第四章
久し振りです…
ここから先は暫く昔語りになると思います。
「美弥ーっ!!」
名前を呼ばれて振り向いた彼女は、同僚の優実と視線をぶつけた。
「なに?」
「機嫌悪いねー。まぁいつもの事か」
そう言って、一枚の紙を渡す。
訝しげにそれを見遣るが、そのまま颯爽と歩き出す。
優実には目もくれず。
十二の美弥は心が凍てついていた。
親に売られたこの身を疎ましいと思っていたからだ。
物心ついた時にはもう護衛としての教養をされていた。
友など邪魔なだけの存在。いつ死ぬか分からない自分にはそれが一番いいと思う
から。
美弥はもう一度紙を見直すと、愛奈の部屋に足を運ぶ。
「失礼します」
一言だけ声をかけると、部屋の襖を開けた。
すると、中では秋が愛奈に色々な装飾品を並べて見せていた。
「あら。美弥、意外に早かったわね」
愛奈は翡翠の首飾りを秋に返すと、美弥を見据えて言った。
「お邪魔でしたか?…というか、意外って何ですか」
すかさず突っ込みを入れる美弥に構わず、秋は何かを放ってよこした。
危うく落としそうになったが、辛うじて掴む。
「これは?」
「黄水晶だ。守りにしておけ」
美弥は渡された物をよく見る。
全体的に薄みがかった黄色で、透明に近い。雫のような加工がしてある。上方に
紐が通してあるので、首に掛ける物かと思われた。
「…で。これを渡すために私を呼んだのですか?」
半ば呆れ顔になった美弥は愛奈に装飾品を返す。
「必要ないです。私にはそんな気休め、必要ありません」
さっと踵を返すと、再び襖に手をかけた。
すると、それを愛奈が止める。
「待ちなさい」
美弥はすっと目を細め、半ば愛奈を睨む。
しかし、彼女は完全にそれを黙殺して美弥の髪に手を伸ばす。高く結った美弥の
黒髪が揺れる。
「これは命です。従いなさい。あなたを正しい道へと導いてくれますように」
髪の結い紐に黄水晶をくくり付けた。
「………有り難く頂戴致します」
長い髪を靡かせて美弥はさっさと退室した。
「悩み事だ」
秋は深くため息をつく。だが、愛奈は大丈夫ですよと言った。
「美弥にも大切な人が現れるでしょう」
「それはお前の願いか?それとも先見か?」
秋が優しく、ゆっくりと問と愛奈は小さく微笑んで言った。
「どちらでもありますわ。ただ、事実でもあります。それは…秋王、あなたが与
えるものです」
名前変更しました。
読みにくいと言われました。
友達に…