第9話 つーさんの家
祐樹はなぜか自分の部屋なのに隅っこに座っていた。
「あのー、なんで僕の部屋なんですか……そしてなぜファミコンなんですか?」
「そりゃあアレだろ? 楽しいからだろ?」
まーさんが適当に答える。
「まーさんの家でやればいいじゃないですか?」
「今日ダメだ、ユウナの友達が来てるからな」
「他に行くとこないしなぁ」
つーさんが入ってくる。
「つーさんの家はダメなんですか?」
するとまーさんが笑い出す。
「知らないのか? つーさんの家は黒い服を着た人たちが黒塗りの車を止めて親父って叫ぶような場所だぞ?」
「え!? それってもしかして……」
祐樹は完全に引いた。
「おいおい、適当な事言うなよ。 ビビるだろ?」
つーさんは笑いながら答える。
「本当のところどうなんですか?」
「いやぁ、俺の口からは……見にくるか?」
つーさんが提案した。
「ついでにメメロ見ようぜ。 5歳児のメイちゃん好きだもんな?」
まーさんがつーさんに言う。
「メイちゃんは3歳ですぅ。 しかも好きとかじゃないですぅ、愛だね。 これはもう愛としか言いようがないね」
つーさんは祐樹と同じロリ仲間なのかもしれないと祐樹は感じた。
「あのぉ……」
祐樹が声を出そうとした時まーさんとつーさんが立ち上がりお互いの胸ぐらを掴む。
「メイちゃんは5歳しかねぇだろ!?」
「メイちゃんは永遠の3歳児なんだよ!!」
「ふざけるなメイちゃんはもうすぐ小学生の5歳だ!!」
「お前ロリコンじゃないからわからないんだよ! カンタのばぁちゃんに欲情しろ!」
「人間にしか欲情してたまるか!!」
「残念でしたぁ、ばぁちゃんはギリ人間ですぅ」
もう会話がひどかった。
「あの、とりあえず見ませんか?」
「そうだな、決着つけてやる!」
2人は祐樹を連れてつーさんの家へと向かった。
祐樹はビクビクしながらついていく。
しばらく歩くと大きな駐車場のある葬儀場に到着した。
「なぜ、葬儀場に来たんですか?」
「家だからだよ。 何言ってんだよ。 さっきまーさんが言ってたじゃねぇかよ」
「え? だって黒い服着て……黒塗りの車で親父って叫ぶ人がいるって……」
「いるじゃねぇか、喪服着てるし霊柩車止まってるし、ほらあっちこっちで親父って泣きながら叫んでんじゃねぇかよ」
騙された。
完全に騙された。
しかし祐樹はどこか良かったとすら思えた。
「あの、ここって日本で1番の葬儀場ですよね?」
「そうだぞ。 だからつーさんの家には映画館があるんだ」
「え? ルームシアターとかではなくてですか?」
「違う。 普通のスクリーンがある。 さぁ決着だ!!」
2人は葬儀場の裏にある豪邸の中に入っていくと地下に降りる。
映画館にある扉がそのままあったので中に入ると普通の映画館があった。
「ここって営業出来ますよね?」
「それじゃあ意味がないだろ? 最新作まで見えるぞ」
つーさんはさりげなく教えてくれたがそれって放送権とかでお金がかかるんじゃと祐樹は思った。
メメロが上映されるがメイちゃんの年齢は本編では出てこなかった。
ただただ2人は感動していた。
「やっぱりいい作品だ! 日本の誇りだろ」
「くそ、ロリコンって言って悪かった。 俺たちはみんなロリコンなんだ」
2人は訳の分からない内容で和解すると仲よさそうに出て行く。
祐樹も慌てて外に出ると既に真っ暗になっていた。
「お、夜も遅いから泊まっていくか? 部屋はいっぱいあるぞ」
つーさんが祐樹に言ってくれる。
ここはつーさんの家である。
当然茜ちゃんもいるはずだ。
「あの……と……」
その時まーさんが祐樹の口を塞ぐと物凄い勢いで家の外に出る。
「祐樹お前ではこの家には泊まれない。 恥をかきたくないなら帰ったほうがいい」
つーさんは後を追ってくる。
「祐樹泊まってけよ! 楽しいぞ。 茜もいるぞ〜」
祐樹は茜ちゃんが捨てがたかった。
「漏らすなよ」
そう言うとまーさんは後ろから押してくれる。
「え?」
