第23話 糸井事件!?
僕の名前は木下 智輝。
今日は塾の帰りに少し本屋に寄って参考書を買おうと思っている。
おっと、決してサボりに行くわけではない。
やっと塾の授業が終わると荷物を片付けてさっさと立ち去る。
ここのメンバーはみんなつまらない奴ばかりだ。
1番勉強ができる女の子はみんなを(主に僕を) ゴミだと思っている。
1番カッコいいあいつはみんなを(主に僕を) キモいと思っている。
こんなところでいつまでもいても受験の役に立たない。
本屋は塾のすぐ側にある。
中に入りお目当ての少女マン……参考書を探す。
確か今日発売日のはずだった。
漫画コーナ……参考書コーナーで新作を探していると後ろから声をかけられる。
「あら? あなたは……」
その声を忘れる訳がない。
今までは塾で1番出来る女の子に罵られているだけで幸せだった。
そんな僕に春が訪れたがすぐに終わった。
しかし彼女以外の女を見てもかわいいとは感じなくなった、罵られたいが……。
「こ、こんばんは。 奇遇ですね」
「えぇ、本当ね。 それで漫画買いに来たの?」
「いえ、これは息抜きといいますか……あのユウナさんは何か買い物ですか?」
当たり前の質問である。
「えぇ、私はちょっと小説でも買おうかと思って」
「そうなんですね。 いや、小説面白いですよね」
なぜかずっと敬語になってしまう。
相手は年下だが何かぎこちない。
「おい、お前こんなとこで……どちらさま!?」
1番イケメンのやつが声をかけてきたがユウナさんを見ると驚く。
「え? 私は弟がお世話になってる先輩に会ったので挨拶を……あなたは?」
「僕は木下の親友の糸井と言います。 どうぞ覚えておいてください」
髪をかきあげながら答える。
「そうなんですか。 それじゃあ私は小説見に行くからまたね。 弟の事もよろしくね」
それだけ言うとユウナはその場を離れるが糸井は後をついてくる。
「いやぁ、こんなところで天使に会えるなんて……お姉さんディナーでもいかがですか?」
「高校生でしょ? ディナーとかお金かかるから……」
「大丈夫です、家は金持ちなので」
「は、はぁ……」
「ここのすぐ近くに高級なホテルがあります、そこの最上階のスウィートでディナーでも」
「いえ、結構です」
ユウナは本棚に目を移す。
「いきなり部屋での食事は嫌だったかな? なら個室を押さえてそこで食べようじゃないか」
「いえ、本当に結構です」
「家のパパはこの街で3番目に金持ちなんだよ?」
「そうなんですか」
ユウナは目当ての本を取るとレジに向かう。
「そうなんだよ、だから送迎もちゃんとできるしなによりも君に相応しいと思うんだよ。 頭脳も塾の中では2番だしね」
「あ、カバーいいです」
ユウナは無視している。
「緊張しすぎて答える事ができないのかな?」
糸井はユウナのアゴに手を差し出そうとするがユウナはスルリとすり抜けるとそのまま本屋を出ていく。
「私高校生とは付き合わないし彼氏いるの。 じゃあね」
「いや、彼氏がいてもいいさ!! 会わせてくれ、買収してみせる」
「……わかったわよ」
ユウナは面倒くさそうに答えると携帯を取り出し電話をかける。
「真連? 今どこににいる?」
『ホテルにいる』
「じゃあ最上階空けといてまってて」
『まぁ、今日は予約ないからいいけどさ……』
電話を切ると糸井と歩く。
「どこに向かっているんだい?」
「彼氏の働いてるところです」
「彼氏は働いているのか……どれくらいの時給なんだい?」
「さぁ?」
「教えてくれないということは大した事ないんだろうな。 僕が買収して君をゲットするよ」
糸井は物凄くヤル気になっていた。
ホテルに着くと糸井は意外そうな顔をする。
「ここで働いてるのか? 意外だな。 ぼくの誘ったホテルに彼氏がいるから断ったんだね」
ニヤニヤしながら言うのでそのまま無視してフロントに行く。
「こんばんは」
糸井がフロントに先回りして挨拶をする。
「いらっしゃいませ……どの様なご用件でしょうか?」
「最上階のスウィートは空いてるかい?」
