17
「まずは金が必要だ。冒険者ギルドに行こう。」
街を進んで行くと街人たちがジロジロ見てくる。
これはしょうがない・・・原始人以下の状態だしな。
どうやら日本の知識で考えると中世時代くらいの文明レベルに見える。
石でできた家や道などは土が踏み固めただけなのか、ならされただけで街灯などは見当たらないため、明かりは恐らく蝋燭やランプになるのだろうか。
歩きながら周りを見ていると住人は人間だが、鎖が付いた首輪や足かせを付けられた獣人?達が人間に引っ張られているのをよく見かける。
耳と尻尾以外は人間と変わらないので嫌な光景である。
兎の耳が付いた獣人が一番多く、次に猫、次に犬が多く、たまに熊の様な大きな獣人がいる。
やはり弱い種族は捕まり易いのであろうか。
「なんか嫌な街だな。長居は無用かもしれない。」と呟く。
人間の頭髪はカラフルで顔つきは西洋人の様な顔つきの人が多い。
数は多くないが髪が黒く日系の顔もそこそこいるようだ。
観察しながら進んで行くと門番さんの言う通りに、まっすぐ進んで行くとすぐに見つかった。
どうやら冒険者ギルドは街の中心にあるようだ。
2階建ての石造りの建物で他の商店建物に比べると2倍以上の大きさがある。
建物の裏には大きな倉庫が二つある。
「もう大半の依頼内容がわかってしまった気がする・・・。無理だよ俺には」
なるべく早めに街を出たいなと思いながら冒険者ギルドに入る。
左右に椅子と机が並んでいてミーティングスペースの様になっている。
正面にカウンターがあり、女性が3人が中に座っている。
左のカウンターが空いていたため向かう。
「冒険者ギルドへ・・・大丈夫ですか?」
と聞かれてしまう。
「大丈夫です。魔物と戦った後なので・・汚くてすみません。冒険者登録をしたいのですがここで大丈夫ですか?」
とお辞儀をして顔を上げてから笑顔を作る。
「こちらで問題ありません。ではこの用紙に名前と年齢と職業または得意な事を書いてください。」
と笑顔でちっちゃい羊皮紙が差し出された。
やべ!文字か!って思った直後に吹き出しそうになった。
羊皮紙には一番上に『namae』、真ん中に『nenrei』下の段に『syokugyou』と記載されていた。
完全に神様のご都合主義だなと思った。
ローマ字ということは西洋人っぽい名前の方がよさそうではあるが、啓介とかけ離れた名前だと呼ばれても気づかないで無視しそうである。
仕方ないと思いながら名前には『keisu』と書く。
年齢には『17』とご都合主義だから大丈夫だろうと思い普通に数字を書く。
職業はもちろん『mahoutukai』である。
木のこんで爆殺させたりもしているが、本来は魔法使いのはず・・・と自分に言い聞かせながら提出する。
「ありがとうございます。では5分くらいで証明カードができるので少々お待ちください」
と受付のお姉さんに言われる。
「あ、魔物の買い取りはありますか?待っている間に売ってしまいたいので」
と伺うと。
「それでは左手の奥にございますのでそちらへお願いします」
とお姉さんに教えてもらえた。
心の中で「よし!」とガッツポーズを取ったつもりが、無一文からやっと解放される嬉しさで本当にガッツポーズを取ってしまっていた。