第2話 バイト
バイトを始めたのが夏休み。
やる気は無かったけどつーさんに誘われてバイトの面接を受けた。
まさか二人とも合格するとはおもわなかった。
「今日からよろしくね」
お姉さんがステキな笑顔で出迎えてくれた。
「よろしく。 俺は吉田です」
つーさんの名字を始めて知った。
「僕は上杉 祐樹です。 よろしくお願いします」
「私は木元です。 まぁゆっくり覚えてくれればいいよ」
「はい!」
つーさんは妙にテンションが高い。
「あの、テンション高いですね」
「当たり前だろ、仕事なんだから真面目にやらないとな、接客は元気、愛想が必要なんですよね」
「えぇ……真面目さも必要だけれど……」
木元さんはつーさんが真面目に見えなさそうで付け加えたようだ。
「大丈夫です! 真面目に頑張ります! なっ、祐樹!」
「あ、はい。 頑張ります」
その後研修を丁寧に教えてもらい数日で2人ともレジが打てるようになった。
「いやぁ、莉子さんのおかげですよ!」
木元さんは莉子と言う名前で大学生らしい。
「2人とも覚えがいいからね。 つー君は意外と真面目だしね」
「いえいえ」
つーさんは明らかに照れている。
そこへまーさんがやってきた。
「真面目に働いてるか? タバコくれ、タバコ」
「あの、未成年には売ったらダメなんですよ」
僕は前に出て答える。
つーさんはまーさんのタバコの銘柄がわかるようで手を伸ばしているのを止めた。
「そうだ、祐樹言ってやれ。 お前にはタバコは売らねぇ、莉子さんの為にも」
「はぁ?」
つーさんの言葉にまーさんは呆れた顔をした。
「なんだよ、文句でもあるのか!? 」
「いや、無い。 まぁ2人とも頑張って下さいね」
まーさんは最後だけ敬語で言うとそのまま店を出て行った。
「あの、まーさんって怒って無いですよね?」
「大丈夫だろ? 俺は平気だもん」
「えっ!? 僕は!?」
「えー、しらねぇ」
「あの、さっきの人知り合いなの?」
莉子さんが聞いてきた。
「えぇ、僕の先輩です」
「へー、彼女いるのかな?」
「莉子さん、彼はダメだ。 あいつはゴミだ。 いや、人間のクズだ。 あいつと付き合うならハエと付き合った方がいい」
その時店の入り口が開く。
「あいつは女性を愛することなんてないんだ。 暴力と権力だけが友達なんだ」
「あの……やめたほうが……」
祐樹は止めた。
「止めるな、これは莉子さんの為を思って言っているんだ。 彼だけはやめておくんだ。
むしろ俺と付き合ったほうがいいぞ! 世界一かわいい妹もいるからさ」
「あ、うん……」
莉子さんも気がついた様だった。
「へぇ、俺よりハエのほうがいいのか? 暴力と権力だけが友達なんだ……」
つーさんが後ろを向くとまーさんがニコニコしながら立っていた。
「あ、いや……訳があるんだ。 俺は彼女を守ろうと……」
「そうかぁ。 彼女を守ろうとしてかぁ……じゃあその守るべき相手が消えたら後に残るのは何かな?」
笑顔のまま聞いている。
祐樹はとっさに莉子さんの手を掴むと事務所の中に逃げ込む。
「つー君大丈夫なの!?」
「大丈夫です、友達のはずですから……」
不安になり外を覗こうとしたが扉が開かなかった。
「あれ、開かないです」
「え? ホントだ」
莉子さんも試してみたが開かなかった。
しばらくするとつーさんが扉を開けた。
「いやぁ、やつも分かってくれたよ」
「何を言ったんですか?」
「何も言わないさ。 それで通じ会えるのがダチだろ」
つーさんは親指を立てて答える。
そこへまーさんが戻ってきた。
「お釣りもらうの忘れた」
「はい、すぐに!!」
祐樹が何か話そうとした時つーさんに口を塞がれた。
「何も言うな、ダチだろ」
祐樹は頷くしかなかった。
つづく?