第一章5『久しぶりの会話』
「お前がミューナ……?」
ギルドの入り口から驚き慌ててトンボ返りし、少女の元へ戻る。
「はい、西の国『ゼピュロス』の騎士ミューナです。これが証拠です」
そう言って手に付いている指輪を掲げる。複雑な紋章の細工がしてある指輪だ。
「そうか。と言うかお前何歳だ?」
「12歳」
「12っ…………?!」
小6か中1のぐらいの歳だぞ。その割にはしっかりしている。
「じろじろ見るの止めてください。救世主の依頼なので受けますが、依頼後は消えてください」
「別に…変な意味で見てる訳じゃないけどな。あぁ分かったよ」
「それで依頼内容は何ですか?」
「単刀直入に言う。明日この街に何らかの災いが降りかかる。それを打破したい。それだけだ」
「分かりました。では災いが降りかかる証拠や情報の出所はどこですか?」
「……俺は…その………時間を巻き戻せる魔法が使えるんだ。それで未来ではこの街が破壊された」
「相変わらず戯言がお上手ですね」
「嘘じゃないけど、信じる人は居ないだろうな」
「真意は西の王国『ゼピュロス 』のギルドで分かりますよ。魔法の技の名前と効果を見ることができる石板が有るので」
「東の王国『エウロス』のギルドで計れるんじゃないのか?」
「『エウロス』は魔力量と魔力値だけです。他にも北の王国『ボレアース』は特殊魔法。南の国『ノトス』でも何か計れますが忘れました。行ったことが無いので」
「なんで一ヶ所で計れないんだ。それに王国4つ有るのか?」
「4つの王国は不可侵条約と修好通商条約を結びあっており、通貨や物価も合同です。ステータスを計る石板が各地に散らばっている理由は人の流れを作るためですね。ステータスを知りたくて人が動けば、お金や物が動く。ただの経済上の理由ですよ。それにこの街にも基礎値のステータスを計る石板がギルドに有ります」
「いや、ギルドじゃなくてウインバーグの店じゃないか?」
「基礎値の石板は2つ存在すると言う噂が有るので恐らくそれでしょう。それはそれとして、何をすればいいか分かりませんが報酬が出るなら受けますよ。変な事したら次は首を落としますからね 」
「可愛い顔して怖いこと言うなよ…。まぁ良い、宜しくな。報酬は弾ませて貰う。明日の朝6時にギルド集合で頼む」
「了解しました」
「またな」
報酬は弾ませて貰う。なんて事を言ってしまったが金なんて持ってない。しかし、対脅威戦力を集めなければならないのでやれることはやる。最悪報酬が払えなくて牢獄行きになってもいい。
「さぁ、次は南へ行くか」
ギルドを出て数十分歩き、南門街に到着。
「ところで何でお前俺をつけてるんだ?」
「つけてません。暇なので付いてきました。それにただ意味も無く付いてきたのではありません私以外に被害者がでないようにと。騎士として当然の役割です。次は手加減しませんから」
「手加減してたのか?」
「避けれる程度に短剣を振って、悪い人かどうかを見極めたかったのです。貴方はその剣を抜かずに避けて口で解決しようとしていたので一応許しました」
「許してくれたのか?!」
「いえ、許してません」
「はぁ………言っとくけど、ロリコンじゃねからな」
「それなら、成人女性や熟女に襲い掛からないように見張ります」
「それもしないけど」
「それで南門街には何しに来たのですか」
「号外を出している新聞社に聞き込みと、災いの種類の手掛かりを探しにだ」
「それなら新聞社まで連れていってあげましょう。ここの街に来たとき、そこで新聞を買ったので」
「頼もしいな」
新聞社は南門の目の前に有るらしく、まだ距離が有るので会話が弾んだ。そもそも異世界に来てから長い会話をしたことが無かったから新鮮で楽しい。
「聞きたいんだが、災いの内容は知ってるのか?」
「一応、8つの災いのうち明かされているのは4つ。モンスターの活性化、『魔結界の洞窟』の無力化、『ダークテイマー』による破壊活動、『アラバルスト流星群』です。なぜか他は国家機密みたいで、本来千切られて見る事ができないのは2つなのですが、後の2つは王国自ら千切ったと言う噂です」
「国家機密……怪しすぎるな」
「王国の上層は自分さえ助かれば良いと思う人ばかりで頼れません。ただ、東の国は民を大切にしているらしいです」
国家機密の災いが『始まりの街ゼロイ』に訪れる可能性は薄い。あの街の破壊具合、街の建物は上から攻撃を受けていた。加えて地面に穴が空いていたような気がする。と言うことは『アラバルスト流星群』か?とりあえず南方上空からの星降りと考えてよさそうだ。
「着きました。南門の新聞社です」
「案外早かったな。聞き込み開始だ」