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破棄系

ロミオ王子のいいわけ。

作者: アロエ



幼い頃から婚約を結んでいた令嬢から別れを告げられた。


原因は私の浮気だ。



男爵家の娘であるリリアータと出会ったのはある伯爵家で行われたパーティーの時。少し酔い冷ましにと庭園に足を運び、そこで泣いている彼女を見つけたのだ。


男爵家に養子にもらわれたばかりで知り合いがおらず、着ているドレスも時代遅れなようで同じ年頃の娘に笑われてしまいとてもではないが会場に戻れないとはらはらと真珠のような涙を流している彼女の飾らない美しさに心を惹かれた。


最初は気まぐれにハンカチを貸しただけ。それでも彼女は驚きそして私の気まぐれに起こした行動にお優しいんですねとはにかみ笑ってハンカチを受けとり涙を拭った。



それから彼女の姿を見かければ何か困っていることはないかと聞き、友人たちにも彼女を気にかけてやってくれるようにと念を押した。


友人たちは不思議そうにしていたが彼女の抱えている事情を詳しく話せば納得し私がいなくとも彼女のフォローに回ってくれるようになった。


この頃、一度婚約者からも男爵令嬢のみを特別扱いする理由を問われた為に彼女にも正直に事情を話したが、友人たちとは違い少し訝しむような反応を示し、殿下の寛大さは理解できるし立派だと思うが、男爵令嬢だけに肩入れしては他の者たちに目をつけられる可能性があるので気を付けろと。


そのような苦言を呈されハッとなったが正直に聞き入れる事は自分の考えのなさを認めるようで、つい反発したような返事をしてしまい更に軽蔑されるような眼差しで一瞬見られてしまった。



このような私の婚約者でも小さな頃はとても素直で可愛らしく、また泣き虫で私が離れるとすぐに泣いてすがってきて手を焼いたような愛しい人だったが年を経る毎に段々と表情は動かなくなり、泣き虫もどこかへ消えてしまった。勉学に勤しみ、私よりも優秀だとの話も度々聞いた。


それに少し心が穏やかでなくなったのもまた事実。


昔のあの子の面影を求めている内に男爵令嬢を見つけ、代わりとするように彼女の面倒を見ていたのかもしれない。



妾の子がと難癖をつけられたと聞き、暫く行動をともにすることにした。私の前で難癖などつけられる度胸があれば来ればいい。


古いドレスに遂に穴が空いてしまったと聞きそれは流石に可哀想だと友人たちの妹や親族のものが持つあまり時代遅れにならない程度の服を貸し与えようとしたが、誰かのものを奪うようで気が引けると言われて少し悩んだが一着、二着とだけ私の持つ資産から与えた。私には婚約者がありこれに深い意味はないからね、と喜ぶ彼女に水を差すと思いつつ伝えると少し不満そうな顔をしていたがわかっていますと頷いた。


教科書をなくした、階段から落ちた、形見の品が壊れた。様々な事が彼女に起こり話題には事欠かなかった。


恐ろしいからもっと一緒にいてほしい、と言われた時には流石に困った。私には兄がいて国王にはならないが、それでも兄の補佐を勤める為に私も帝王学の他に学ばなければならない事が多々ある。今以上には時間は割けないんだと言うとやはり泣かれてしまって途方に暮れた。


手に余ると見てふと同じ学年の婚約者の事を思い出し、自分の力量のなさをまた見せてしまう不甲斐なさを思いながらに手を貸してはくれないかと助力を求めに行けば婚約者は大勢の貴族女子らに囲われていた。


今更何をしに来たのか、彼女の事を何とも思わなかったのかと口を開く前に言われて訳もわからずに彼女を見ると彼女はいつもの無表情で。だけど、人垣に守られる中でそのペリドットの瞳はみるみる内に潤んで、そして大粒の涙が浮かんでは零れていった。


声もなく、表情もなく。ただただに泣く彼女を周りは慌てて隠し、私に非難の目を向けるとお引き取りをと促した。


彼女を泣き止ませなければと自然と上がった腕と歩み寄ろうとした足も止め、私は後ろ髪を引かれる思いをしながらその場を立ち去るしかできず。



それからあまり経たない内に婚約解消が成された事を従者が持ってきた手紙より私は知った。


愕然とした思いと、更に続いた言葉に目眩がした。私が世話をしていた令嬢の家に責任を持って婿に入れと。


私は兄の補佐をするためだけに勉学に励んで来たというのに、それすら叶わずに名ばかりの家に追いやられるのか。


……いや、婚約者の、ロメリアの心を考えずに、諫言や周りの事を深く考えられずに行動し続けた自分の行いが巡りめぐって来たのだろう。



私が王子でなくなったと知ったリリアータがどんな反応をするかも知れずに、私は彼女の家に婿に入る。男爵も一体どのような顔をして私を迎えるのだろう。



ロメリア。泣き虫な君を幸せにしてくれる私以外のものが現れることを心より祈っているよ。



ロメリア。



ロメリア……。



別に男爵令嬢に惚れてはいないので未婚の男女で二人きりにならないようにしたり、ドレスを与えるのを悩んだりはしています。結局買い与えてますが。


けれども婚約者ほったらかして他の女にかまけてたら疑われても仕方ないですよね。火のないところにはなんとやら。もっとロメリア嬢と話をするか、周りの声を聞いてればまた違った未来もあったかもしれませんが後の祭り。

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