4.力の証明のために。
少し寝過ごした(´;ω;`)
応援よろしくお願いいたします!!
――決闘の日の朝。
「おいおい。冒険者の決闘、ってこんな騒ぎになるのかよ……」
俺は王都で一番の広場に足を運び、そこに沸き立つ観衆に唖然としていた。
まだ何も始まってもいないというのに、物凄く盛り上がっている。酒場からは酒も提供されているらしく、朝っぱらだというのに赤ら顔のオッサン冒険者が散見された。
どうやら、貴族の頃には知らなかった王都の顔というのがあるらしい。
「やあ、逃げずにきたね?」
「ん?」
控室として用意された場所に行くと、そこにはすでに奴がいた。
「逃げるもなにも、ないだろ? ――ダイス」
「ははは。最近では、クロスくんのように威勢のいい冒険者も減ってきていてね! なにぶん、ボクはこのギルド最強の剣士と呼ばれているからな」
こちらの返答が余程気に入ったのか、ダイスは愉快そうに笑う。
しかし、その奥には喜び以外の感情が見て取れた。
「……でも、嬉しいだけじゃないだろ。あるいは――」
俺はあえて、挑発するようにそれを煽る。
「『負けるかもしれない』って、顔に書いてあるぜ?」――と。
すると、ダイスの顔からはスッと笑顔が消えた。
真剣な表情へと変化し、彼は一つゆっくりと息をつく。
「……キミの洞察力は、凄いね。感心したよ」
だが、闘争心は変わらず。
ダイスは真っすぐに俺を見て、こう続けるのだった。
「でも、ボクは負けるわけにはいかない。『力の証明』をしなければならない」
「ふーん……そう、か」
しかし、足りない。
彼のマジな顔を見ながら、少しだけ呆れた。
その上で俺は、一つだけダイスに問いかけるのだ。
「なぁ、ダイス。その『力の証明』ってのは――」
確信を胸に。
「いったい、誰の願いなんだ?」――と。
◆
「ルールは魔法含め、何でもあり。時間無制限。どちらか一方が戦闘続行不可能と判断されるまで行います!」
――ギルドの受付嬢、リリが声高に宣言する。
ダイスはそれを聞きながら、先ほどクロスに言われた言葉を思い返した。
『いったい、誰の願いなんだ?』
そう告げられた瞬間。
青年はクロスという少年に、心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥った。
理由は分からない。いいや、本当は分かっているのかもしれない。ただ心のどこかで、そう在らねばならないと、思っているに過ぎないのかもしれなかった。
「いいや、ボクは……!」
正面に立つクロスを見ながら、剣を構える。
やがて、リリのひときわ大きな一声によって決闘は始まった。
「ボクは、負けられないんだ……!!」
ダイスはそう声にしながら。
目の前の少年に向かって、斬りかかるのだった。
◆
――なるほど、たしかに速い。
真っすぐに斬り込んできた一撃を受け止めながら、俺はそう思った。無駄な動きが少なく、十二分に力が乗っている。受け止めることには成功したが、こちらの脚はその圧力によって若干沈みかけた。
「へぇ……?」
一度、後方に距離を取る。
するとダイスは、すかさず躍りかかるように剣を振るってきた。
横に薙いだ一撃。それを次は身を屈めることで回避。紙一重のそれに、観衆はさらに興奮して声を上げた。
「あらよ、っと……!」
俺はその体勢から、ダイスの足を払いにかかる。
しかし彼も無策ではない、ということか。こちらの蹴りを軽い跳躍で躱してみせた。向かって右後方に退避したダイス。互いに状態を整え、再び正面に剣を構え直した。
今度はこちらから仕掛ける番だろう。
「行くぜ……!」
だったら、遠慮なくいかせてもらうとしよう。
そう考えて俺は、一切の躊躇いもなく剣を振り下ろした。
ゴレムを破壊する程の斬撃だ。人間がマトモに喰らえば間違いなく、命を落としてしまうだろう。しかし俺の中には、一つの直感があった。そして――。
「やるな、ダイス……!」
「ふふっ……それは、どうも……!」
それは、正しかった。
ダイスは逃げることなく俺の一撃を受け止め切る。
表情は苦悶に歪んでいた。だが、この攻撃を正面から止めるのは騎士団長以外では初めてだった。つまり彼の剣術における力量は、本物に違いない。
――ギルド最強の剣士。
その異名は、決して飾りなどではない。
俺はそのことに歓喜しつつも、しかし同時に思った。
「でも、まだだ……」
「……なに?」
鍔迫り合いの最中。
こちらの言葉に、ダイスは眉をひそめた。
そんな彼に対して俺は、率直な評価を告げる。
「お前の剣術じゃ、俺にはまだ届かない……!」
「なっ!?」
そして、剣を力の限り跳ね上げた。
するとダイスは思い切り態勢を崩し、腹部ががら空きになる。
俺はそこへ目がけて、迷いのない蹴りを打ち込んだ――!!
「が、は……!?」
苦しげな声を発しながら、後方へと吹き飛ぶダイス。
完璧なまでの一撃。
周囲の誰もが、勝敗は決したものたと思っただろう。
事実、沸き立った歓声がその証拠だった。
だがしかし――。
「まだ、だ!!」
彼の張り上げた悲痛な程の声量に、誰もが息を呑んだ。
上体を起こしたダイスの目は、まだ死んでいない。
「凄いよ、クロスくん……。たしかに剣術や身体能力では、キミの方が一枚も二枚も上を行っているんだろうね」
「……………………」
黙ってそれを聞く。
そうしていると、彼は懐から一つのポーションを取り出した。
「でもね、ボクは負けられないんだ。だから――」
そして、その中身を一気に飲み干す。
ゆらりと立ち上がったダイスの雰囲気は、一変していた。
身にまとう雰囲気や迫力、そういったものが様変わりしている。だから、
「ここからは、正真正銘の本気の戦いだよ……!!」
「面白れぇ……!!」
俺は剣を構え直しながら、口角が上がるのを堪え切れなかった。
戦いはまだ序盤。
ここからが、楽しい時間の始まりだった……!




