第10話 死神と堕天使
祐樹は困ったことになっていた。
今はテスト期間中である。
駅を降り自販機でジュースを買っていると周りを不良に絡まれていた。
その数10人。
「えっと……どんな御用でしょうか?」
「金出せよ。 俺たち金がないんだよ」
「えっと……もうないんですけれど」
嘘である、最後のバイト代5万円がさいふにはいっていた。
コンビニは潰れてしまった。
どうやら前回の水没で店にダメージがあったところに店長が店の売り上げを持ち逃げしたのだった。
「嘘だろ? 今財布の中が見えた」
男は嬉しそうに言う。
「勘弁してください」
祐樹はなぜか恐怖を感じなかった。
しかし解決するだけの腕力は当然ない。
「俺たちは不良なんだよ。 勘弁するわけないだろ?」
ますます嬉しそうに言う。
「そうか……不良は勘弁しなくてもいいのか……俺も不良になろうかな?」
聞き覚えの声がする。
祐樹は囲まれている背後にまーさんとユウナさんが立っているのが見えた。
「誰だお前? 彼女連れとはいい度胸だな、女と金を置いていけ」
「あらあら、彼女だって。 どーする? まーくん」
ユウナさんはまんざらでもなさそうに答える。
「そうか、こいつは置いてってもいいが金は俺がもらう。 まずそいつからたかるんだろ? 早くしろよ」
まーさんはニヤニヤしながら言う。
祐樹のバイト代が入ったのはまーさんも知っている。
「ダメでしょ。 友達は大事にしないと」
ユウナさんはまーさんを叱る。
「かわいい……」
「俺も叱られたい……」
などと言葉が漏れる。
「またかよ……」
まーさんはあきれるように言う。
「私たちの友達をいじめないでくれますか?」
ユウナさんは少し上目遣いで聞くと男たちはうなずき祐樹に道を空ける。
しかし1人だけどかない男がいた。
「女、俺は女に命令されるのが嫌いなんだよ。 こいつからはタカる。 そしてお前ももらう」
「おいおい、やめとけ」
まーさんが止めに入るがそれより早くユウナさんが前に出る。
男が宙を舞い受け身も取れずに地面に背中から落ちた。
全員の動きが止まった。
「おい……冗談だろ?」
相手の男の一人が声を震わせながら言う。
それに続くように次々に言葉を発する。
「そうだ、女だから手加減したんだろ!?」
「なるほどな。 そうやって彼女に触れたんだな。 やるな」
しかし本人の意識は無くみんなの声も徐々に小さくなる。
そこで一人が気が付いた。
「こいつ思い出した。 死神と呼ばれてたやつだ!!」
「へ~。 まーくんそんな風に呼ばれていたのね」
ユウナさんは微笑みながら言うがまーさんは嫌そうな顔をしていた。
「どういうことだ!? なぜこの街にいるんだ!?」
みんな知っているようで下がり始める。
「付き合う女も最強なんだな……てっきり相棒は男だと思っていたのだが」
「彼女が堕天使と呼ばれた人なのか……」
「普段は優しいがスイッチが入ると凶悪になると言われている……」
祐樹はその時なぜかつーさんの顔が浮かんだ。
「おい、お前ら話しすぎだ。 もう会話しなくていい……会話できなくしてやるよ」
まーさんは素早く動くと突きを繰り出したが祐樹が見た今までの殴りとは違い武術の突きのようであった。
ほとんど動きも見えないまま相手の鼻を砕くと拳をなぜか緩める。
次の瞬間相手の口元に手を開いたまま殴る。
掌底というやつなのだろうか、相手の口に当たるとそのまま倒れた。
さらにいつの間にか前に出ていて回し蹴りで一人倒すと手刀で相手の顔を狙うが相手は避けた。
しかし手刀が当たっていないにも関わらず顔の皮膚が切れうっすらと血が出てきた。
「これがまーさんの本気!?」
祐樹はなぜか見とれていた。
戦っているはずなのになぜか踊りを見せられているような感覚に陥った。
相手の攻撃を避けることなく手で払いのけ前蹴り。
相手がナイフをポケットから出すと構えるが気にする様子もなく間合いを詰める。
ナイフを首元に突き付けられても気にする様子はなく掌底であごを打ち抜く。
相手は膝から崩れ落ちた。
残りの仲間は逃げていく。
「あの……もう敵はいません」
祐樹が近づこうとするとまーさんと祐樹の間にユウナさんが入りまーさんの攻撃を受け流すとそのまま倒す。
「離れていなさい。 多分もう動けないと思うけれど……」
祐樹は言われた通り離れた。
距離にして50メートル、これなら安全だと思った。
しばらくするとユウナさんはまーさんから降りる。
そして祐樹に来るように手招きした。
祐樹が近づくとまーさんは正気を取り戻していた。
「謝りなさい」
「わりぃ、ついキレちまって」
「いえ……」
「しかしあんなに離れなくてもよくないか?」
「それは……」
「あなたが怖がらせたんでしょ?」
「すまん……」
「いえ、気にしないでください」
「お詫びにあそこでなにかおごるよ」
そこにあるのは某チェーン店のハンバー屋さんだった。
三人で中に入るとまーさんがジュースをおごってくれた。
つづく?




