二話 僕が勇者とかなんかそういうデータあるんですか?
HEROゆき「怒ってる人って面白いよね」
王「おぉ、ついに成功したのか!」
家来「勇者様だ! これで世界は救われるぞぉぉぉぉ!!」
オオオオオオオオオオオ!!
HEROゆき「? ……あ、僕のことすかw」
王「そうじゃ! お主こそが魔王を倒し、この世界に光をもたらす者! 伝説の勇者なのじゃよ!」
HEROゆき「まあ確かにそうですけど、えっと、神様に聞いたんですけど、他にもこの世界に力を持って転生した人っているらしいんすよ。それも結構多く」
HEROゆき「勇者が何人もいるのっておかしくないすか? 何人も来てるのに一人も光もたらせてないじゃないすかw」
王「……兎に角、お主には早速旅立ってもらいたい。まずはここから北にある聖剣の森へ行き、未だ誰も抜いていない聖剣を抜いてみてほしいのだ」
HEROゆき「聖剣……?」
王「そうじゃ。古来より魔王は、聖剣によって討伐されるという言い伝えが……」
HEROゆき「すみませんなんすか聖剣って?」
王「……ダメだこりゃ笑」
HEROゆき「いや確かに僕この世界に詳しくないかもしれないすけど、それはちょっと人喚んだ人に対して失礼じゃないですか?」
王「……せ、聖剣とは、かつて魔王に苦しめられていた我々の先祖が古代技術を以て発明した、神聖な力が込められた剣のことじゃ。その力は絶大で、真に勇者たる者にしか抜けない封印が施され……」
HEROゆき「聖剣が刺さってるとこ掘り返せばよくないすか?w」
HEROゆき「あの要は、来るかもわからない聖剣を抜ける真の勇者(笑)を待つより、自分達で抜く方法を探す方がずっとコスパいいと思うんすよね。なんでそれしないんすか?」
王「……聖剣は古代技術によって造られた台座に突き刺さっておる。過去そのような事を考えた阿呆もいたようじゃが、叩き割ろうとしても、破壊の禁術を使用しても台座を壊すことができず終わった。故に……」
HEROゆき「であれば、台座ごと魔王討伐に行ってください!」
王「は?」
HEROゆき「あの……もしもどんな手を使っても壊せない台座があるのだとしたら、それ自体に価値があるんすよ。だって壊れなければ絶対に崩れない壁にできたりしますし、壊れない巨大な武器とかコスパ最強だと思うんすよね」
HEROゆき「あと、デメリットがほとんどないんすよ」
HEROゆき「真の勇者しか聖剣が抜けないのであれば、当然魔王も抜けない訳じゃないですか。もし魔王討伐にその台座を使って負けて、魔王に渡ったとしても、魔王には抜けないし、台座が硬いので壊される心配もないんすよ。いいことずくめなんすよね」
HEROゆき「なので、誰か力持ちの人に聖剣が刺さったままの台座を渡して、魔王討伐に行かせると、いいんじゃないでしょうか」
王「……普通に考えて、そのような行為は国民が納得しないだろう。聖剣が魔王のもとに渡り取り返せなくなれば、魔王討伐の希望もなくなる」
HEROゆき「確かにそうなんすけど、現状を維持してもこのままだと意味ないんすよ」
HEROゆき「そもそも聖剣が抜けたとしても、魔王を倒せる確率って低いんすよね。えっと、古代技術によって造られたって話ですけど、そんな魔王を倒せるかもしれない凄い技術を持った人たちですら、魔王を倒せてない訳じゃないですか。だって壊れない物質を造れる集団って、物理法則ガン無視のバケモノじゃないすか。それって国家規模で脅威なんすけど、魔王ってそれ以上に強かったんですよね」
HEROゆき「要は聖剣が抜けても抜けなくても倒せるか分からないくらい、多分魔王って強いんすよ。結局確率が変わらないのであれば、防衛やら何やらにこれ以上金かけるより、賭けてみたらどうかなって話です、はい」
王「じゃあお主が行ってくれ。勇者ならステータスも申し分ないだろう」
HEROゆき「いやもっといい人いるでしょw なんでどこの誰とも分からない僕に任せようとするのか僕分かんないんすけど」
王「初めに勇者と言ったろう」
HEROゆき「うそをうそと見抜ける人でないと(国を治めるのは)難しい」
王「嘘つくのやめてもらっていいですか?」
HEROゆき「なんだろう、真似するのやめてもらっていいですか?(目パチパチ)」
HEROゆき「ブクマ0とかなんかそういうデータあるんですか?」