零話後編 ある満月の夜のこと
森林に少年はいた。
彼の周囲は背の高い木々、腰までの高さの茂みに囲まれている。
人工物が一切ない自然の中である。
そのような場所で、少年は剣を構えて立っていた。
彼の構えは、自分の正面で剣を両手で持ち、刃を前方に向ける姿勢だ。
正面からの攻撃に強い特徴を持つ剣の構えである。
広く知られており、多くの者がこの構えから剣を学ぶことになる。
それ故に、一般的、基本的な剣の構えだと言われている。
少年は誰から習ったわけでもなく、この構えをとっていた。
また、これが彼にとっての戦闘態勢でもある。
さらに、少年は構えをとりながら顔を左右に動かしていた。
今、彼は姿が見えない何者かを警戒している最中であった。
この時、彼の表情には一切の笑みがなく、真剣そのものである。
「……! 」
突如、その表情が僅かに崩れた。
ほんの一瞬だけ驚愕し、見る者を威圧する険しい表情となったのである。
その険しい表情のまま、彼は身を翻し、後方へ体を向ける。
彼が反応したのは、後方の茂みから聞こえてきた物音であった。
その物音は茂みが揺れ動き、葉と葉が互いに擦れ合う音だ。
「キシャーッ! 」
それから間もなく、甲高い雄たけびと共に茂みの中から魔物が飛び出してきた。
ネズミを大きくした姿の魔物、ジャイアントラットである。
茂みの物音は、この魔物が現れる前触れを意味しており――
「来た! 」
少年が警戒し、待ち望んでいた魔物が現れる合図でもあった。
「よし、来い! 」
真正面から突進する魔物に対し、剣を上方へ振り上げる。
この後、一歩前に踏み出しながら、剣を縦に振り下ろした。
「キキッ!? 」
剣は魔物の頭部に命中する。
魔物は短い悲鳴を上げ、つぶれたように顔が歪む。
そして、攻撃を受けた頭部から血が滲み出す。
少年は一撃で、魔物に致命傷と与えることができた。
しかし、彼の力では突進の勢いまでは殺すことは出来ない。
「うっ!? 」
少年は後方に弾き飛ばされ、地面に仰向けとなって転んでしまう。
受けた突進と転んだ時のダメージが痛みとなって、少年を苦しめるが――
「うおおっ! 」
それを我慢して立ち上がると、弱った魔物の首に剣を突き刺した。
剣の刃は喉をも貫いており、魔物は悲鳴を上げることなく絶命した。
少年は剣を引き抜き、よろよろと体のバランスを崩しつつも姿勢を保つ。
「……出来た。魔物共を十体も倒せた。一人でも依頼は出来る! 」
少年は横たわる魔物の死体を見下ろしながら呟いた。
彼が受けた依頼は魔物の討伐であり、標的はジャイアントラット。
目標討伐数は十体であり、今が依頼を終えた瞬間であった。
受けたダメージの痛みをこらえながら、少年は上方へ顔を向ける。
木の枝から生える葉の緑が広がっているが、隙間に赤い景色が見えた。
その景色は空の色であり、今の時間が夕方であることを意味している。
「もう夕方か……」
少年はため息交じりに、そう呟いた。
夕方が過ぎれば夜になる。
(夜になる前に、早くここから出ないと)
少年は、特別夜目が効くわけでもないただの人間である。
故に、のんびりしてはいられない。
刃の血を払うと、少年は剣を鞘に収めた。
そして、少年は森林を出るため歩き始める。
「……!? 」
そのはずであったのだが、彼の足は一歩動いたところで停止した。
そこから動くことなく、少年は徐々に青くなってゆく顔を後ろへ向ける。
すると、彼の顔は顔面蒼白となった。
自分が立つ後方に得体の知れないものがいたからだ。
その外見を端的に表現するのであれば、巨大な狼である。
少年の身長を二回りを上回る巨体で、灰色の毛、鋭い牙、尖った耳、長い足から伸びる鋭利な爪といった特徴を持っていた。
しかし、この狼の特徴は上半身だけの話である。
下半身は猿であった。
毛は茶色で、短い足の先には爪がなく尻尾は細く長いのである。
「こ、こんな魔物がいたのか」
依頼の最中、少年は遭遇したことはない。
そもそも、今まで見たことも聞いたことすらなかった。
つまり、彼にとって未知の存在であった。
