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控室へため息を吐きながら戻ってベンチに座ると、ローヌさんが入ってきた。
「英雄ケイスさん、お疲れ様でした。スカっとしました!あの失禁勇者はこれから大変でしょうね。ほっほっほ!」
「ローヌさーん!勘弁してくださいよ!全部仕組みましたね!」
「はてぇ?なーんの事でしょうか?」
斜め上を見ながらすっとぼけてやがる!
「そうそう、そんな事より王様より是非王城に来てほしいとご招待いただきました。本日、一緒に夕食を取って話をしたいそうです。あ、もちろんルルさんも一緒にね」
「それは計画のうちだから構いませんよ。ローヌさんのもう一つの願いを叶えにいきますよ」
そしてローヌさんは座っているケイスの前に跪いて、手を取って言った。
「ケイスさん、貴方を見ていればわかる。仰っていなかったけど、貴方は戦争を止めて世界を救うつもりでしょう?それなら今日の出来事は絶対に後で役に立ちます。これからも支えさせて頂きますので、何でも仰ってください」
この人には本当に何も隠せないな、参った。
「嵌められたのは悔しいけど・・仰っしゃる通りですね。見事に英雄を演じて見せますよ」
「いいえ、違います。演じる必要はないです。貴方はいつも通りにしていれば、勝手に英雄になりますよ。頼られたらどうせ全部叶えるのでしょう?私はそれをちょっと早めただけです」
「わかりました。これからも宜しくお願いしますね。親友ローヌさん」
「ええ、親友ケイスさんのためなら全力でバックアップさせて頂きます」
そしてローヌさんとルルと一緒に王城へ向かう。
お城の門番さんも「英雄ケイス殿!お待ちしておりました!」と敬礼して通してくれる。
「そうなのです!ケイスさんは英雄なのです!英雄ケイス!英雄ケイス!英雄ケイスですぅ!」
ピョンピョン跳ねながらやっている。
門番さんも一緒にやっている。
どうやら先ほどの闘技場の大歓声をルルは気に入ったようだ。
そして門を通って庭と王城の中間距離地点くらいの所でケイスは戦慄が走った!
「英雄ケイス様―――!」手を振りながら天使が走ってきた。
後ろから侍女さんが追いかけている。
「姫様!ダメです!中で皆様一緒に待っているのですから!」
ケイスはぼーーっと止まってしまう。
ひゃ、、、、ひゃ、、、100点!ついに100点が出てしまった。
頭は金髪でツインテールになっており、顔はお人形さんの様にかわいらしい顔つき、そして身長は140cmくらいで胸はAカップのぺったんこ。
まさにケイスの理想形がそこにいたのだ。
あれ、天使がいる・・・俺この世界でも死んじゃったのかな・・・。
「英雄ケイス様~~~!お待ちしておりました!」
ケイスにぶつかる!という寸前でキキっとブレーキ音が聞こえそうな急停止をする。
英雄じゃないですロリコンです。
やだ・・・抱っこしたい・・・どうしよう・・・。
心臓がバクバク言っている。
「英雄ケイス様!わたくしキャロリーヌと申します!もう昔から英雄に憧れておりまして!今日の試合を見てケイス様はまさに英雄だと思いましたわ!」
スカートの端を摘まんで上流階級のお辞儀をする。
あああああああーーーダメーー抱っこしたい!
「ケイス様?どうされましたの?」
と言われた所でハッと正気に戻る。
「ハッ!すみません。あまりにも可憐でしたのでぼーっとしてしまいました。ケイスと申します」
しっかりと挨拶する。
「まぁ!ケイス様ったらお上手ですわ!」
顔を赤く染めて両ほっぺに手を当ててクネクネしている。
あーーお願い!お願い!抱っこさせて!