「少々お待ち下さい」
フロントのスタッフが電話を取るとどこかに掛けようとして止まる。
「ユウナ様、お帰りなさいませ。 お部屋を使われたいとの事ですが如何なさいましょうか?」
「あなた泊まるの?」
ユウナは糸井に聞く。
「君と2人で泊まるよ」
「キャンセルで、エレベーターの鍵ちょうだい」
ユウナが手を差し出すとフロントのスタッフはすぐにユウナに鍵を渡した。
「おい、記帳しなくていいのかい?」
「えぇ。 それより行くわよ」
エレベーターに乗ると鍵を差し込み回す。
すると隠された階のボタンが現れる。
「最上階より上!?」
「えぇ、ここが本当のスイートルームね」
エレベーターが登っていき扉が開くと正面に大きな扉が見える。
ユウナは鍵を差し込むと扉を開く。
「どうぞ」
ユウナが入ると糸井は後に続く。
中には1人の男が座っている。
「おっと、初めまして。 糸井と申します」
すると男は立ち上がり目の前まで歩いてくると名刺を差し出す。
「糸井様いつもご利用頂きましてありがとうございます。 オーナーの永田 真連と申します」
どうみても若い、自分より若いのかもしれないが実は年上なのかもしれない。
「オーナーねぇ。 なぜこの部屋を案内してくれなかったのかな?」
「ここは政府関係者のみが利用されるお部屋ですので、今回はユウナの頼みですので公開致しました」
「なるほどねぇ。 たしかにそれは一般の客には貸さないよなぁ。 ところでオーナーは何歳なの? 若くみえるけどさ」
「まだ16の若輩者でございます」
「そ、そうか……なかなかやるな……」
糸井は少し狼狽えるが負けないと思った。
「彼女を好きなように使っているみたいだな、それは許せん。 彼女は俺が幸せにする!! 寄越してくれ!!」
かなり強気に出る。
「彼女? あぁ、ユウナですね。 それはサービスの範囲外の話ですよね?」
「そうだな、ホテルとは関係ないな」
「それでしたらお断りさせて頂きます」
「なんだと!? 俺が誰かわかってないのか?」
「いえいえ、存じ上げておりますよ。 ですが今回の件だけはお断りさせていただきます」
糸井はまーさんの胸ぐらを掴む。
「金か!? それとも暴力で解決するか!?」
「……暴力?」
まーさんは反応し一瞬瞳孔が開く。
糸井はその目を見ると体が震えだした。
「糸井様、こちらとしましては女性を物の様に扱うことは出来かねます。 彼女の意見を優先していただきたいです。 それが彼女の幸せだと思います」
「彼女は俺といる方が幸せに決まっている。 いいか、俺は仲間を呼べるんだよ、戦うのか!? ホテルのオーナーをやってる様な奴が勝てるのか!?」
「ここに集まられては困りますね……そうだ、ここから少し離れた場所に資材置き場があります、そこに集めて下さい」
まーさんは笑顔で答える。
「いいだろう、彼女を賭けて勝負してやるよ!!」
「えぇ、仕方がないのでお受けしましょう」
やり取りをソファに座り聞いていたユウナは少し糸井が可哀想に見えてきた。
「オーナーさんよぉ、仲間呼ばなくていいのか?」
「えぇ、結構です。 そろそろ移動しますか?」
「いいだろう!!」
ユウナはまーさんの横にピッタリとくっついている。
3人はエレベーターで下に降りるとそのままホテルを出て行く。
5分ほど歩くと資材置き場が見えてきた。
中に入る事が出来ずに外で人が集まって待っていた。
「今開けますね」
まーさんが鍵を開け中に入るとみんな付いてくる。
「これが噂の姉ちゃんか!! 可愛いなぁ」
「よっしゃ、俺たちの大将にかわいい彼女つくってもらおうぜ!!」
「照れ屋さんらしいな!! やっぱかわいい女の子は照れ屋が多いよな」
集まった人数は30人。
まーさんはネクタイを外すとスーツも脱ぐ。
ユウナはそれを受け取ると地面に敷き上にためらいもなく座る。
「ガンバレー」
棒読みで言うとどこからかもってきた水のペットボトルの蓋を開け飲んでいる。
「オーナーさんよぉ、俺たちは強いぜ。 伝説と言われた死神の名を頂いた糸井だ!!」
