第一章4『騎士を探せど小さき者』
ギルドと街役場はメインストリートに有り、考え事をしていたベンチから数分の距離だ。
最初にギルドを覗いたがやはり誰も居なかった為、街役場へは戦力探しを試みた。
「この街で雇える対モンスターの最大戦力を探しているのだが居ないか?」
「………少し見てみますね。えぇ一っと。一名いらっしゃいます。西の王国騎士の『ミューナ』さんがギルドに居ります。
この街での滞在日数は明日の昼までのようですのでお声かけは早めにどうぞ」
「さっきギルドを見たが誰も居なかったんだが?」
「『ミューナ』さんは今日はずっとギルドに居るとおっしゃっておりましたので、ギルドでお待ちいただければ来ると思います」
「分かった。それと明日、この街に8つの災いの内の一つが降りかかるぞ。何か対策を」
とりあえず、この街が危ないことを伝えたかった。そもそも8つの災いの内容も知らないが、この言い分が一番効果的だろう。
「もしかして、南門の号外を読んだのですか?」
南門の号外?何の話なのか分からないが、『南』。この言葉は破壊された壁の方向。後で南へ散策する時に調べよう。
「あの新聞社は大袈裟に物事を書くので気にしない方が良いですよ。
この前も【危険!モンスターが大量発生】と言う記事を出していたのですが、実際は危険モンスターではなく、平原の近くに住み着いている最弱モンスターの出産期だっただけですから」
覚悟はしていたが予想以上に話相手にしてもらえなさそうなので、とりあえず愛想笑いで役場を離れ再びギルドへと行くことにした。
「ふぅ……やっぱり誰も居ないよな」
相変わらずギルドは閑散としていた。最初に来たときはギルドの入り口から見回しただけなので、奥まで足を進めると壁沿いの椅子に横たわる少女が寝ていた。小さ過ぎて見えなかったみたいだ。
「こいつが騎士か?」
しかし見た目は小学生、中学生ほどだろう。艶々頬にヨダレが垂れており、昼寝をしている。髪もキレが良く普通の人では無い。
騎士かどうか見極めるに武器らしきものを探すが無い所を見ると騎士では無く金持ちの街娘とかであろう。
見極めた後、もう一度顔を見てみると少女は目を覚ましており目が合ってしまった。
「お兄さん誰」
「えぇと……俺は…」
言い切る前の一瞬の間に短剣を胸元から取り出しショウの目先に剣先が出ていた。
「待て待て!」
待てに対しての返信は無く問答無用に短剣が前方向から襲い掛かる。その連撃は止まること無くショウを後ろへ後ろへと追い詰める。
「プロテクトボード」
少女は右手に持つ短剣を振りながら小声で細やかに早口で魔法を唱える。
英語?!防御の板………盾か?そう考察したが何も変化が起きない。少し安心した瞬間、かかとに何かが当たり躓いて仰向けで倒れた。と同時に少女に馬乗りされ短剣が首元を撫でた。
「痛ってぇ」
背負っているテニスラケットが当たり背中が痛い。
足元の倒れた原因を目先だけで確認すると薄い青透明の板が床から生えていた。
魔法はこんな小技ができるのか。と感心しつつ目の前の驚異に目をやる。見下すような、憎悪な目だ。
「変態。最後に言い残すことは?」
「何で変態なんだよ。言いたいこといっぱい有るわ!」
「そう。じゃあね」
颯爽と言い切ると。短剣を改めて強く握りしめ下そうとしている。
「俺は救済者だ…!」
短剣を握る手が少し緩むが気を抜いていないら。
「救済者。証拠は?」
「俺は攻撃力0の雑魚の救済者ショウだ。この街で知らない者は居ないよ」
「あの噂の雑魚……。とりあえずそれは信じます。ではなぜ私をじろじろと見ていたのですか」
「騎士かどうか見極めるために武器を探していた」
「言い分けが上手ですね」
「言い分けじゃないのだがな…」
必死な顔で言うが弁解は無理だろう。実際少女を見ていた事実は変わらない。
「私に用が有るならそれは聞いてあげましょう。それが終わったら直ぐに視界から消えてください」
「………お前に用は無い」
「それなら殺しますね。と言いたいですが救済者を殺してしまえば問題になるので止めておきます。早く消えてください」
馬乗りから解かれ、ギルド出口へと足を進める。
「あぁ、そうさせて貰う。早く騎士を探さないとな」
「………まって、私が騎士」
「は………?」
確かにそこそこの実力は有るが初見殺しに引っ掛かっただけ、それに短剣の攻撃は全て避けれた。しかもこんな小さな可愛らしい子が騎士?無いな。
「だから…私は騎士『ミューナ』」
「………!!」