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第7話 台風

秋になり台風で学校が休みになる事も多くなった。



台風で学校が休みになり祐樹は家で1人ゲームをしていた。


外は風が強くとても出ていけるような感じではなかった。


「まぁいいか。 最近ゲーム出来てなかったし」


バイトも入っていないのでゆっくりとゲームをしようとしていた。


今回の台風はとてもゆっくりで2日は休みになると思っていた。


「台風毎日来てくれないかなぁ」


そんな事を呟きながらキャラのレベル上げをしながらお菓子を食べていた。


その時インターフォンが鳴る。


「あれ? 今日荷物届く日だったっけ?」


祐樹は立ち上がると玄関を開ける。


そこにはつーさんがスーパーの袋を持って立っていた。


「どうしたんですか!? とりあえず中に入ってください」


中に入れるとバスタオルを渡しシャワールームまで案内する。


脱いだ服は乾燥機に入れて乾かす。


普通ならここはかわいい女の子……つーさんの妹の茜ちゃんが来てラッキースケベ的なイベントが発生するはずなのだが。


「悪りぃな。 いやぁ参った参った」


つーさんは祐樹の部屋に座ると乾いた服を着ながら言った。


「どうしたんですか? 今日バイトでした?」


「いや、あそこ停電になってさ、おまけに浸水してきて冷蔵庫壊れてよ、当分営業出来ないな」


「まじですか!?」


「あぁ、さっき莉子さんから連絡あった。 祐樹には俺から伝えておくって言っといた」


「はぁ……」


「まぁ、それもあるんだけどよ。 バーベキューしないか?」


「いいですよ……え? もしかして今からですか!?」


「当たり前だろ? その為にこの雨と風の中来たんだろ?」


祐樹は開いた口が塞がらなかった。


「いやぁ、やっぱり台風の時はバーベキューに限るよな。 昔っから言うだろ? 苦労は買ってでもしろってさ」


「いや、これは苦労とかではないと思います」


「そうか? 楽しいぞ? 去年は目の前に木の枝が落ちてきてさ火が引火したっけ」


笑いながら言っている。


「えっと他に誰が来るんですか?」


「まーさんだろ、祐樹だろ、あとこの前の和也と、俺のダチのユースケだな」


「えっと和也は来ないと……」


「もうまーさんが呼びに行ったぞ?」


「はい!? ちょっと待ってください、和也の家には行かない方がいいですよ。 彼のお父さんもお母さんも警察官ですから」


「大丈夫だろ? ただ遊びの誘いに行くだけだからさ」


祐樹は心配になりスマホを取り出すと電話をかける。


「和也大丈夫か?」


『今、まーさんと出るところ。 祐樹が来るなら行くよ』


声も震えてない。


そうだ、彼はサバイバルが大好きだった。


「わかった。 後で……」


それだけ言うと電話を切る。


「普段は大人しいけどこういう状況だと逆に燃える奴だった」


祐樹は諦め雨具を装着しつーさんと家を出た。


今は少し雨も風も弱まっていたのでつーさんの後をついて歩く。


しばらく歩くと公園が見えてきた。


「ここ、バーベキューオッケーでしたっけ?」


「いいんじゃない? それにこの公園を家と呼んでいる人たちも火使ってるしさ」


「それはそうですけど……」



この大きな公園は家のない人達の溜まり場になっていて近寄ってはいけないと昔から言われていた。


しかし今は人っ子1人いない。


「台風だから避難したんだな」


つーさんは屋根のついたベンチのところに行くと袋を置いた。


「あとは待つだけだな」


つーさんはタバコを取り出すとマッチで火をつける。


「あれ? つーさんタバコ吸うんですか?」


「あぁ、吸うよ。 そういえば祐樹の前では吸った事なかったな。 ごめん」


すぐに火を消した。


「え? もったいないですよ」


「いや、祐樹に匂いがついたら困るだろ?」


祐樹はつーさんの気遣いに心が震えた。


そこへまーさんと和也が現れた。


まーさんはバーベキューコンロと炭も持ってきた。


「火起こすからちょっと待ってろよ」


まーさんはバーベキューコンロを用意しながらタバコに火をつける。


「おい、ちゃんと祐樹の許可得てから吸えよ」


珍しくつーさんが説教する。


「あ、そうだった。 祐樹、いいか?」


「え、あ、はい……」


「いいのか!? 匂いついてもいいか?」


つーさんが言うが祐樹はまーさんの怖さで断る事が出来なかった。


「えぇ、もうなんでもいいです。 どうせならつーさんも吸ってください」


「ありがとう」


つーさんはいうとタバコを咥える。


「そういえばまだユースケ来てないから火着けれないだろ?」


つーさんが見渡しながら言う。


「大丈夫だ、火がつきゃあいいんだろ?」


そういうとバーベキューコンロの中に炭をドバドバと入れる。


「入れすぎじゃないのか?」