それでも、魔物の一種でろうことは、経験の浅い彼でも想像することはできた。
「うっ……!? 」
少年は、寒気を感じて身震いをした。
魔物は二本の後ろ足で、ゆっくりと歩み寄ってくる。
吠えもしなければ走ってくるわけでもない。
人に危害を加える存在である魔物にしては異質である。
その異質さが少年にとって不気味に思えたのだ。
「どうする……」
少年は振り向いた姿勢のまま立ち尽くす。
依然として青い顔のまま、ゆっくりと近づいてくる魔物を見つめる。
そんな中、彼の震える右手は、腰の剣へと伸ばされつつあった。
奇妙な生物は人に危害を加える存在であろう。
ならば、少年には二つの選択肢があった。
一つは、剣と取って戦うこと。
もう一つは逃げることである。
自分へ危害を加える存在を排除するか、回避するかのどちらかだ。
(俺は一人でも、ジャイアントラットを十体も倒せた。それに、ここは強い魔物がいる場所じゃない……はず)
二つの選択肢のうち、少年は戦う方を選ぼうとしていた。
一人で依頼を終わらせた自身と生息する魔物の強さからの憶測。
そして、少年の記憶に刻まれた自分を認めなかった男の顔がそうさせていた。
やがて、右手の震えは止まり、ついに剣の柄を掴む。
「うああああ!! 」
意を決した。
少年はそのつもりだった。
しかし、少年は魔物から背を向けて走り出していた。
勢いよく振られている右手に剣は握られていなかった。
走る少年は振り向きもしない。
その顔は、あの男が自分の前から消え去る際、地面に向けていた時と同じであった。
少年は悔しかった。
それ以上に怖かった。
だからといって、戦う選択を捨てたわけではなかった。
何故、意を決してまで選んだ選択肢を捨てれたのか。
この時、少年はその理由を考える暇さえなければ、理解することもできなかっただろう。
日が沈み、空に月が昇った頃。
この日は満月であり、ほんのわずか地上は明るく照らされている。
その光を受け、森林の上部に広がる緑は暗く輝いてはいるが、その下の空間は暗闇に包まれている。
森林は昼とは違った形相ではあるが内に秘める不気味さは変わってはいなかった。
少年の姿は、未だにこの中にあった。
彼は、決して森林から出ることをやめたわけではない。
今も木々から生える枝や茂みをかき分けながら進んでいる。
それでも、夜になるまでの時間をかけても、森林から出ることが出来なかった。
逃げる最中に通ってきた道を進まなかったせいか、少年は森林の中で迷っていた。
依然として森林から出たい一心で、彼は歩き続けている。
しかし、夜になった今、月の光に照らされる明るい場所へ向かうだけで精一杯であった。
そして、魔物と戦い必死に逃げていた彼は、体力の限界であった。
「もう……限界だ…」
少年の口から、弱々しい声が漏れる。
その時、彼はある場所に辿りついていた。
そこは周囲を木々に囲まれた広い空間であった。
障害物といえば、ちょうど腰かける高さの切株が一本あるだけだ。
少年は引き寄せられるかのように切株へ向かう。
すると、切株を背にして座り込んだ。
今、体が休息を欲している疲労が溜まった状態である。
彼にとって、ここが安息の地に思えたのだ。
「あ……」
座り込む少年の口から声が漏れた。
何の感情も込められていない声であった。
光の無い虚ろな目な彼の目に映るのは、上半身は狼で下半身は猿の魔物だ。
それが木々の間の暗闇から現れたのだ。
魔物は、再び少年と遭遇したにも関わらず、何の反応も示さない。
ただ、ゆっくり二本の猿の足で歩いて、少年の元へ向かうだけである。
(もう駄目か……)
先ほどの口から漏れた声は心の声であった。
今の少年には逃げる体力も戦う力もなかった。
そのため、彼は諦めようとした。
「いや……まだか」
しかし、まだ諦めなかった。
残された力を使って出来ることを思いついたからだ。
それは、逃げることでもなければ戦うことでもない。
有り得ないと彼が無意識に除外していた第三の選択肢を選んだのだ。
「た、助けてええええ!! 」