「私はルルです!宜しくです!キャロちゃん!」
お姫様にいきなり略称でちゃん付けの豪快なルル。
「あら、こちらこそよろしくお願いしますわ!ルルちゃん!」
そういえばさっきキャロちゃんに可憐って言ったのにルルは「ぶー」って言わなかったな。
何か通じ合う物があるのだろうか。
何て考えていたらローヌさんとキャロちゃんが挨拶し終わっていた。
「さぁケイス様!王城に行きましょう!」
キャロちゃんが普通に手を繋いでくる。
え!?何!?王女様なのに大丈夫なの!?手がいいなら抱っこもいいじゃないの?
そして一緒に王城に入る。
おおう!侍女多すぎだろ!
どうやら一人に一人を完全に固定でつける方式らしい。
一人のピンク色の髪の侍女さんがケイスに向かってくる。
「ケイス様、私が担当させて頂いきます。リーゼと申します。何なりとお申し付けください」
うーん60点。
普通に美人だよ?胸はCくらいだよ?普通にスタイルいいよ?ピンクのロングヘア―も似合っているよ?
でもなー100点が隣で手を繋いでくれているからな、しょうがない!
「さぁケイス様、お父様たちがお待ちしておりますので一緒に行きましょう」
手を引っ張ってガンガン進んで侍女さんの仕事取るキャロちゃん。
リーゼさんが急いで扉の前まで走る!間に合ったようだ。
トントンっとノックして「ケイス様とローヌ様とルル様がいらっしゃいました」
ちょっと待て!流石にローヌさんを先に言おうよ!
どうやらさっきの出来事なのに王城では既に国の英雄扱いのようだ。
仕組まれている確実に。
そして中に入ると王様と王子様が二人が居た。
入って早々に王様が先手を打つ。
「おお!英雄ケイス殿!まっておったぞ!今日はかた苦しいの無しで頼むぞ!肩が凝る!ローヌとルル殿もよく来てくれたな」
もはや社交辞令すら取らせてもらえない。
そして挨拶が始まる。
王様は前も聞いたけどリーンハルト、第一王子がカール18歳くらいかな?、第二王子キースで12歳くらいと思われる。
そして第二王子のキースは挨拶の時にぶち込んで来た!
「英雄ケイス殿!いえ!師匠!俺を鍛えてください!お願いします!」
え?何言っているのだ?
「いやいや。キース王子、私は冒険者ですよ?教えてくれる方は王城にいるのではないですか?」
「違うんです!師匠の戦いを見て、この人しかいないとビビビと来たんです!」
ダメだ、彼の中ではもう師匠になっている。
キャロちゃんも爆弾を投下してくる。
「ケイス様!わたくしもケイス様の戦いを見てビビビっと来て、この方しかいないって思いましたの!」
え?キャロちゃん、なにそれ?勘違いしちゃうからやめて?結婚しよ!
王様が止めてくれた。
「ほらほら、みんな座った座った!もう少しで食事の用意ができるはずだ。それまで自由に話をしようじゃないか」
そしてソファーにみんなで座った時に衝撃が走る。
何とケイスの座った膝の上に、平然とキャロちゃんがピョンと座ったのだ!
えーーーー!ちょっと王様の前でまずくないかそれは!
なんて思ったら王様はニコニコしてこちらを見ている。
「ケイス殿、すまんな。キャロは小さい時から英雄譚が大好きでなぁ。よく読み聞かせをさせられたのだ。今日は英雄が来たから離れたくないのだよ」
何それ、もう結婚するしかないじゃん。よし結婚しよう。
いや、マテ、これは策略だ。
キャロちゃんと俺が結婚したら、もう旅に出れないのは間違いない。
キャロちゃんは純粋に英雄が好きだが王様は怪しさ満点である。
そして談笑が始まっているのだが俺には野郎共の声は聞こえてない。
キャロちゃんが必死にどれだけ英雄に憧れているのか話してくる。
ルルが「ドカーン」「バコーン」とか擬音で今までの戦いの話を皆にしている。
そのたび「師匠すげーーー!」と毎回聞こえる。
ルル、俺は武道家で話していたのに、普通に魔法の話しするなよ。