「そして俺が堕天使の名をいただいた佐藤だ!!」
「俺たちサタンズに勝てるかな!?」
「へぇ、死神ねぇ。 死神なら死なないだろ? いやぁどいつもこいつも弱すぎて殴り足りないんだよねぇ」
まーさんはヘラヘラしている。
「まーくんやりすぎ注意だからね!!」
ユウナが後ろから声をかけるが聞こえていないようだった。
「何を言うんだ……それは……言い過ぎでは……」
「堕天使は翼があるんだったか? 見せてくれよ、もぎ取ってやるからさ」
「堕天使に翼はないんだよ!!」
全員で襲いかかるかの様にまーさんに突撃するがまーさんは近くにあった小石を拾うと1人に向けて投げつける。
額に小石が当たると1人は倒れた。
それで全員の動きが止まった。
「おい、あいつどんな速さで投げたんだよ……」
「化け物か!?」
「糸井さんどうしますか!?」
「狼狽えるな!! 武器を出せ。 一瞬で片付ければ問題ない。 佐藤、お前の力見せつけてやれ!!」
「おいっす!! まずは木刀からだ!!」
どこからか木刀を人数分出すと投げて渡す。
みんなの士気が上がりまた走り出す。
まーさんは前に出て行く。
先頭の男が木刀を振り下ろすとまーさんに当たッタ瞬間木刀が折れたのか先端が無くなっていた。
次の男もその次の男も振り下ろすが全て当たらずに木刀が折れるだけであった。
また動きが止まりジリジリと下がって行く。
「どうなってやがる!?」
まーさんは笑いながら木の破片を1つずつ落としていく。
「君たちがマジックを見せてくれたから俺も見せないといけないと思ってさぁ。 楽しんでくれたかな?」
「まさか……木刀の先端だけ素手で折ったのか!? そんなわけ……いや、相手は化け物だ。 佐藤もっと強力な武器を頼む」
佐藤は頷くと全員に鉄パイプを渡す。
「へぇ、鉄パイプねぇ。 おもしれぇ」
まーさんは自分から寄っていく。
「間合いだぜ」
そのセリフを聞くと男達は振りかざすがまーさんは素手で受け止める。
「うーん、スイングが遅いなぁ」
鉄パイプをしっかり握ると思いっきり振り抜く。
鉄パイプを持っていた男ごと振り周りの男達を倒す。
「これが鉄パイプの使い方だよ」
相手の指を狙い叩きつける。
「ギャーーーー!!」
悲鳴と共に地面に転がるがまーさんは足で動きを止めると頭めがけて振り下ろす。
男が気絶したので頭スレスレのところでピタリと止めた。
「次の武器あるんだろ?」
鉄パイプを振りながら嬉しそうに尋ねる。
「佐藤、こうなればアレしかない!!」
佐藤は全員に日本刀を投げつけた。
「これが最後だ!!」
「使いこなせるのか?」
「バカにするなよ!! 行くぞ!!」
まーさんはもう一本鉄パイプを拾うと日本刀を持った男達と斬り合う。
鉄パイプで刀を受けると同時に喉を突く、更に相手が突いてくるのを避けるとそのまま地面に刀を叩きつけ蹴りを喰らわせる。
更に地面を滑る様に相手の隙間を通り抜け様に2人倒す。
「おい、こいつマジでヤバイぞ!?」
「慌てるな!!」
「いや、無理だって!!」
「俺は死神だぞ!!」
「いや、無理だ、逃げろ!!」
男達は逃げ出し糸井と佐藤だけが残る。
「まぁ2人いればいいさ。 覚悟しろよ」
「これを使うしかない!!」
佐藤は糸井になにかを投げる。
「だがよ……いや、仕方のない事だ!! 愛するお姫様を助ける為には獣を倒さなくてはいけない!!」
拳銃を構えながら叫ぶ。
完全に頭がイッた様だった。
「へぇ、おもしれぇじゃねぇか。 俺に当たるのか?」
まぁさんはヘラヘラしながらも近づく。
震えながらも引き金を引くがまーさんから50センチ以上離れたところを弾が飛んでいく。
「惜しいな、銃は頭を狙わずに体を狙ったほうがいいぞ?」
「うるさいぃぃぃ!!」
パン、パン、パンと三発撃つが全て外れる。
「もう弾ないだろ?」
「あ、後1発あるさ」
まーさんに狙いをつけ歩いてくるのを待つがここで糸井はユウナが目に入った。
彼女は眠たそうに目を擦っている。
ターゲットをまーさんからユウナに変えると引き金を引く。
パン!!