助けを呼ぶことである。
少年は力いっぱい息を吸い込んだ後、大声で叫んだ。
(都合よく、近くに誰かがいるなんて……)
そう思いつつも、広く遠くに聞こえるように叫んだ。
結果、彼の声は森林全体とまではいかないが広く届いたことだろう。
叫んだ後、少年は荒い息を吐きながら、正面を見据える。
魔物は、彼の目の前で立っていた。
少年の叫びに反応した様子はなく、座り込む彼を見下ろしていた。
やがて、魔物が片腕を振り上げた。
その光景を目にした少年は、逃げることもなく両の瞼を閉じた。
ここで、ようやく少年は諦めたのだった。
「グギャア! 」
真っ暗闇の中、少年は獣の鳴き声を聞いた。
前から聞こえてきたことから、それが奇妙な生物のものであろう。
「え……? 」
少年は、妙であると思った。
鳴き声が勇ましい雄たけびではなく、悲鳴に聞こえたからだ。
魔物に何かしらの事が起こった。
それを確認するため、少年はゆっくりと目を開けた。
「え!? 」
すると、少年は驚愕の声を上げる。
その目に映るのは斧である。
片方だけに刃のある厚い鉄に、木の棒となる柄を刺して作られたような形状で、片手で扱えるくらい大きさの普遍的の斧だ。
それが魔物の頭に突き刺さっていた。
「グウッ!! オオオオッ! 」
少年の目の前で、魔物は悲鳴を上げ続ける。
激しく振り回される上半身は、二本の後ろ足がしっかりと支えていた。
魔物はまだ生きていた。
どうやら、頭の斧は浅く刺さっているようである。
少年は、魔物がもがく様を呆然と見つめていた。
(何が起こって……)
彼は今の状況を把握しきれていなかった。
何故、斧が刺さっているのか、斧はどこからやってきたのか。
それらの疑問で少年の思考は支配されているからだ。
少年は動くことすらせず、魔物を呆然と見上げ続ける。
「あ……」
そんな中、彼の口から声が漏れた。
魔物の真横から何かが飛んできて、それに反応したからだ。
少年は、水平に飛んできたそれを大きな布であると思っていた。
ヒラヒラと揺れながら、突風に運ばれたかのような速度で飛んできたからである。
しかし、すぐにそれが思い込みであったことに気づかされることになる。
「グギャ!? 」
短い悲鳴と共に、魔物は大きな布に突き飛ばされた。
まるで、強い打撃を受けたような飛ばされ方であった。
勢いよく飛ばされた魔物は土煙を上げながら地面を転がり、やがて横たわる。
少年は魔物から視線を外すと、空を見上げる。
彼の視線の先には、回転しながら宙を舞う斧があった。
「あ……」
再び少年の口から声が漏れた。
大きな布は地面に落下すると、人の形になったのだ。
人の形になったそれは、右手となる部分を掲げて落下してきた斧をつかみ取る。
ここで、少年は大きな布が外套であることに気付いた。
そして、魔物を突き飛ばしつつ、彼の目の前に現れたのは、外套を身に纏う何者かであった。
正体は誰であるか分からない。
それでも、少年はその人物が町で出会った外套の者と同一人物であると、直観的に理解した。
(なんで……)
外套の者を見て、少年は真っ先にそう思った。
今、彼は驚愕や困惑といった様々な感情を抱いている。
その中でも、申し訳ないという気持ちが強く、目には涙が滲んでいた。
外套の者は、人気が一切ない夜の森林の中に現れたのだ。
偶然とは考えられないことである。
(ちょっと話しただけの俺なんかのために……)
外套の者は自分を心配して探してくれていた。
実際には違う理由かもしれない。
それでも、少年はそう思わずにはいられなかった。
何故なら、死ぬ寸前であった自分を救ってくれたからだ。
外套の者がどう思うおうが少年にとっては命の恩人であった。
そんな命の恩人である外套の者に自分の気持ちを伝えたい。
そう思いつつも、少年は口を閉ざす。
外套の者は目の前にいながら、彼を見ていなかった。
少年に対して、体の向きが真横であり、魔物を見ているようであった。
まだ、戦いは終わっていない。
そのことに、少年が気づいた時――
「ガアアッ!! 」
