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4.力の証明のために。

少し寝過ごした(´;ω;`)

応援よろしくお願いいたします!!








 ――決闘の日の朝。



「おいおい。冒険者の決闘、ってこんな騒ぎになるのかよ……」



 俺は王都で一番の広場に足を運び、そこに沸き立つ観衆に唖然としていた。

 まだ何も始まってもいないというのに、物凄く盛り上がっている。酒場からは酒も提供されているらしく、朝っぱらだというのに赤ら顔のオッサン冒険者が散見された。

 どうやら、貴族の頃には知らなかった王都の顔というのがあるらしい。



「やあ、逃げずにきたね?」

「ん?」



 控室として用意された場所に行くと、そこにはすでに奴がいた。



「逃げるもなにも、ないだろ? ――ダイス」

「ははは。最近では、クロスくんのように威勢のいい冒険者も減ってきていてね! なにぶん、ボクはこのギルド最強の剣士と呼ばれているからな」



 こちらの返答が余程気に入ったのか、ダイスは愉快そうに笑う。

 しかし、その奥には喜び以外の感情が見て取れた。



「……でも、嬉しいだけじゃないだろ。あるいは――」



 俺はあえて、挑発するようにそれを煽る。



「『負けるかもしれない』って、顔に書いてあるぜ?」――と。



 すると、ダイスの顔からはスッと笑顔が消えた。

 真剣な表情へと変化し、彼は一つゆっくりと息をつく。



「……キミの洞察力は、凄いね。感心したよ」



 だが、闘争心は変わらず。

 ダイスは真っすぐに俺を見て、こう続けるのだった。



「でも、ボクは負けるわけにはいかない。『力の証明』をしなければならない」

「ふーん……そう、か」



 しかし、足りない。

 彼のマジな顔を見ながら、少しだけ呆れた。

 その上で俺は、一つだけダイスに問いかけるのだ。



「なぁ、ダイス。その『力の証明』ってのは――」




 確信を胸に。




「いったい、誰の願いなんだ?」――と。











「ルールは魔法含め、何でもあり。時間無制限。どちらか一方が戦闘続行不可能と判断されるまで行います!」




 ――ギルドの受付嬢、リリが声高に宣言する。

 ダイスはそれを聞きながら、先ほどクロスに言われた言葉を思い返した。



『いったい、誰の願いなんだ?』



 そう告げられた瞬間。

 青年はクロスという少年に、心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥った。

 理由は分からない。いいや、本当は分かっているのかもしれない。ただ心のどこかで、そう在らねばならないと、思っているに過ぎないのかもしれなかった。



「いいや、ボクは……!」



 正面に立つクロスを見ながら、剣を構える。

 やがて、リリのひときわ大きな一声によって決闘は始まった。



「ボクは、負けられないんだ……!!」



 ダイスはそう声にしながら。

 目の前の少年に向かって、斬りかかるのだった。










 ――なるほど、たしかに速い。



 真っすぐに斬り込んできた一撃を受け止めながら、俺はそう思った。無駄な動きが少なく、十二分に力が乗っている。受け止めることには成功したが、こちらの脚はその圧力によって若干沈みかけた。



「へぇ……?」



 一度、後方に距離を取る。

 するとダイスは、すかさず躍りかかるように剣を振るってきた。

 横に薙いだ一撃。それを次は身を屈めることで回避。紙一重のそれに、観衆はさらに興奮して声を上げた。



「あらよ、っと……!」



 俺はその体勢から、ダイスの足を払いにかかる。

 しかし彼も無策ではない、ということか。こちらの蹴りを軽い跳躍で躱してみせた。向かって右後方に退避したダイス。互いに状態を整え、再び正面に剣を構え直した。

 今度はこちらから仕掛ける番だろう。



「行くぜ……!」



 だったら、遠慮なくいかせてもらうとしよう。

 そう考えて俺は、一切の躊躇いもなく剣を振り下ろした。

 ゴレムを破壊する程の斬撃だ。人間がマトモに喰らえば間違いなく、命を落としてしまうだろう。しかし俺の中には、一つの直感があった。そして――。



「やるな、ダイス……!」

「ふふっ……それは、どうも……!」



 それは、正しかった。

 ダイスは逃げることなく俺の一撃を受け止め切る。

 表情は苦悶に歪んでいた。だが、この攻撃を正面から止めるのは騎士団長以外では初めてだった。つまり彼の剣術における力量は、本物に違いない。


 ――ギルド最強の剣士。


 その異名は、決して飾りなどではない。

 俺はそのことに歓喜しつつも、しかし同時に思った。



「でも、まだだ……」

「……なに?」



 鍔迫り合いの最中。

 こちらの言葉に、ダイスは眉をひそめた。

 そんな彼に対して俺は、率直な評価を告げる。



「お前の剣術じゃ、俺にはまだ届かない……!」

「なっ!?」



 そして、剣を力の限り跳ね上げた。

 するとダイスは思い切り態勢を崩し、腹部ががら空きになる。

 俺はそこへ目がけて、迷いのない蹴りを打ち込んだ――!!



「が、は……!?」



 苦しげな声を発しながら、後方へと吹き飛ぶダイス。

 完璧なまでの一撃。



 周囲の誰もが、勝敗は決したものたと思っただろう。

 事実、沸き立った歓声がその証拠だった。

 だがしかし――。




「まだ、だ!!」




 彼の張り上げた悲痛な程の声量に、誰もが息を呑んだ。

 上体を起こしたダイスの目は、まだ死んでいない。



「凄いよ、クロスくん……。たしかに剣術や身体能力では、キミの方が一枚も二枚も上を行っているんだろうね」

「……………………」



 黙ってそれを聞く。

 そうしていると、彼は懐から一つのポーションを取り出した。



「でもね、ボクは負けられないんだ。だから――」



 そして、その中身を一気に飲み干す。

 ゆらりと立ち上がったダイスの雰囲気は、一変していた。

 身にまとう雰囲気や迫力、そういったものが様変わりしている。だから、




「ここからは、正真正銘の本気の戦いだよ……!!」

「面白れぇ……!!」





 俺は剣を構え直しながら、口角が上がるのを堪え切れなかった。



 戦いはまだ序盤。

 ここからが、楽しい時間の始まりだった……!




 


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