30
翌朝6時の鐘で起きると目の前にルルがいない。
まさか!一人で村に帰ったのかと思って飛び起きる。
ルルはケイスの足元で座っていた。
「ケイスさん!おはようございますです!」
「お、おはよう、ルル」
いつものルルに戻っていたのでびっくりして言葉が詰まった。
「もう大丈夫なのか?」
と問いかけると
「はいなのです!兎人族は最弱なので人族以外にも虎人族や狼人族にしょっちゅう殺されますし、日常茶飯事なのでお父さんの時も1日で大丈夫になりました!」
驚愕の事実。
そうか、自分は死者の森で過酷な環境であったが、兎人族にとってはこの世界がそもそも死者の森なのだと感じた。
ルルは16歳であり16年間死者の森にいたようなものか、俺では正気を保てただろうか・・強い子だなと思い、気が付いたら抱きしめていた。
「ルルが元気になってよかった」
「えへへ!ケイスさんがずっと抱きしめてくれたのですぐ元気が出ました!ありがとうございますです!」
ともじもじプルプルする。
「じゃあごはん食べにいこうか」
「はいです!」と手を挙げる。
ルルはちゃんとリスになり、安定の3人分を食べた。
ケイスもうれしくてずっとルルを笑顔で見ていた。
一緒に部屋に戻り、元気になったわけだし今後の事を聞く。
「ルル。ルルを獣人族の村まで送ってあげようと思うのだけどすぐの方がいい?」
と問いかけると
「え?私は帰りませんよ?」
「え?」
「ケイスさんは世界中を見に行く旅をするのですよね?それについて行きます!」
「え?危ないよ?というか村に帰らなくていいの?」
「元々帰るつもりはなかったですよ?それに私、足も速いし力も強いので大丈夫です!」
「そ、そうか」
兎人族の村に帰ると思い出しちゃうから帰りたくないのかもしれない。
でもこの街にルルがいるのは辛すぎる。
それならどこか安全に暮らせる所が見つかるまで一緒に旅をしてもいいかもな。
俺が守ってやればいいだけだ、そのために強くなったのだ。
準備の買い物に行くかと考えてケイスは言う。
「じゃあ旅の準備の買い物に行こうか」
「はいです!」と手を挙げる。
商店街で片っ端から食料や香辛料、日用品を大量に買い込む。
どうせ裏道で収納に入れるし、お金なら大量にあるのだからルルには安全に楽しく旅をしてもらいたしな。
「そうだ。せっかくだからルルの武器や防具を買おう。」
「え?いいのですか?高いような気がしますけど」
「いいんだよ。お金はいっぱいあるし、ルルのためにお金を使うのはルルが喜んでくれて、俺も嬉しくなるからな」
と頭をナデナデする。
何やらギュと力を入れてプルプルし出す。
少し時間を空けて
「えへへ!ありがとうございます!」
と元気にいう。
うん、かわいい。ルルはこうでなくては。