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スターダスト コネクション Ⅵ  作者: 奏 倫太郎
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file 6. Yes or no

登場人物



ジェイファースト インスペイダー(27)

私立探偵 喰えない奴



クレア ノートン(22)

捜査一課の刑事 堅物



ガブリエル ハスクバーナ(32)

捜査一課課長 喰えない奴



ケイ

ジェイの助手 お気楽


「クレア……」

「えっ?」

 声がする方にクレア ノートンは振り返った。

 ジェイファースト インスペイダーが立っていた。

 そしてジェイがゆっくりとクレアに近づいてきた。

「ジェイ?」

 クレアはジェイの瞳を見る。

 狼が獲物を狙うような鋭い視線をクレアは感じた。

 ジェイの唇が開く。

「クレア……おまえが好きだ。」

「えっ!」

 クレアの両肩をジェイの両手が掴む。そしてジェイの顔が近づいてくる。

「ちょ、ちょっとまってジェイ!」クレアはジェイの両手を振りほどこうとしたが、なぜか力が入らない。さらにジェイの顔が近づいてくる。

「クレア……おまえが欲しい。」

「そんな……」

 クレアは抵抗するのも忘れて、ジェイの瞳を見つめた。

 激しく動悸が高まり、思考がまとまらない。

「クレア……俺はおまえを……」

「ジェイ……」

 ジェイの顔は、もう間近に迫ってきている。

 クレアもジェイの瞳に吸い込まれるように近づいた。

「俺はおまえを……」

「ジェイ……」

「いじめたい。」

「……えっ!?」

 クレアはちょっとだけ我に返った。

「俺はクレアを、いじめたい。」

「ちょっとまって……ええっ!」

「おとなしく俺に、いじめられろ。」

 ジェイはクレアの顎を掴んで迫ってくる。

 はたしてクレアはどうなるのか?

 次回につづく!


「ちょっとまちなさいってば!」

 クレアは飛び起きて叫んだ。

 気がつけば、捜査1課のデスクにいた。

「夢?」

 調べものをしていて、いつの間にか寝ていたらしい。

 誰かがブランケットをかけてくれていたが、今は誰もいない。

 とんでもなく恥ずかしい夢に、改めてクレアは赤面する。

 誰にも見られなかったのが幸いだった。

「もう……これのせいだわ!」

 スターライト シティ署の若き刑事クレア ノートンは新聞の切り抜きの束に目を移した。



 ジェイファースト インスペイダーは朝の日差しの中、事務所のデスクにいた。

 眠気覚ましのコーヒーをすすりながら新聞に目を通していると、エレベーターが動く音がした。

 五階建ての雑居ビルの四階にあるインスペイダー探偵事務所の前でエレベーターは止まった。もっとも、この雑居ビルにはジェイの探偵事務所以外に何もなく、エレベーターを使う者は大体ジェイを目当てに来る事となる。

 無論、中にはジェイにとって招かれざる者もいる。

「ジェイファースト インスペイダー!聞きたい事があります!」

 勢いよく扉を開け、息を切らせて事務所に入ってきたスターライトシティ署の若き刑事クレア ノートンは、ジェイに噛みつくように近づいた。

「おはようルーキー、まあ一杯どうだ?そこのドブ川の水より旨いはずだ。」

 ジェイはポットから先程淹れたばかりのコーヒーをクレアに差し出した。

「ドブ川の水って……」

 ジェイはカミソリのような鋭い冗談のつもりで言ったのかもしれないが、錆び付いたノコギリにも劣る切れ味だった。

 とりあえず言われるままひとくち飲んでみた。

「うっ……」かなり苦かった。それ以前にクレアはコーヒーはあまり得意ではなかった。

「苦いでしょー?ジェイの淹れるコーヒーはいつも苦すぎるのよ!はい!砂糖とミルク!」「えっ?あっ!」

 いつの間にかケイもいた。いつもケイは唐突に現れるので、その度にドキリとさせられる。

「あ!ありがとう……」

 クレアはミルクをこぼれるギリギリまで注ぎ、慎重に飲んだ。

 まだ苦かった。

「それを飲んだらさっさと帰ってくれないか?俺は忙しいから。」

「そうはいきません!」

 クレアはバッグから新聞の切り抜きを出し、ジェイに詰め寄った。

「まず昨日の16時からのアリバイを確認します!」

 (またか……)

 ジェイはウンザリしていた。

 あの一件以来、クレアは何かとジェイの行動を追い続けていた。

 警察官としての責務、クレアはジェイが関係している可能性のある事件が起こると、まずジェイに尋問するために事務所に来る。

 そして「まず昨日の16時、あなたはどこにいましたか?」といった具合に問い詰めるのである。

 ジェイからすれば実に無駄で馬鹿馬鹿しい行為だ。しかしクレアは真剣だ。

 そこにもうひとり厄介な人物が加わる。

「おはようジェイ!おはようケイ!おぉ!クレアもいたのか?おはよう!」

 大声でガブリエル ハスクバーナ警部がやって来た。

「ん?」ガブリエルはジェイとクレアを交互に見た。

「あ……おジャマだった……かな?」

「違う!」「違います!」ふたりはハモった。

「ならいいや、ジェイ!これから散歩に行かないか?」

「ビジネスか……」「まあな。」

 スターライト シティ市街地の外れに巨大なショッピングモールがある。そこに行こうとガブリエルは言った。

 買い物が目的ではない。なぜなら巨大ショッピングモールはすでに閉店し、ただの巨大な廃墟と化していたからだ。

「警部、何しに行くのですか?」

「なあに、最近そこにネズミが棲みついてるらしいから、様子を見てこようってだけだ!」

 巨大ショッピングモール跡地に、いないはずの人影がうろついているという情報があった。子供が遊んでいるだけなら大きな問題にはならないが、地下組織が活動拠点にしている可能性もある。

