周囲は呆れながらも、その少年のことを止めたりはしなかった。事実として、彼の薬草学における知識とポーションづくりの腕は優れていたのだ。
それらについては専門家すら舌を巻く。
ダイス・アークイズムは、その分野において神童と呼ばれていたのだ。
◆
「ボクは……! あの頃から変わった!!」
鬼気迫る表情で剣を振るいながら、ダイスはそう叫んだ。
「騎士の家系に生まれながら薬草学に傾倒していた時! そしてボクに力がないばかりに、アークイズム家が取り潰しになった時から……!!」
「くっ……!?」
さすがのクロスも、その勢いに気圧される。
先ほど飲んだポーションの効果、であろうか。ダイスの身体能力は飛躍的に向上し、確実にクロスのそれを追い抜いていた。
剣筋に粗さは目立つ。
しかしながら、圧倒的な力の前には関係がなくなってしまう。
「周囲のみんなは、ボクを責めなかった! それどころか、騎士になるよりも学者になった方が良いと慰めてくれた!! でも、ボクはそれが――」
感情を爆発させながら、ダイスは剣を振るった。
クロスになら、語っても良いと考えた。
誰のために、と。
自分にそう問いかけてくれた彼になら、と。
もしかしたら、クロスという少年なら答えを知っているのではないか。
ダイスの心にはそんな思いが渦巻いたから。だから、
「ボクは、それが辛かった……!!」
ついに、その言葉を口にした。
苦しかったのだ、と。
周囲の期待に応えきれなかった自分が、許されてしまったことが。
誰もダイスのことを責めなかった。それどころか、キミの道はこっちではない、とさえ助言してくれた。嫌味でもなんでもなく、ただ純粋に彼を案じて。
だが、ダイスは自分が許せなかった。
本来進むべきだった道を見ず、周囲に迷惑をかけた。
だからこそ、自分は剣の腕でアークイズムの名を高めなければならない。
「だから、ボクは……!!」
そう、思ったのだ。
ダイスは肩で呼吸をしながら、クロスと鍔迫り合いを続ける。
勝たなければならない。負けるわけにはいかない。そんな衝動にも近い感情が、何度も彼の心を突き動かしてきたのだ。
だが、その時だった――。
「でも、それでお前は楽しかったのか?」
「………………え?」
大粒の汗を流しながら。
剣を受け止めるクロスの言葉に、ダイスはハッとした。
◆
「お前、それで楽しかったのかよ……?」
俺はあえて、二度同じ質問を繰り返す。
するとダイスはようやく顔を上げ、こっちを見た。
ほんの少しだけ、剣の圧力が落ちたところで一度距離を取る。そして、
「誰かのために、自分を殺して。それで、楽しかったか?」
加えて、もう一度訊ねた。
返事はない。
ただ真っすぐに、ダイスは俺を見ながら剣を構えていた。
そんな沈黙が長く、長く続いた後。彼はようやく、こう口にした。
「じゃあ、どうすればよかったんだ……?」――と。
今にも壊れてしまいそうな声色で。
ダイスは、俺に訊いてきた。
「ボクは、どうすればよかったんだ。どうすれば、みんなに報いることができたんだ?」
「………………」
震える声。
それを聞いて俺は、ハッキリと答えた。
「だったら、俺が教えてやるよ」――と。
剣を構えて。
俺は、自身の中にある魔力を全身に巡らせた。
騎士団長以外には、初めてだ。身体能力強化の魔法。ダイス・アークイズムという青年を認めたからこそ、俺はそれを使うと決めた。
「クロスくん……」
「こいよ、ダイス。お前が欲しがってる答え、くれてやる!」
こちらの変化を雰囲気で察したのだろう。
ダイスも、力強い眼差しで俺を睨みながら大きく踏み込んだ。そして、
「はああああああああああああああああああああ!!」
「でやあああああああああああああああああああ!!」
互いの持つ、渾身の一振りがぶつかり合う。
その結果は――。
「あぁ、降参だよ。……クロスくん」
ダイスの剣が真っ二つに折れた。
リリがそれを見て、宣言する。
「勝者、クロス・フリーダム!!」――と。
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