第2話
「あ、ほんとに夜桜先生もいる」
2限の体育の授業は先生も見に来るって本当だったんだな
「今日は夜桜先生が見に来てるから頑張れよ~!」
「そ、どういう意味だよ~」
男子からは照れ隠しと同時にやる気に満ち溢れていた
「今日はサッカーやるぞー」
「えぇ、サッカーかよ~。勝てる気がしねぇ」
そう、うちの高校は女子サッカー部が全国大会常連の強豪校だ
しかも、うちのクラスには2年にもかかわらずレギュラーになった生徒が3人もいる
「なにいってるんだ、一生懸命やることに意味があるんだぞ?」
「先生その言い方だと最初から勝てると思ってないですよね・・・」
「そんなことないぞ日向。キャプテンはお前だ」
「えぇ、俺ですか」
「多分みんなも異論ないと思うぞ?」
「まぁそうだな、夜妬なら問題ねーわ」
ちょ、一真まで・・・
「わかりました、やりますよ」
はぁ、キャプテンというか誰かに指示出すの得意じゃないんだけどな
みんなの期待を裏切るわけにはいかないし頑張ろう
なんて考えていると夜桜先生が近づいてきた
そしてみんなに聞こえない声で
「日向さん...頑張って...!」
「??...はい、がんばってきます?」
なぜ小声?そして敬語じゃない?
よくわかんなかったけど元気出たからいっか
この後みんなで作戦会議やポジションなどを決めて
おれはフォワード、いわゆる攻める役になった
「よし、いいか?前後半なしの30分でやるぞー!それではキックオーフ!」
試合が始まった。
やはり女子チームはスピードがぜんぜん違い、チームワークも良かった
どんどん攻められているが何とか守っている感じになっている
「とにかくボールを回していこう!」
なんて声はかけるけどみんなに聞こえてると思えないし
やっぱり無理だったのかな
自分を責めながら周りを見るとそこには夜桜先生がいた
「そうだ、先生も期待してくれているし、頑張れって言ってくれたのに・・・
こんなんじゃだめだ!おちつかないと!」
そう考え、深呼吸すると今までふさがっていた視界が一気に広がった
「みんな、俺がサポートするから自由に動いていいよ!」
「夜妬?わかんねぇけど分かった!お前に任せる!」
うちのクラスは個性的な人や個々の力を持ってる人が多いから
みんなで力を合わせてっていう考え方じゃなくて
みんなの力を最大限出せる司令塔が機能すれば十分戦えると思った
そのおかげか、序盤とは思えないくらいに戦えた
結果は負けてしまったけど、2-3といい勝負になったと女子チームからも言ってもらったし
みんなも楽しかったなといってくれてうれしかった
「やっぱり夜妬にまかせて正解だったな!」
「一真・・・人の気も知らないで・・・」
「なにいってんだよ、俺は最初からできるとわかってたぜ?」
「なんだそれ・・・意味がわかんな・・・」
「ん?おい夜妬?夜妬!?」
最近運動不足だったせいか体力を使いすぎて気を失った
「かっ...よか...たよ...日向く...」
ん・・・あれ・・・
「あれ、ここは・・・?」
「!?...目が覚めましたか?ここは保健室ですよ」
夜桜先生・・・あ、俺は疲労で倒れっちゃったのか
「倒れちゃったんですね、すいません心配かけちゃって」
「本当に心配しましたよ、もう大丈夫そうですか?頭ぼーっとしたりしませんか?」
「はい、もう大丈夫そうです。いま何限ですか??」
「いま5限が終わったところですよ?」
「え!?」
そ、そんなに寝てたんだ。てか何時間寝てるんだ
俺ってそんなに体力なかったっけ・・・
一年でこんなに落ちるもんなんだなぁ
「私は6限の授業に戻るので日向さんはゆっくり休んでいてください」
「いや、もう大丈夫なんで授業出ますよ!」
「だめです、安静にしててください!」
「わ、わかりました。もう少し寝させていただきます」
「はい、それでは行ってきます」
そう言って先生は保健室から出て行った
「夜桜先生だっけ?あの先生も真面目よね~」
夜桜先生が出て行ったすぐに奥のほうから声が聞こえてきた
「松尾先生、いたんですか」
「いたんですかって失礼じゃない?それに朱音さんって呼んでっていったでしょ?」
「なんで俺だけ朱音さんって呼ばないといけないんですか・・・」
「いいじゃない!よく保健室貸してあげてるでしょ!」
「それとこれとは別な気がしますけど・・・」
「ふん!」
こんな人だけど保健室の先生なんだよな
松尾朱音先生、俺がこの青林高校に入った時からお世話になっている
「そんなことよりさ、日向君って夜桜先生と昔から知り合いなの?」
「そんなわけないじゃないですか、今日赴任してきたって先生も知ってるでしょう」
「それは知ってるんだけどね、2限終わりに日向君が運ばれてきてから授業が終わるたびに休憩の間
ずっと日向君のそばにいたのよ」
休みのたびに・・・?そんなに心配してくれたのかな?
「先生が言ったように真面目な人だからじゃないですか??」
「そうなのかなぁ、それだけじゃないと思うのよねぇ」
「???」
「ま、いいわ。もう少し寝てなさい」
「なんなんですかもう・・・・」
起きた時にいってた先生の言葉・・・何言ったんだろう
俺の名前呼んでたのは聞こえたけど
そのほかが聞こえなかった・・・
早く起きなさい、とかかな?
夜桜先生ならいうかな??
そんなことを考えているうちに眠りについた
読んでいただきありがとうございました!