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5.チームSPEED


「ここがレオの部屋」


 スコットたちが真っ先に案内してくれたのは校舎の三階。


 校舎はコの字型に建っている。

「みんなの部屋は三階な」

 ノイズが肩に担いだ段ボールを下ろした。


「すごい! ここ、元は教室ですよね?」


 引き戸からドアに改築された扉の先には、見事にリフォームされた洋室があった。


 教室二つをつなげた充分な広さ。

 風呂もある、トイレもある、簡易キッチンもある。ベッドも机も、家電も揃っていた。


 廊下は土足で、部屋の入り口に三和土たたきはなかったので、レオは廊下で靴を脱いだ。

 室内は柔らかいクリーム色の絨毯が敷き詰められている。


「好きなように改装していいよ。

 壁を黒く塗ったり、照明を真っ赤にして骸骨を飾ったりとかさ」

 段ボールを積み上げながら、スコットがからかうように言い、玄関からついてきているキティも声をあげて笑った。


「あはは! あたしの部屋、いーっぱいぬいぐるみあるんだよ! 遊びに来てね!」

「うん」

 レオが ふとキッチンに目をやると、元気よく説明した。

「ご飯はね、みんなで食べるの。ここはあんまり使わないと思うよ!二階に食堂あるから! 」


 スコットが頷く。

「食堂とリビングでなるべく顔を合わせるようにしてる。同じチームでも、いつも全員で動いてるわけじゃないからさ。コミュニケーションとるようにしてんの」

 ノイズが、思い出したように口を挟んだ。

「そうや! ランはどうしたんやったっけ? そろそろ帰ってくるんかいな」



「あーーー、ラン、まだ帰って来ないねぇ! 早く会いたいな!」

 キティがレオに嬉しそうに言う。

「もう一人いるの。ランって言うの!」





       ⬜︎  ⬜︎  ⬜︎  ⬜︎





 一階に降りると、白衣を着たジェニーが保健室から出てきた。

「レオ君、ようこそ、チーム『SPEEDスピード』へ」

 握手を交わす。

 女性らしい柔らかい手。


「チーム・スピード?」

 尋ねると、キティが答えた。

「うん、あたし達、イスゴっていう組織の中の『SPEEDスピード』っていうチームなの」


 レオは口の中で、反芻した。

「イスゴ…イスゴのスピード。

 どうしてスピードっていうチーム名なんですか?」

「……」

「……」

「……」


「誰も答えられへんのかーいっ」

 ノイズが突っ込んだ。

 スコットが腕を組んだ。

「考えたことなかったな。

 もうずっと、俺たちが入る前から代々この名前なんだ」



 保健室はジェニーの仕事部屋。

 ここも広く繋げてあり、病院で見かける設備や機材がずらりと揃っていた。


「私の専門は、イスゴ遺伝子なの。イスゴ遺伝子について研究しながらチーム活動してるの。

 イスゴ遺伝子って、ひとくくりにできなくて、みんな それぞれ体質が違うから…、そうね、例えば、風邪をひいたとき、喉にくる人と、鼻にくる人がいるみたいに、病気になった時もそれぞれ症状が違うのよ。そういうのも研究してるの。

 怪我をしたり、病気になったら私が診るので いつでも相談してね」



 理科室はノイズが占領していた。

 天井がずっと上まで吹き抜けになっている。

「これ……天井、どうしたの?」

「なんや息苦しいからぶち抜いたった」

「えーっ」

「実験しとると熱気がこもるねん」

「……へー」


 ごちゃごちゃと用途の分からない機械がたくさん置いてあり、ちょっとした工場のよう。

「昨日、レオに渡したスマートフォン、ウチの手作りやから大事にしたってや」

「え? ……えぇ? 手作りのスマートフォン?」

 レオは、ポケットからそのスマートフォンを取り出して しげしげと見つめた。

「ウチ、モノ作るんが趣味やから」




 図書館はスコットの溜まり場。

「俺はなんも研究してないよ〜」

 スコットはニヤリと笑った。

「趣味は読書」


 ジェニーが微笑んで言う。

「スコットは言語学者なの」

「作家もやろ? なんやら本を書いとったやん。オモロいペンネームで。太郎、なんちゃら」

 レオは驚いた。

「もしかして太郎たろう次郎じろ之介のすけ?」

「せやせや、そんなんや」

「知ってる! 俺、本いっぱい持ってる」


 スコットは嬉しそうにレオに握手を求めた。

「やっほー、読者!」


(けっこう人気のある作家だと思うんだけど……スコットが?)




 体育館。

 ところどころにブロックが積み重ねられている。


 何か焼いたのか焦げ目がついているブロックや、派手に崩した山もあり、ひとつだけぽつんと置いてあるブロックもそこかしこにある。


 キティがたたたっ、と中に入っていく。

「あたし、ここで練習してるんだ〜、今度レオも一緒にやろ!」


「練習? いいよ」

(なにするんだろ)

 レオが応じると、キティはニコッと笑って右手のひらを上に向けた。

「まだ、あんまり上手じゃないんだけどね!」


 左手で団扇のようにあおり、ふっ、ふっと何度も小さく吹くと、手のひらの上に煙でできた小さな球体が現れた。


「!?」

 レオが声を出せないほど驚いていると、キティは

「んー!」

と唸って、右手をフライパンのように揺すった。

 小さな球体は少しずつ大きくなっていき、明らかに手のひらの上に浮いている。


 キティは握りつぶさないように振りかぶってそれを投げると、数メートル弧を描いて飛んでいき、

 バンッ!

と爆ぜた。

 当たったブロック屏は黒く焦げている。


「ね? まだ小さいでしょお? 特訓しないと! レオもね!」

 レオはしばし考えて質問した。

「……これ、みんなできるの?」


 ノイズがブフーーーッと吹き出して、レオの肩をバンバン叩いた。

「その顔! ひははははは!」


「ノイズ、笑いすぎよ、初めて見たら驚くわよ。

 レオ、大丈夫。みんなできないから」

 ジェニーはそうは言ったものの、驚くレオの顔を見て、やはりプフッと笑いをもらした。


「キティは物質のエネルギーを集めることができる体質なの。

 集め方を変えれば、いろんな球体が作れるのよ。ここで練習しているの」









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