第十一話
「我が名は日葉クリス、我が魔術は爛々と燃え盛る焔、我が魔術の真祖よ、此処で我と共鳴せよ!」
魔方陣は、赤く煌めき、周囲の地面は黒く変貌する。天井は亀裂が入り、やがて崩れ空が見える。その空は暗く、周囲の気温は80℃を優に超えた。魔方陣の中にいなければ肌が焼けているだろう。
黒く焦げた地面は遂に中心から裂け始め、その隙間から焔を噴き出る。そう、それはまるで煉獄のような。
「炎天の世にて紅く開闢す、『疑似創世神話:CODE=Ⅲ』」
そして、視界の全てが真っ赤に染まった。それは、すべて焔。
この煉獄にて、未納はどこにいようと逃げられない。火によってすべてが浄化される。
バトルフィールド内において、焔に飲まれなかったのは魔方陣の中にいた俺とクリスだけ。つまり、未納は逃げきれない。
「これが……学院TOPレベルの魔術かよ……」
だんだんと空が明るくなるにつれて、魔術が終わる。
地面は焼け焦げ、まだ地面を歩くのも難しい。
だが――――まだ終わっていなかった。
「なんちゅう……火力なの……」
全身が焦げながらも、よろめきながら立ち上がる未納の姿がそこにあった。
なんていう人だ、およそ生命体が耐えきれる魔術ではないだろうに。
「諦めなさい、私たちの勝ちよ」
「ふふ……いや、まだね」
そういうと、未納は地面に何かしらの液体を垂らし始めた。
あれは、魔素液……まさか、まだ何かしらの魔術を使おうというのか!?
「そんなことさせな――――!」
すぐさま未納を止めようとしに行ったクリスは、青い壁に阻まれる。
「私もそこまで間抜けじゃない、魔術防壁を張っているわ」
「なにこれ、なんて濃度……」
いや、あれは魔術防壁なんてレベルの物じゃない。
未納を囲むようにして小さく張られているが、その魔力濃度は尋常じゃない。こんな魔術防壁、生粋の天才じゃないと張ることさえ出来ない。あれを魔術師が破壊するのは不可能に近い。それに、クリスは最大出力の魔術で魔力を使い切っている。
そして、順調に未納は大魔術の準備を始めている。
「下がれクリス」
「カズスケ……?」
そう――――魔術師ならば、通ることは不可能。それは、あの防壁の魔力が魔術師の体に含まれている魔素を反発し、嫌うからだ。
「残念ながら通れないわ、私の防壁を突破した者は未だいない」
「……防壁が嫌うのは魔素、ならば通るにはどうする?」
「魔術を開花させた親から生まれれば、みんな魔素を構成して生まれてくるわ。そして、いま世界は魔術師しかいないのよ」
「……その考えは間違いだ、未納」
その未納を囲っている魔術防壁を――――何の不自由もなしに通り抜けて見せる。
「――――そんな、馬鹿な」
「俺たちの勝ちだ、ジャーナリスト」
魔術防壁を突破され、大魔術の魔法陣を描く腕は止まり、膝から崩れ落ちた未納。
これによって、戦意喪失、つまりは降参だ。
「――――勝者、日葉伏見ペア! これにて決着です!」
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モチベがめっちゃあがります。