目覚めは最悪
俺は死んだはずだった。
流血は実際のところかなりの量だったし。
「私の下僕くん。おはよ。元気?」
「死んだ気分だよ」
「なんかおかしいけど……死んだ気分って……まあいいや」
実際死んだはずだった。
「まさか本当に命を無駄にしないとは思ってなかったね」
「職員……お前いたの?」
「いたね。バリバリいたね。それに僕は職員じゃなくて……」
「フォボス?って読むのか?それ」
俺はネームプレートを指さす。
「よく知ってるね。因みに日本語では狼って意味だね。」
「お前はどうでもいいけど私の下僕くんの名前聞きたいんだけど?」
魔女に名前を教えてよいものやら……
「いま頭に浮かんだね。一ノ咲桜……女みたいな名前だよぉ」
ニタニタ笑う魔女。不気味だ。
「ほぉ……不気味ねぇ……私それなりにかわいいと思うんだよねぇ……下僕くんは私を好きじゃないのかなぁ?」
うざい。やっぱり眠らせたままがよかった……
「え?うざかわいい?やったぁ!やっぱり下僕くんは私のこと好きなんだねぇ?」
空気を読んでいるのやら巻き込まれたくないのやらフォボスはそっぽ向いて関係ないですーって顔だ。
「で?ここから出られるのか?」
「うん……そうだね……あとはあいつらがここを爆破するだけだね」
先ほどまでそっぽ向いていたフォボスが喋る。
「そこの職員が今言った通りさ。下僕くんは私に聞きたいことはないのかい?いいよ?なんでも聞いて?」
なんで自分の呪いが自分にかかっていたのか……
「どうして自分に呪いをかけたのか。かな?」
心をまた読まれた。
「ずっと……ずーっと!!眠っていたいからに決まってるじゃないか!!」
お、おう……え?
「人間にとって眠りは最大の欲求なんだよ!!それが常に摂取できる。最高でしょ?」
「あ……はい」
「でも下僕くんが私を起こした。下僕くんは一生私の下僕として生きる程度には罪を償えよ!!というわけでよろしくね?」
「……はい」
奇妙な魔女と俺との関係が今始まった。