ツーさんも流石に心配なのか言うと、


「大丈夫だって、任せろ」


とまーさんは言い和也に持たせていた水筒を受け取る。


「あれは?」


側に来た和也に聞くと横に首を振る。


まーさんはそれを炭にかける。


中は透明な液体の様だった。


「まさか……」


つーさんはタバコを落としながら言うとベンチの裏に隠れた。


まーさんはタバコをバーベキューコンロの中に入れるとすぐに爆発が起きた。


「着いたぞ」


まーさんは新しいタバコに火をつけると網を取りに来た。


「いや、キャンプファイアーになってますよ!!」


「そうだなぁ。 ガソリン入れすぎたか?」


やっぱりガソリンだった。


よくバーベキューコンロ壊れなかったなぁと祐樹は恐怖に震えた。


そこに1人の大きな男が現れた。


「何してるんだよ。 そんな火の付け方ないぞ」


「いや、お前もこんな感じでつけるだろ?」


「全然違う」


側にくるとさらに大きく見えた。


「それより自己紹介しろよ、祐樹がビビってるぞ」


「あ、すまない。 えっとユースケです。 よろしく、えっと祐樹君と和也君だよね? それで和也君はこう言うのが好きみたいだね」


「え、あ……はい。 よろしくお願いします」


「僕もよろしくお願いします」


2人は頭を下げる。


「そんな頭下げないでいいよ、歳だって変わらないしさ。 それよりもバーベキュー楽しもうね」


物凄く優しい人だった。



「こいつ喧嘩とかしないんだよ。 優しさは俺の方が上だけどな」


つーさんが言う。


「たしかにつーくんは優しいよ。 いじめられてた僕を助けてくれたんだ」


「へー、そうなんですね」


祐樹と和也はつーさんを見た。


「やめろよ照れるだろ」


めっちゃ嬉しそうにつーさんは言っているが満更でもなさそうだった。


「あの、まーさんは?」


祐樹は聞いてみた。


「彼は……優しいよ。 うん、優しいよ」


なぜか目を逸らしながら言う。


「えっと助けてくれた話とか無いんですか?」


「この学校の野球部って今部員10人しかいないだろ?」


「えぇ」


「去年まで200人以上いた強豪校だったんだ。 それで僕も野球部だったんだけどそこでいじめられてね。 つーさんに助けを求めたらまーさんを紹介されて……」


「もしかして……」



「そう、犯人が誰かわかるまでに150人は病院送りになってさ……野球部は壊滅したんだ」


そこへまーさんがバーベキューコンロを持って戻ってきた。


「いい感じになったぞ。 うん? なんの話ししてたんだ?」


「野球部の話だよ」


「あぁ。 あれか」


まーさんはつまらなさそうに答えるとつーさんが持ってきた袋からお肉を出した。


「えー、そんなあっさりと!?」


和也はまーさんが冷静なので驚く。


「和也だっけ? お前アリを踏み潰して全部覚えてるか?」


「いえ……」


「そんな感じだ」


それだけ言うと肉を焼き始めた。


「え? 相手人間ですよね?」


「たとえ話だよ。 分かってくれよ」


祐樹はこの時まーさんは本当にアリだと思っていると思った。


すぐにまーさんはみんなに皿と割り箸を配ると肉を入れていった。


「焼けたから食べてくれ」


まーさんは更に焼く。


焼いたのを食べると美味しかった。








お肉を食べ野菜も食べると外の雨と風の強さが気にならなくなった。


まーさんはほとんど食べていない気がした。


「ごちそうさまでした」


祐樹は言うとゴミをまとめる。


まーさんはコンロの前に立ち何やら焼いている」


「何焼いてるんですか?」


「待ってろ」


それだけ言うと祐樹を座らせる。


「ね、意外と優しいでしょ?」


ユースケが祐樹に小声で言う。


「えぇ……」


祐樹はまだよくわからなかった。


「出来た出来た。 ほい1番大きいのは和也な。 次はつーさん、次が祐樹、お前は1番小さいやつだ」


みんなに焼き芋を渡してくれた。


「大きさが決められてるんですか?」


「それくらいで腹もいっぱいになるだろ? 全員の食べてた量から計算するとさ」


確かにこれくらいなら食べられそうだった。


一口食べてみると甘かった。


「すごく甘いです」


「だろ!? やっぱバーベキューはトウモロコシか焼き芋だよな! 今度はトウモロコシにしような」


まーさんは陽気に言う。


それからワイワイ話しているといつのまにか夜遅くなっていた。


風も雨も強まってきておひらきになった。


「ユースケとつーさんが送ってくれるよ」


まーさんがそういうと4人は立ち別れを告げる。


1人残ったまーさんはまだ動く気配がなかった。


「お休みなさい」


祐樹は気になり声をかけるとまーさんはこちらを見ずに手を挙げると軽く振った。



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