間近で獣の咆哮を耳にする。
魔物が外套の者の前で、片方の前足を振りかざしていた。
少年の視界の外で、外套の者の元へ向かっていたようだ。
この時、少年が持つ魔物の印象は変わっていた。
外套の者が現れるまで、驚くほど静かで不気味であった。
しかし、今は怒りに満ちた咆哮を上げ、まるで感情をむき出しにしているようである。
場違いな考えだが少年は、ようやく魔物らしくなったと思っていた。
そして、一秒の間もなく魔物の前足が薙ぎ払われる。
「あ、ああっ!! 」
この一瞬の出来事に、少年は悲鳴を上げた。
薙ぎ払われた魔物が外套を弾き飛ばしたのだ。
強い力を受け、外套は空に向かって大きく飛ばされていた。
少年は外套の者がやられてしまったのだと思った。
「えっ!? 違う! 」
しかし、宙に舞う外套がヒラヒラと地面に落下してゆく様を見て、錯覚であったことに気付く。
「グ……グガ…ア…」
片方の前足を振り切った姿勢のまま、魔物が仰向けに倒れだした。
ゆっくりと魔物が倒れる中、少年はその胸にできた一筋の赤い線を目撃する。
ほどなく、魔物は地面に倒れ、今まで以上に静かになった。
魔物は倒された。
その事実を目撃した後、自然と少年の目は、死体となった魔物の前に立つ人物へと向けられる。
その人物は、斧を手にした右腕を振り切った姿勢を保っていた。
姿勢から、左下から右上へと斜めに斧を振ったのだと推測できる。
状況を見るに、その人物によって魔物は倒されたと判断できた。
その中で纏っていた外套が取り除かれたことで、少年は外套の者の正体を目撃する。
森林を覆う葉の隙間から差す満月の光に照らされ、はっきりと姿を見ることができた。
「あ……」
その者の姿を見て、少年は咄嗟に思いつく言葉が出てこなかった。
外套の者の正体は、水色の髪と瞳を持ち、整った顔立ちの美しい女性であった。
(綺麗な……いや、違う。なんて言えば……)
少年は、目の前の女性を美しいと思った。
しかし、自分で思っておきながら、その表現に納得できなかった。
今まで見てきたものの中で、一番美しいと思ったのだ。
美しいという言葉よりも、もっと上位の言葉はないのか。
思わずそう考えてしまうほどであったのだから。
「立てるか? 」
「……あ、はい。大丈夫です」
少年は慌てて立ち上がる。
彼にとって女性は声も美しく聞こえ、疲労を忘れるほどであった。
容姿、声、行動、その他全てが美しいと思えた。
だからこそなのだろうか。
何故、女性の服装が男性の着る類であるのかが、少年には不思議で仕方がなかった。
「そうか。あっちに向かって進めば、この森からすぐに出られるだろう」
女性は指を差しながら言った。
「あ、ありがとうございます。俺……あなたの忠告を無視して……それなのに…」
「いや、ちゃんとやっていたと思うぞ」
「え……? 」
「おまえの声が聞こえたから、ここに辿り着くことができたのだ」
女性はそう言って、地面に落ちていた外套を拾い、再び身に纏う。
この時、少年は顔を俯かせていた。
美しい女性を前にして、一瞬でもその姿を見ないのは、とても惜しいことだ。
多くの者が少年に対して思うことだろう。
しかし、今の彼は自分の顔を女性には見られたくはなかった。
それは、泣くことが恥ずかしいことであると思っているからである。
(この人はオレを信じてくれてたんだ……)
少年は女性の言葉に聞き、感極まって涙を流していた。
今の彼の心情は、様々な思いが入り乱れた複雑なものだ。
その中でも、ひと際強い感情は嬉しさであろう。
自分を心配し、信じてくれた人がいたこと。
そのことが、これ以上になく嬉しかったのだ。
しばらくの間、二人の間に静寂が訪れる。
「……どうした? 行かないのか? 」
その静寂を破ったのは女性であった。
既に少年は泣き止んでいたのだが、女性がそのことに気付いているかは定かではなかった。
「……はい。あの……名前を聞かせてもらっても、よろしいですか? 」
女性は少年にとって命の恩人である。
せめて、その人の名前を知りたいと思い、この場に留まっていたのだ。