祐樹はその言葉を理解出来ないままつーさんに連れられて家の中に舞い戻った。
夜寝る部屋を教えてくれた。
なぜか茜ちゃんに出会わなかった。
不安に感じてトイレに行くためだと自分に言い聞かせて廊下に出た。
夜の0時を少し回ったところだ。
廊下は何故か少し暗く霧がかかっている様に見えた。
さっきつーさんは茜ちゃんの部屋を教えてくれた。
祐樹は扉の前に立つとゆっくりとドアノブを回す。
ギーーと音がなり扉がゆっくりと開く。
中に入るとベッドに眠る黒髪の女の子がいた。
祐樹はそっと近寄るとゆっくりと茜ちゃんに近寄った。
しかしその時どこからか笑い声が聞こえてくる。
「フフフ」
次の瞬間寝ていた女の子が襲いかかってきた。
顔は骸骨で髪の毛だけが生えているがその髪の毛はどんどんと伸びて祐樹を絡める。
ーー助けて。
声も出ない。
祐樹は恐怖で漏らしそうになった。
『漏らすなよ』
まーさんの言葉を思い出した。
必死に頑張って漏らさないように力を入れるが体は動かない。
骸骨の顔がどんどん祐樹の顔に近づく。
ーーギャァァァァア
声にならない悲鳴を祐樹はあげた。
「ギャァァァァア」
祐樹は目覚めると共に飛び起きる。
「ウルセェなぁ」
部屋につーさんが入ってきた。
「漏らしたか!?」
なぜかつーさんは嬉しそうだ。
「つーさん……」
そこで祐樹の膀胱は限界を迎えた。
朝まーさんも起きてきていた。
「おはよ、漏らさなかったか?」
パジャマが上下で違うので分かってるはずなのに聞いてきた。
「うぅ……」
祐樹は何も言い返せない。
「しかし、また漏らす奴がいるとはやっぱりあの部屋はダメだな」
「漏らさない人いるんですか?」
「家の家族意外だとまーさんくらいかな?」
どんな精神力してるんだと祐樹は思った。
「だってよ、骸骨って実体があるだろ? 殴れるものは怖くないさ」
「じゃあ本物のお化けは?」
茜ちゃんが眠たそうに目を擦りながら起きてきた。
「殴れると思うんだよな。 会ったこと無いけどさ」
まーさんは何故か自信たっぷりに答える。
「あら、祐樹くんおはよ」
「茜ちゃん、まずはお兄ちゃんに挨拶を……てかお兄ちゃんって呼んでご覧。 お・に・い・ち・ゃ・ん」
「……まーさんも祐樹くんいじめたらダメだよ。 私の同級生なんだからさ」
「いじめてねぇよ。 仲良く遊んでるだけさ」
2人はまるでつーさんがいないかの様に会話を続ける。
「なぁ、祐樹。 骸骨女が何故でるか教えてやろうか?」
つーさんは諦め祐樹に話しかけてきた。
「ここが葬儀場だからじゃ無いんですか?」
「実はな、この家はアメリカから移築されたんだ。 それではどうも色々訳ありの家みたいだぞ?」
「……」
「まぁ昼間は大丈夫だから気にするな」
「……」
祐樹は恐怖の根源を悟ったと同時に恐怖で口が聞けなくなった。
「祐樹くん、大丈夫よ。 冗談だから」
つーさんを睨みつけながら茜ちゃんが言う。
「そっか曰く付きじゃないんだね」
祐樹はホッと胸を撫で下ろす。
「違うわ、アメリカからの移築じゃなくて日本国内での移築なの」
「て……ことは……」
「まぁ、曰く付きは曰く付きね」
茜ちゃんは気にしないかの様に言うと紅茶を口に運ぶ。
「まぁ楽しかっただろ?」
つーさんは嬉しそうに言う。
「嬉しくないですしもう来たくないです……」
「ここで髑髏女倒したら茜ちゃんのポイントアップするんじゃないのか?」
まーさんが小声で悪魔の囁きを言う。
「でもどうやって?」
「それは説得だ。 お前殴っても弱そうだしな」
「やめなさい。 私は気にしてないから、千代ちゃんをいじめないで」
「え?!」
祐樹は茜ちゃんをじっと見る。
「千代ちゃんって言うの。 友達なの。 だから、ねっ」
「あ、はい……」
祐樹は顔を真っ赤にしながら答えた。
かわいい。
全人類の中で1番可愛い。
そんなことを思っているとつーさんに頬をつねられた。
「まずオネショ直してからだ」
祐樹は違う意味で顔が紅くなった。
続く?