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翌日5時に起きて着替えて訓練するために部屋のドアを開けると流石に朝早いのでリーゼさんはいなかった。
そして表に出ようと入り口に向かうとちらほら侍女さんが居たので
「おはようございます」と伝えると「お、おはようございます」と挨拶を返してくれた。
そして侍女はすっ飛んでいった。
こりゃリーゼさんに悪いことしたかも知れない。
訓練できる場所を聞くと、庭の一角が広場になっているのでそこなら大丈夫とのことで、向かっていく。
そしてリーゼさんが慌てて来た。
寝ていたのだろうな、申し訳ない。
魔力をグルグル回しながら、剣とか槍の練習、筋トレをしていたら6時位にルルが慌てて来た。
「ケイスさん、ごめんなさい。寝坊しちゃったですぅ」
ルルがしょんぼりと言う。
ルルは寝坊助さんだからな。
そして模擬戦を30分ほどやって朝風呂タイム。
慌てて入れてくれたらしい!至れり尽くせりである。
朝食は7時なので5分前くらいに食堂に入るとガタガタ震えだす飽き男。
後で知ったのだが元々7時にはほとんど来ないで寝坊しまくっていたらしい。
少しずつ改善しているようだ。
そして皆でご飯を食べながら王様が聞いてくる。
「ケイス殿、今日は何か予定はあるのか?」
「はい。この後すぐにダンジョンに行く予定です」
予定を伝えるとキャロちゃんがバッと立ち上がって言う。
「そ、そんな!」
ぐは!可愛すぎる・・・!どストライクな子にこんな事言われたら・・・!
「王様、食後に少しお話しさせて頂きたい事があります。お時間少しだけ宜しいですか?」
王様に尋ねるとOKを頂けた。
良かった、これでミッション完了だ。
そしてごはんを食べ終わって立ち上がると王様がこっちだ、と案内してくれようとする。
キャロちゃんがトテトテ走ってきてピョン!ケイスの首に両手で頑張って捕まる。
背が違い過ぎるので慌てて抱っこする。
ケイスの胸に顔当ててぐりぐりしている。
待って耐えれない!マイエンジェル!お持ち帰りしたい!
そしてそのまま王様の案内で応接室に入る所でキャロちゃんを降ろす。
「姫様、王様と大事なお話しがあります。また今度抱っこしますね」
ケイスが言うと嬉しそうな笑顔でキャロちゃんは言う。
「はい!お待ちしておりますわ!」
はわわわわ、その笑顔好き!アカン!キャロちゃんは俺を骨抜きにしてしまう!
そして王様と一対一で座りながら話す。
「それで話とはなにかな?」
もう直球で行こう。
「実はですね、ダンジョンでこんな物を拾いまして、使い道がないなぁと思っていたのですよ」
コトンと神のしずくを机の上に乗せる。
「な!!それは!!」
「使い道がないし捨てようかと思っていたのですが、それをローヌさんに相談したら是非、王様に売ってあげて欲しいとお願いされましてね」
あああ、もう王様は泣きそうになっている・・・ケイスは続けて言う。
「なので捨てるくらいなら王様に差し上げようかと思って持ってきました」
話した途端に王様はぶああああっと泣き出す。
「そ、そうか。す、捨てるのは勿体ないな。それならわ、儂が頂こう・・・」
「良かった。捨てる位なら有効活用した方がいいですからね」
ニコっと笑って言うと急に王様が立ち上がって抱き着いてきた。
「ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう!」
ずっとありがとうを言い続けている。
「どういたしまして」
王様の背中をポンポンッと叩く。
「下手過ぎる嘘をつきおって・・・・」
「あれぇバレちゃいまいましたか。ははは」
ローヌさんの奥様と王様の奥様、両方共に難病の状態だった。
ケイスが神のしずくを出したときにローヌさんから買い取らせて欲しいと言われた。
神のしずくはランク5ダンジョンでしか出ない。
この1本のチャンスを逃したら二度と手に入らないかもしれない。
しかし王妃様も1年前に肺の病気を患ってしまい、半年前からほとんどがベッドの上らしい。
そろそろ亡くなってしまうかも知れないところだったのだ。
ローヌさんは神のしずくを買えたとしても親友の王様、しかも王妃様より妻を優先してもいいのかどうかもわからず、
悩んで苦しんでいたのだ。
ケイスがローヌさんの態度を見て、何かあるなと嗅ぎ取って話を聞いたのだ。
悩みを聞いた後に二人とも治しちゃいましょうとケイスが話した。
条件としては力を知っているローヌさんは奥様がオールヒールでの治療が必要になった場合は、眠らせてしまうので喜びをすぐには分かち合えないよ?と。
命には代えられないので了承した。
そして王様にはまだケイスの力を話してないので神のしずくを渡すことになった。
もちろん親友のローヌさんのお願いなのでお金を頂くつもりは一切ない。
少し落ち着いてきた王様が離れて、真剣な顔で聞いてくる。
「ケイス殿、ローヌとは親友なのだろ?」
「ええ、大親友ですね」
「そうか、お願いが一つある」
「なんでしょうか?」
「儂とも親友になって欲しい」
「ええ、喜んで」
「ケイス殿、二人の時はリーンハルトと呼んでくれ」
「わかりました。リーンハルト殿」
二人で握手した。
「じゃあそろそろ行きますねー」
ケイスがあっけらかんと言うと
「ふっふっふ。ダッハッハッハ!わかった。流石、英雄ケイス殿。借りにしといてくれ」
ケイスは手だけ挙げて無言で出て行った。
そしてルルが待っていたので一緒に外に出ようとすると、エントランスホールの階段をダッシュで登っていく王族の家族達が見えた。
それをほっこりとルルと一緒に見て、王城を出ていく。
「ルル、いいことをすると気持ちがいいな!」
「そうですね!流石ケイスさんですぅ!」
転移するためにローヌ商会に向かっていった。
この後すぐに王城全体でうれし泣きの声が響き渡った。
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