彼の言葉を聞き、女性の口は開かれる。
しかし、すぐに口は閉ざされ――
「いや、すまない。名前は教えられない」
少年が期待していたものとは違った言葉が返ってきた。
「あと、オレと会ったこと、今見たオレの姿を他の人には言わないでほしい。お願いだ」
「……分かりました」
何故。
その言葉が口に出すのをこらえつつ、少年は頷いた。
聞いても答えてはくれないだろう。
そう思うと同時に、これ以上女性に迷惑はかけたくはなかったからだ。
「本当にありがとうございました。あなたのことを他人には絶対に言いません。あと……さようなら」
少年は頭を下げた後、女性に背を向けて歩き出す。
彼は今日、絶体絶命の状況から生還した。
そんな人物であるにも関わらず、トボトボと足取りは重い。
疲れているのだから仕方のないことではあるが、それ以上に彼の歩く様は弱々しく見えた。
「……また会おう」
女性は去っていく少年を見ていた。
故に、声を掛けずにはいられなかったのだろう。
「その時にはちゃんと名前を言えるはずだ」
そして、女性は少年にそう言った。
今、女性が出来る精一杯であった。
この精一杯の言葉は少年にしっかり届いていた。
その証拠に少年は足を止めて、後ろへと体を向ける。
少年の視界に、女性の姿はなかった。
「俺、あなたのこと忘れませんから! 絶対に忘れませんから!! 」
それでも、少年は叫んだ。
姿は見えなくても、女性の耳に届くようにと大きな声を出した。
女性の声が返ってくることはない。
それは彼も承知の上であったのか叫んだ後、再び歩き出した。
相変わらず、疲労が溜まっているせいかフラフラである。
しかし、一歩足を動かす度に地面をしっかり踏みつけていた。
町を目指して歩く今の彼に姿は、ちっとも弱々しくは見えなかった。
――数日後。
少年の姿は、冒険者ギルドにあった。
そこで彼は複数の仲間と共に依頼を受けた。
仲間は、自分と同じか短い経験の冒険者である。
そして、誰一人欠けることもなければ、怪我をすることなく依頼を達成して帰ってきた。
少年はこれからも、この調子で冒険者を続けていけたらと思った。
実際にも、彼はその日のような充実した冒険者の一日を繰り返していくことになる。
やがて、少年だった彼は、長い年月を経てベテランと呼ばれるまでに成長する。
そんな彼には、何時まで経っても忘れないことがあった。
冒険者になり立ての頃に出会った彼にとっての英雄の日のことである。
その英雄については名前も知らなければ、本当の性別すらも知らない。
自分を心配し、信じ、助けてくれたこと。
それらと、比べるものが見つからないほどの美しい容姿は、いつだって鮮明に思い返すことが出来た。
今日も彼は、名も無き英雄との思い出を胸に冒険者を続けていくのだった。
2019年4月13日 誤字修正
今日も彼は、名も無き英雄との思いでを胸に冒険者を続けていくのだった。 → 今日も彼は、名も無き英雄との思い出を胸に冒険者を続けていくのだった。
2021年1月2日 誤字修正
正面から攻撃に強い特徴を持つ剣の構えである。
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正面からの攻撃に強い特徴を持つ剣の構えである。
少年の身長を二回りを上回る巨体で、灰色の毛、鋭い牙、尖った耳、長い足から伸びる鋭利な爪といった狼を持っていた。
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少年の身長を二回りを上回る巨体で、灰色の毛、鋭い牙、尖った耳、長い足から伸びる鋭利な爪といった特徴を持っていた。
そして、魔物と突き飛ばしつつ、彼の目の前に現れたのは、外套を身に纏う何者かであった。
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そして、魔物を突き飛ばしつつ、彼の目の前に現れたのは、外套を身に纏う何者かであった。
ご報告誠にありがとうございます。