プロローグ 見る目のない親からの勘当。
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「いい加減にしろ、クロス! 貴様はシェフィールドの名に、泥を塗る気か!」
親父はそう言うと、俺の肩を力いっぱいに殴った。
不意を打たれる形になったこちらは、らしくもなく後ずさる。いきなり何をするのか。そう思って父を睨み返すと、彼はまるでオークのような顔をして俺を見ていた。
それを認めて、俺は「なるほど、いつもの押しつけか」と確信する。
「シェフィールドは魔法学を認められた貴族家系だ。それだというのに、貴様はなぜ毎日のように剣を振っている!? ――私への当てつけか!!」
「うるせぇな……」
「この……父に対して無礼な言葉を使いおって……!?」
こちらが言い返すと、親父はさらに表情を怒りに歪めた。
そして、その拳を強く握りしめて叫ぶ。
「貴様はシェフィールドに生まれた以上、魔法を極めなければならない! そういう宿命であり、運命なのだ! その証拠に、貴様の潜在魔力は――」
「それが『うるせぇ』って言ってんだよ!!」
「な……!?」
だが、そんな文句は聞き飽きた。
そもそもだ。この親父は、俺のことなんて微塵も考えていない。
考えているのはシェフィールドという家のことだけで、生まれてずっと、俺はそんな家のしがらみに逆らってきたのだ。
剣術だって、その一つ。
自分がしたいことを見つけて、それを極めたい。
そう思って騎士団の団長に直接、指導してもらえるように頼み込んだ。
「アンタは一度だって、俺の意思を確認したことがあったか!? 生まれてからこれまで、ずっと家の尊厳と歴史しか口にしない! 俺はアンタの人形じゃねぇ!!」
「貴様、私を愚弄するのか……!」
「アンタだけじゃねぇ、このシェフィールド家すべてだ!!」
「この生意気なガキが……!!」
夕暮れ時の中庭で、親父との口論は続く。
いよいよ堪え切れなくなったのか、相手は俺に拳を振り上げた。
しかし、魔法理論しか取り柄のない中年男性の格闘術など怖くもない。俺は顔目がけて迫るそれを首を傾げて回避し、親父の腕を掴んだ。
そしてその流れのまま、足を払って転がす。
「アンタとは違うんだよ、俺は……!」
「くそ、この出来損ないが……」
無様に膝をついた父親に背を向けて、俺はその場を後にした。
◆
――その夜のこと。
俺は親父の部屋に呼び出しを受けた。
そこまできたら、もう自分がなにを言われるのかおおよその予想はできる。
「……クロス。貴様には、とことん愛想が尽きた」
「そうかよ」
そう切り出した父は、憎しみのこもった眼差しで俺を睨んでいた。
対して俺は、なにも思わない。何故ならこの男の本性は、この十五年で嫌というほどに知り尽くしていたからだ。その証拠に、次に出た言葉も彼の思考を証明する。
「貴様如きに、シェフィールドの名は相応しくない」
――結局は、家柄なのだ。
当主としての責任。
あるいは、尊大な自尊心だろうか。
この瞬間に、親父は親父でなくなった。
そして同時に――。
「貴様は明日、荷物をまとめてこの家から出ていけ!」
俺こと、クロスはシェフィールドの名を失った。
なんの後ろ盾もない。
自分の暮らしを保証してくれるものもない。
だが、それは――。
「あぁ、清々するぜ……!」
虫唾が走るしがらみからの解放を意味していた。
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