弾はまっすぐユウナに向かって飛んでいくがユウナは気付く様子もない。
「勝った!!」
つい叫ぶが次の瞬間影が動きユウナの姿が見えなくなる。
「クソヤロー」
まーさんの腹に当たって様で血が出ている。
まーさんはそのまま地面を蹴ると糸井を殴り飛ばし逃げようとした佐藤を押し倒すと足を折った。
更に糸井の元に戻ると顔の形が変わるくらいまで殴り続ける。
ユウナが気がついたときまーさんのお腹から血が出ているのが見えた。
その後凄まじい速さで相手を倒すとそのまま殴り続けている。
慌てて駆け寄り後ろから抱きしめる。
「もうやめて!! 早く病院行かないと死んじゃう!!」
しかしまーさんは止まらない。
「やめて……お願い……」
ユウナは涙が流れながらもお願いするしか無かった。
彼がキレた状態では絶対に負けてしまう。
「お願い……お願い……」
頼み続けるとまーさんの動きが止まり振り返る。
「ユウナ怪我ないか?」
「うん……うん……」
ユウナは泣きながら答える。
「コイツら処理しないとな」
「その前に病院行こ……血が止まってないよ……」
「あぁ、わかったよ……鍵閉めて病院行こう」
まーさんはユウナに肩を借りその場を後にした。
気になって後をつけていた智輝はようやく2人を見つけたがまーさんはお腹から血を流しユウナさんは泣いている様に見え見とれてしまう。
「大丈夫か!?」
「あぁ、問題ないよ。 ただの喧嘩だ」
「いや、喧嘩でそんな血が……斬られたのか?」
「いや、撃たれた」
「日本でかよ!! いやいや!!」
「いいからお前どっかいけよ、ウルセェよ」
「救急車呼ぼうぜ!!」
「そんなこと出来るかよ。 知り合いの病院に行くから気にするな。 お前マジで帰れ」
「しかしだな……」
「私が運ぶから大丈夫」
ユウナにも言われ智輝は返す言葉がなかった。
「頼みがあるんだがいいか?」
そう言われて頷くとまーさんとユウナさんは話すだけ話して迎えの車が来ると乗って行った。
「つーさんって誰だよ……」
渡された番号にとりあえず電話をかける。
『はい、こちらイチャラブ中のつーさんです』
「あの、永田 真連に頼まれまして……後処理をお願いしたいらしいです。 あの資材置き場です……」
『なんで俺に頼むんだよ、イチャラブ中の俺にさぁ、自分でやればいいのにぃ』
「あの、撃たれまして……」
『マジで!? 死んだ!? ねぇ死んだ?』
なぜか嬉しそうに聞いてくる。
「いえ、お腹を撃たれたのでまだ死んではいないですけど……」
『なんだよ、つまんねぇ。 とりあえずお前待ってろ、今から行くからよ』
それだけ言うと電話を切られる。
「待ってないといけないのか……」
智輝は家にも電話をかけた。
しばらく待っているとつーさんと思わしき人物が女の子を連れて歩いてきた。
ペアルックのハートのシャツを着た2人は完全に寝ようとしていたのだろう。
「お前が電話くれたやつか?」
「はい、そうです」
なぜか緊張してしまった。
「じゃあ行くか。 カレンには少し刺激が強いかもな」
「大丈夫、つーくんがいればカレン怖くないもん」
「かわいいなぁ」
つーさんはメロメロになりながらも歩いていき資材置き場に着くと鍵を開ける。
「ここって誰の持ち物なんですか?」
「ここは俺のじいさんがやってる会社の資材置き場を俺とまーさんで半分ずつ買い取ったんだよ」
「はぁ……」
「まぁ囲いがあるから外から見えない、周りの家も全部まーさんのホテル関係の人だから隠してくれるって寸法さ」
自慢げに言うがここは無法地帯だと思うとゾッとした。
「あらら、派手にやったねぇ」
つーさんは倒れている人たちを見回りながら言うがどこか楽しげだった。
