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朝食を取り終わったケイスパーティはローヌ商会経由で死者の森のダンジョン1階層のボス部屋の前に転移する。
「狼と熊の魔物だったから動物系がボスかなぁ」
「どうじゃろうなぁ。意外に関係ない事が多いのじゃ」
ケイスとリルが上を向いて考えながら話していたらルルの声が聞こえてくる。
「あーー!お揃いですねー!」
「ルルちゃん!ちょっと!ケイス様とババァがまだ来てないよ!」
ケイスとリルがルルとブリギットの声が聞こえたのでボスの扉を見ると既に閉じ始めていた。
「ちょーーーーーー!まってーーー!」
ケイスは身体能力を駆使して扉が閉まる前に飛び込む。何とか滑り込めたと思ったケイスはリルが入れたか気になり、後ろを向くと涙目のリルがこちらを向いていた。
「ご、ご主人様・・・。尻尾が・・・。痛いのじゃぁぁぁぁ」
ケイスは扉を見るとリルの尻尾が挟まっており、滅茶苦茶痛そうなのでお尻がキュっとなる。
ケイスは早く終わらせないと本当にリルの尻尾が千切れてしまいかねないので、痛み緩和のために『ヒール』をかけながらルルとブリギットに声をかけようと前方を見ると、ルルが両手をあげながらピョンピョン跳ねており、ブリギットは腰が引けていた。
「ケイスさーーん!見てください!お耳がお揃いですー!」
ルルが指さす方向を見るとボスを見ると高さ10mはありそうな立っている真っ赤な兎がおり、目が充血したようにピンクになってルルを見ている。
「な・・・なんで立っているんだよ・・・」
ケイスは兎が立つ事くらいあるだろうと思って首を捻りながら、よく見るとボスの下半身が立派に立っていた。
「ふはははははははは!なんで立ってんだよ!変な物を飛ばす攻撃をしてくるかもしれないから気を付けろよ!ふはははははは!」
あまりにも酷すぎるボスに気を取られてしまいヒールを辞めてしまう。
「ひぎぃーーーーーーー!ご主人様!お願いじゃぁ!『ヒール』を辞めないで欲しいのじゃぁ!」
「ふはははははは!あ!ごめん!ちょっと流石に度肝を抜かれて。グ、クックック・・・ダメだ。集中できない!ふはははははは!」
ルルがこっちを向いたままボスがいる後方に指をさしながらピョンピョン跳ねている。
ボスがルルに向けて素早く動きだした。
「ルルちゃん!あぶねーー!」
ブリギットはルルがこちらを向いていて気付いてないので、矢を放って牽制するが高速で動きながらかがんで避けてルルを両手で挟んでしまう。
「お仲間なのに痛いですよー!何するのですかー!」
ルルはプンプンし出す。
ルルはこちらを向いている状態で捕まってしまったのでボスが見えていない。
ケイスは充血していてピンクになっていると思っていた眼を見るとハートになっている事に気づく。この世界の兎は変態じゃないと行けないルールでもあるのか!?
このままでは10m級の兎のアレをルルにぶち込まれてしまうため、ケイスは焦ってボスに向かって走り出す。
リルが痛がって手をパタパタさせていたのでケイスの体がぶつかってしまう。
「ひぎゃーーーー!」
リルの物凄い悲鳴が聞こえて申し訳ないと思いながらも、ルルを助けるために止まらずダッシュして兎の腹を目掛けてジャンプ蹴りをぶち込む。
ケイスの足にグチュという何とも言えない感触が伝わる。
赤い兎は血を吐き出しながら吹き飛んで行き壁に衝突する。
「ケイスさん。私のお仲間をあんなに吹き飛ばしてどうしたのですか?」
ルルは首を傾げて聞いてくるのでナニをされようとしていたのか気が付いていないようだ。
ケイスはあ!っと思い出してリルの所に戻るとリルが蹲って泣いており、非常に可哀想な状態になっていたため、『オールヒール』をかけて必死に謝る。
「リル・・・。本当にごめん・・・。本当にごめんな」
「いいのじゃ・・・。ご主人様。ルルの貞操に危険が迫っておったからの。オールヒールで再生するからいいのじゃ。ありがとうなのじゃ」
エロ兎に貞操があるかはわからないが確かに危険ではあった。
「ありゃー!これは痛そうですぅ。お仲間として今、介錯してあげますね!」
リルに謝っているとルルの声が聞こえてくる。
ドシュっと音がして赤兎の首が転がる。
「どっちも凄く痛そうな瞬間を見ちまった・・・」
ブリギットは内股になりながらお尻を抑えている。
どうやらリルの悲鳴で後ろを向いて尻尾が千切れてしまう瞬間とケイスを目線で追いかけて兎のアレが潰れる瞬間を見てしまったらしい。
宝箱が出現してケイスはリルに言う。
「リル。ほら開けて。ハズレでもいいんだよ」
「そ、そうだ。ケイス様の言う通りだぜババァ。ハズレでもいいんだぜ?」
「リルちゃんに何かあったのですかぁ?」
自分が原因で全ての悲劇を巻き起こしたのに気づいていないエロ兎。
「ご主人様とブリギットが凄く優しいのじゃ。では開けるのじゃ」
いつもはハズレばっか引く扱いをされているリルは嬉しそうに開ける。
中から青と赤の小手が出てくる。
「ご主人様!小手じゃ!童に使えるか見て欲しいのじゃ!」
「良かったなぁ。リル。今見るから待っててね」
「ババァ。本当に良かったなぁ」
ケイスは小手を鑑定してみる。
炎王と氷女王の悲恋の小手
炎の精霊王と氷の精霊女王が恋をしたが相いれず命を懸けて抱き合いながら世を恨んで二人とも消滅した後に残った呪いの小手。
赤い小手にMPを込めると炎系の特級魔法を放てる。
青い小手にMPを込めると氷系の特級魔法を放てる。
パワー1.5倍。フィジカル1.5倍。
装備すると赤い小手の方の半身が燃え上がり、青い小手の方の半身が氷つく。
「おお!これはリルの為にある様な小手かも。本当に良かったなぁリル」
ケイスは優しい笑顔で性能をリルに説明して呪いだけ解いてから渡す。
「嬉しいのじゃ!これで童は雷、風、炎、氷の魔法を放てるのじゃ!」
「ババァはやっぱすげぇな。良かったなぁ。」
「うんうん。流石はリルだ。本当に良かったなぁ」
「ご主人様とブリギットが優しすぎて逆に気持ち悪いのじゃぁ・・・」
「いつもはハズレ駄犬と言うのに優しいですねぇ」
やけに優しいケイスとブリキッドに嬉しいような怖いような不思議な感覚を得ながらリルは小手を両手に嵌めるのであった。
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