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「あ、あががっがっががががっがががががが?」
やっぱりおっちゃんの顎が外れていた。
ジャンヌを指さしながら何かを質問しているのでおっちゃんの顎を軽くパチンと上に叩きながら『ヒール』する。
指をジャンヌに刺したままケイスの顔を見てくるおっちゃんは驚きすぎて顎が外れていたのに気づいていないようだ。
「おっちゃん。顎が外れていて何を言っていたかわからなかったので、もう一度お願いします」
「このお嬢ちゃんがあの槍だってのか?」
「そうですよ。目の前で槍がジャンヌに変わったじゃないですか」
「た、確かにそうだが・・・」
おっちゃんはジャンヌに近づいて行き、ジャンヌの身体をペタペタと触りだした。
確かに気になるよねー。俺も触らせて貰ったけど本当にどうなっているのかわからないけど人間と同じ感触なのだ。
いきなりジャンヌはおっちゃんに蹴りを入れて吹き飛ばした。
「作ってくれた事には感謝するが我に触れていいのは相棒だけだ」
物凄い勢いで吹っ飛んで武器棚をごと倒れているおっちゃんに急いで近寄ってヒールしながら声をかける。
「だ、大丈夫か?おっちゃん!ジャンヌ、手加減してくれよ!」
無表情だが眉の中央が少し上がってジャンヌは言ってくる。
「む、相棒よ。女の身体に無断であのように触るのは犯罪だと思うのだが違ったか?」
「た、確かに・・・その通りかも知れない・・・」
おっちゃんが急にむくりと起き上がって目をキラキラさせている。
「す、すげぇ!人間と触った感触が変わらねぇ・・・鍛冶を極めたと思っていたが・・・まだまだだと思い知ったぜ!ワッハッハッハ!」
死にかけた癖にこのおっちゃんは結局、鍛冶バカなんだな・・・と思ってしまうケイス。
「これから俺の経験や今まで知った全てをお話しします。おっちゃんも覇王の鎧を作って逃げた経験があるなら、恐らくすんなりと飲み込めると思います」
どうやらジャンヌはちょっと怒っているようだから俺から話した方がよさそうだ。
「ベルベウスよ。我は人間と同じ機能は大体を保ったままだがアンドロイドだ。単なる武器ではない。勘違いするな」
そしておっちゃんに3000年の文明と滅びた経緯、女神様に召喚されて頼まれた事から今までの事を全て話した。
どうやらおっちゃんもオウタンが殺された事などを経験しているのか、少し質問を挟んで来ながら全て話を聞いた後には納得した表情をしていた。
「まさか覇王の鎧も兄ちゃん手元にあるとはな!ワッハッハッハ!なるほどなー。俺も恐らく女神様が目を付けていたんだな。来るべき時に備えて兄ちゃんと会える様に。すんなり納得が行っちまったぜ」
おっちゃんは間違いなく女神様に目をかけて貰って、来るべき時が来るまで守られていたはずだ。
ジャンヌという未完の刃を手に入れたりしたのも、恐らくあまり力を使えない女神様がずっと昔から計画していたのだろう。
「ええ、恐らく女神様は何百年前から、いや下手すると3000年前から俺が偽の神を倒せるように少しずつしか使えない力を蓄えて、計画的に使いながら準備していたのだと思います」
「ああ、わかった。嬢ちゃんに世界最高の剣を作る!約束する。しかし、偽の神を倒した後に覇王の鎧と嬢ちゃんに作った剣は処分したいから持ってきてくれることが条件だ。お前たちが悪用するとは思えないが、お前たちがいなくなった後はわからんからな」
おっちゃんは自分で作った武器で人が死んで欲しくないのだろうな。
この条件は平和になった世界に強い武器や防具は無用であり俺も賛成する。
「わかりました。それは俺も女神様に頼まれた事にも当てはまりますので賛同します。必ず約束は守ります」
こうして偽の神への対抗する新しい同志ベルベウスを得たケイスはルルの最強装備を手に入れる事に成功する。
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