「あの、後処理って何するんですか?」
「あれだよ、ホラ!! ここで起きたことを黙ってるか死ぬか選べって感じ? よくあるだろ映画とかでさ」
「本当に殺したりはしないですよね!?」
「さぁ?」
つーさんはそう言うが智輝はそんなことは無いと思った。
「誰がリーダーなんだよ……おっ!! コイツだな」
それは糸井だった。
イケメンだったはずの顔はボコボコになっており智輝ですら一瞬誰か分からなかった。
「起きろー」
つーさんはビンタしながら呼びかけている。
「起きろー」
その横でカレンと呼ばれている女の子も呼びかける。
「死んだのか? あいつキレたな……これはマズイかもなぁ」
「マズイかもなぁ」
「死んでるんですか!? 彼は糸井って大手の会社の社長の息子ですよ?」
「糸井? 糸井……あぁ、糸井商事か!! じゃあまぁどっちでもいいかなぁ?」
「良くないですよ!! 彼はこの街で3番目に金持ちの家の人ですよ!! 警察だってすぐに動きますよ!!」
「あー、そうか?」
つーさんはマイペースなのか何も考えてないのか良くわからなかった。
「とりあえずコイツは確保して他は脅しとくか」
つーさんは1人ずつ周り耳元で何か囁くとみんな怯える。
「コイツだけはダメだから運ぶか」
そういうと電話をかける。
しばらく待っていると一台の霊柩車が現れる。
糸井を棺に入れるとそのまま霊柩車に乗せる。
「お前も乗れよ」
「乗れよー」
言われるがままに乗せられると車は動き出す。
資材置き場の扉を施錠するとすぐに車は走り始める。
「どこに行くんですか!?」
「まず、君を送っていくよ。 これはユウナからの指示だからね。 その後は今日のこと全部忘れろ。 わかったかい? 木下 智輝君」
その瞬間ゾッとした、なぜなら名前を教えてはいないからだった。
「調べればすぐにわかるんだよ。 葬儀場って意外とみんな利用するからさ。 記帳したりするだろ?」
「えぇ……」
「大丈夫、試しただけだからさ!! 何にもしないさ」
つーさんは笑っているがとんでもない人達に絡んでしまったと後悔した。
家の場所を教えてないのに家に着いたので智輝は車を降りると頭を下げる。
車はゆっくりと走り去り智輝は家の中に入った。
つーさんは人里離れた場所までくると糸井を入れた棺をおろし山小屋の中へ運ぶ。
「カレンちゃんは少し車で待っててくれるかな?」
「はーい」
つーさんは小屋の中に入ると鍵をかける。
棺の中からは叩く音が聞こえてきた。
「出してくれ!! 俺が何をしたというんだ!!」
「お前は人を撃ち怪我をさせた」
「あいつが悪いんだ!! 俺はあいつからユウナを救おうとしているだけだ!!」
「それで撃ったのか?」
「そうだ!! ユウナは偽物だった!!」
「そうか……」
つーさんはタバコに火を点けると煙を吐き出す。
「俺をこんなところに閉じ込めてタダじゃ済まんぞ!!」
「確か街で3番目だっけ? まぁ1番があいつの家として2番が家だろ……そしたら次はあいつのホテルで次がお前の親父の会社……まぁ既に株式の半分は買い占めたからすでに俺の会社だがな」
「何を言っている!? そんなはずはない!!」
「事実だからしょうがないさ。 それに明日従業員はほとんど辞める」
「お前に何ができる!? あいつに何ができる!?」
「今言ったことだよ。 俺のダチ傷つけるやつは俺が許さん!!」
棺に足を乗せながら語尾を強める。
「じゃあいいさ!! 俺をここから出してくれ!! 顔が痛いから病院に行くんだよ!!」
「俺には判断できない。 しばらくここにいろよ。 俺だってお前を殴ってやりたいんだよ」
足で棺を叩き音を立てる。
