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第二章

美夜は頭の中が真っ白になった。

考えられない…

「美夜…っ!どうしましょう!?どうしたら…」

どうしようもない…

それは百も承知だ。

でも、どうにかしたい。

―――なぜ―――?

――――秋王――――

―――愛奈への裏切り?

信じられない…

美夜は考えた事もなかった。

秋王が愛奈媛以外を迎えるなんて…

ならば……………?

美夜の脳裏に一つの嫌な考えが浮かんだ。

ならば、愛奈媛や和奈姫の地位はどうなってしまうのだろう?

実際、美夜は愛奈と秋の関係を知らない。

否、不明。

ただ、愛奈と和奈は姉妹である。

恐いのは、彼女達の地位。

現在、姫の地位にある二人はどうなってしまうのだろう。

美夜は、考えた。

ただひたすら考えた。

そして、出た結論…

――愛奈は知っているの?――

美夜は会議室へと向かおうとした。

「美夜っ!!」

後ろから沙菜に呼び止められる。

「何…?」

「愛奈媛に…言うの…?」

美夜は振り返らず言った。

「ああ……」

そうして、沙菜を見ずに走った。





美夜が全てを話した後、愛奈は静かに微笑んだ。

「そうですか…」

「なぜそんなにも落ち着いていられるのですか!?」

今、美夜は正式な着物を着ている。

その着物を乱しながらも美夜は講義した。

「何を怒っているのですか?おめでたい事ではありませんか」

「媛は…ご存じだったのですか…?」

愛奈は首を横に振った。

「初耳です」

「驚かれないのですね…」

しばらく、沈黙が続いた。その後で、愛奈は語り始めた。

「なぜ、美夜は私と王が結婚すると思ったのですか?」

「何故って…それは…」

「媛だから…?」

愛奈は美夜の言葉を奪った。

「そう…お話しましょう…私と王の関係を」

美夜は顔を上げる。

「私は実のところ媛などと言える立場ではないのです…」

「え……」

美夜には意味が分からなかった。

「ただ…ただの気まぐれ…そうです……」

次の言葉を美夜は待った。

「王の気まぐれで私は拾われたのです」

「何を……」

何を言っている…?

「私は没落貴族の端くれ……」

愛奈は重い口を開いた。





十二年前―――

一つの家が火事により消滅した。

原因は、放火。

愛奈の本名は「まん 愛奈」

愛奈の家系、満家は没落貴族の中では裕福な方だった。

しかし、満家を憎む者の手によって消滅させられた。

満家は愛奈のように不思議な力を持った人間が沢山王宮へ送り込んでいた。

それゆえ、王家とは関係が深かった。

だから、邪魔者を廃除しようと満家の血を滅ぼそうとした。

しかし愛奈は自らの能力により命を救われた。

当時、四歳だった愛奈は命からがら逃げた。

満家が火事で焼けたと聞いた秋の父はすぐさま現場へ向かった。

『放火か…ひどいな…』

『王っ!!』

その時、秋の父に仕えていた男、蹂の父は予想外のことを口走る。

『娘がいませんね…』

『遺体が発見されなかったと…?』

『はい』

すると、一人の女性が王、と呼んだ。

『何だ、あや

『和奈が…また言いました』

『何をだ?』

『愛奈は王宮近くの洞窟にいる…と』

綵は華麗にも、鮮やかな笑みを浮かべた。

『ふむ…』

王はしばらく考えた後によし、と手を叩いた。

『秋に確かめてもらうとするか』






『秋様、こちらです!』

一人の兵士が松明を持ち、洞窟を照らした。

当時ハ歳だった秋は、子供ながらもしっかり者であった。

『女童はいるか…?』

すると、しばらくして返事が返ってきた。

『居ました!確かに満家の娘子です!!』

愛奈はその時の事を覚えていなかった。

後から聞いた秋の話しでは寝ていたらしい。



『父上、女童めのわらわはどうなさるのですか?』

秋は父に向かい尋ねていた。

『そうだな…どこかの貴族に養子にでもやるか…』

『ならば父上、愛奈を私の妹として…名目上だけ妹、和奈の姉、と言うのはいかがでしょうか』

すると王は困ったような顔になった。

『秋、王家に養子はまずい。せめて、大きくなったら女官くらいにはなれるだろうが…』

秋はその言葉に納得できなかったのか、腰の刀に手をかける。

『おいおい…物騒な真似はよせ』

『父上がご了承なさいませんなら、物騒なことになります』

カチャ…

刀が鳴る。

『なぜ秋はそこまであの娘子に気をかけるのだ?まさか惚れたか?』

『お黙りください』

『分かった分かった…了承しよう。だが、名目上は和奈の姉だ。お前とは血の繋がりはない。分かったな』

王は鋭い目で言った。

『分かりました』

秋は冷たく笑った。

秋が去った後、王は右手を額に押し付け天上を仰いだ。

『はは…秋も俺と同じだな…』

『何かおっしゃいましたか?』

『わっ!?』

いつの間にか綵が後にいた。

『秋が我が儘でこまっている…』

王は妻に向かって言った。

『あら。私も元々は没落貴族ですが』

綵は呆れたように言った。

『だから、俺と似ていると言っただろう?』

『容姿は私に似ておりますけど』

綵は自信満々に言った。

『俺は別にお前の美しさに惚れた訳ではないぞ。気の強さに惚れたのだ』

そう、綵はこの国で一・ニを争うほど綺麗にして、華麗だ。

綵の長い黒髪が揺れた。

『嫌味に聞こえましてよ…』

綵がきつい目で言った。

王は小さく笑った。

『そういう所が好きなのだよ』




『あの…母様は…?』

愛奈は侍女に尋ねていた。

『………』

愛糯は王宮で恐怖を抱いた。

女達の目が冷たい。

没落貴族がいきなり王族にまで成り上がるなどあってはならないだろう。

『あの……』

愛奈は一人の侍女に触れた。

すると、頬に熱を感じた。

『いた…っ…』

叩かれたと気付くのにしばらく時間がかかった。

『気安く触るんじゃないよ!!』

その侍女叫んだ。

すると…

『貴様、今愛奈に何をした?』

冷たい声が飛んだ。

『あ…秋様……』

女は青ざめた。

『秋…様』

秋は女をきつく睨むと侍女は去って行った。

『秋様』

愛奈は安心したように秋を見上げた。

『大丈夫か?』

『はい…』

差し出された手を取った。

『お前はこの国の皇女だ。そして、私は皇子だ。私に迷惑をかけるな。だから、凛としていろ』

『あ…はい…』



それが全てだった。



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