「俺のオヤジだってな、お前たちを倒すくらいの力はまだある」
「もうないんだよ……夜な、親父さんの車が人をハネた。 更に家には強盗が入り会社の株が買われた。 もう何も出来ないさ」
つーさんは糸井が諦めるのを待っている。
「家は負けない!!」
「もう負けたんだよ。 素直に認めろ」
つーさんはめんどくさそうに答えると立ち上がる。
「そろそろお別れでいいか?」
それだけ言い残すとその場を去る。
車に戻るとカレンが抱きついた。
「待ってたよ。 いい子?」
「いい子だよ。 ありがと」
おでこにキスするとカレンは喜ぶ。
「さぁ車を出してくれ」
車は出発しつーさんはちらりと小屋を見たがすぐに視線を戻した。
「あとはまーさん次第だ」
まーさんは病院に着くとすぐに手術が行われた。
弾は体の中に残っていて摘出しすぐに縫われていく。
輸血の必要もあり危険な状態が続いたが夜中には手術も終わり病室に移される。
ユウナはずっと側についていることしか出来なかった。
自分がちゃんと見ていたら真連が当たる必要がなかったのだと思うと無性に腹が立ってきたが今更どうしようもない。
涙を拭うと窓の側に行きカーテンを開けると朝日が出始めていた。
「おい、どれぐらい寝てた?」
ユウナが振り返ると真連は目を覚ましていた。
「起きたの!?」
「あぁ……ここを出るから手伝ってくれ」
真連は座ろうとするがまだ麻酔が効いてるのか上手く動けない様だった。
「まだ無理よ……」
ユウナに言われると大人しくする。
「あいつ生きてるかな?」
「どうかしらね……」
「電話を取ってくれ」
ユウナは真連の携帯を取ると渡す。
電話をかけるが相手は出ない。
「つーさん寝たかな? てか2日とか経ってないよな!?」
「えぇ、一晩だけよ……」
「そっか、それなら良いんだがな」
ユウナは何が言いたいのか理解出来なかった。
昼過ぎにつーさんが1人で病室に来た。
「起きたか? しぶとい奴だなぁ」
「まだ死んでたまるか。 それに腹に当たっただけだし」
「そうかぁ、頭に当たれば真面目くんになれたかもしれないのにな」
つーさんは笑いながら言っている。
「お前なぁ……それよりも奴は?」
「えっと、棺に入れてどっかの小屋に置いてきた」
「なるほど、じゃあ後は会社だけか?」
「それもほぼ終わったかなぁ。 今回は俺が買ったから俺の利益にするからな」
「勝手にしてくれ」
「いやぁ、なかなか業績も良いしさ。 従業員が9割辞表出したからなぁ」
「そこまでか!?」
「そうなんだよ、今までは3割くらいが限界だっただろ? 余程嫌われてる社長だったんだな」
ユウナは呆れて何も言わない。
「それで、奴の家族は?」
「なんか別荘があってそっちに移るみたいだけどさぁ、息子を探すために警察に行ったみたいだぞ」
「受理されたのか?」
「いやぁ、どうかなぁ? 受理はされても見つからないんじゃないか?」
「まぁそうだな」
「あのね、今は監視カメラがいっぱいあるの、バレるわよ?」
ユウナがここで口を挟む。
「それがさぁ、昨日大規模な電波障害が起きたみたいでさ、監視カメラがほとんど機能してないんだよねぇ」
つーさんはニヤついている。
「だからなんの証拠も無いんだよなぁ。 周りの家の人が何か音を聞いてれば別だけどな」
真連が続ける。
「それは無いわね。 この世の闇を見た気がするわ」
ユウナは席を立つと病室から出て行った。
「ユウナを守ろうとしたんだって!? 姉萌えか!?」
「あのなぁ……普通守るだろ?」
「え!? 普通守るって発想があったの!? 意外……」
つーさんは真顔で答える。
「おいっ!!」
まーさんも突っ込む。
続きはどうなるの!?