 ガブリエルはそれを確認しにいくつもりだ。

「報酬は千ドル。プラス必用経費。」

「高いな……五百にならないか?」「安すぎる。」

「最近は経理が厳しいんだ……六百でどうだ?」

「やれやれ……七百ドルでいい……」

「ありがたい!早速行くぞ!」「今からか?」

「できれば昼前に済ませたいからな!」

「あの……私も行きます!」クレアが言った。

「断る!」ジェイが即答した。

「何故です?」「危険だからな……」

「そんな……警部!」

 クレアはガブリエルに向かって言った。

「様子を見るだけ、そう言いましたよね?だったら私が行っても危険ではないですよね!そうですよね?」

「うん……まあ……」ガブリエルは反論できなかった。

 こいつ段々気が強くなってきやがる……

 ジェイはこれから起こるトラブルの予感がした。



 巨大ショッピングモール跡地はバリケードで囲まれており、車は入れない。クレアの車に乗って来た四人は一旦降りて、関係者用通用口から入った。やはり人気はない。建てられてから十年しか経ってないが、人がいなくなると寂れるのも早い。

「あの……警部、ちょっといいですか?」「何だ?」

 クレアはガブリエルに尋ねた。

「ジェイはともかく、どうしてケイが一緒に来ているのですか?」

「ジェイの助手だからな。」

 クレアは納得しなかった。

「どうして警察官の私が断られて、一般人のケイはいいんですか?」

 ネイビーのフード付きロングコートと、地味な出で立ちのケイだが、全く地味に見えなかった。そのままグラビアに載っても違和感がない。

「あ~!カワイイお花!ねえ見て~!このお花、すっごくカワイイ~!」加えて緊張感もない。

「ああ見えて優秀な助手なんだよ!ケイは!」

 ガブリエルのフォローにもクレアは納得できなかった。

(結局、キレイな女性をそばに置きたいだけじゃない?ジェイったらイヤラシイ……)

 クレアはイラついていた。

 「さて、一回りしてみるか?」「ああ……」

 廃墟の外側を左回りに四人は歩いた。見た目には何も変わった様子はない。一堂はさらに中心部に近づく。

「ケイ、何か解るか?」

「そうね、セキュリティ系はだいぶいじった後があるわね!」

 ケイはさらっと答えた。

「えっ?わかるの?」クレアは驚いた。

「カメラと赤外線センサーを増やしているわね!あとは地下に巨大な弾薬庫、外向けのレーダーと……レーザー防御壁もあるわね!」

「こりゃ思ったより大がかりだな!引き返すか?」

「ああ、長居は無用だ。しかし……」「ん?」

 ジェイの足が止まった。

「タイミングが遅かったようだ。」

 クレアは辺りを見回した。何も変わった様子はない。

「ケイ、ライフル!」「オーケー!」

 素早くケイはジェイにライフルを渡した。

「どこからライフルが?」クレアの疑問をよそに間髪入れずジェイは撃った。 

 高台に潜んでいた男がひとり倒れた。手にはライフルを持っていた。

「きゃあ!」「走るぞ!」「了解!」

 ガブリエルは状況が掴めないクレアの手を取り走った。

 それを庇うようにケイも走り、最後尾をジェイが追った。

 銃声が響きわたる中、廃墟の出口が見えた。その時、

「だめ!止まって!」ケイが叫んだ。

「そのゲートを通れば、レーザーの雨が降るわ!」

「絶対逃がさないって訳か!ネズミ捕りに来た俺たちがネズミになったようだな!」ガブリエルが唸った。

 急いで脇道に入ると、店舗跡地の中に入った。段ボール箱の山に四人は身を隠した。

「ジェイ……そのライフルはどこから?」クレアはさっきから疑問に思った事を尋ねた。

「後で説明する。」事情が事情なのでクレアもそれ以上訊かなかった。

「さて……助けを呼びたいところだが……通信ができないな……」

「だろうな。音信不通の際には救助はいつ来る手はずになってる?」

「あと一時間……かな?」

「厳しいな。待つより自力で脱出する術を考えるべきだ。」「そうだな……」

 会話の最中もジェイはライフルを構えたまま外から目を離さない。まるでプロの軍人だ。

「警察官の立場で言えば……民間人であるお前の安全を……最優先にすべきだが……」

 ガブリエルの様子が少しおかしい。

「ガブ、お前……」ガブリエルの左足が血まみれだった。先ほどどこかで撃たれたらしい。急いでケイが応急処置をする。

「警部!」「大した傷じゃない……でも万が一の時は……」

 ガブリエルはちらりとクレアを見た。

「警部?」ガブリエルが何を言いたいのかはジェイには解ってた。

「言いたい事は、終わったら聞いてやる。」

 ジェイはクレアに質問した。

「クレア、ガブを助けたいか?」

「あ、当たり前でしょ!」

 ジェイはさらにクレアに質問した。

「法律と人の命、クレアはどちらを優先する?」

 ジェイが何を訊きたいのか、クレアには分からなかった。それでもクレアは答えた。

「人の命より大事なものなんかないわ!」

「いい答えだ。」「えっ?」

 一瞬、ほんの一瞬だけ、ジェイが微笑んだように見えた。

 ジェイの笑顔……

 クレアはジェイの笑顔に、一瞬心を奪われた。

 再び元の厳しい顔つきに戻ったジェイはケイに命令した。

「ケイ、チェックメイト!」「りょーかい!」

 チェックメイト?

 どこかで聞いたような……

 その瞬間、ケイの身体は眩い光となり、ジェイの身体を包んだ。

 そして光が消えると、ジェイの全身は装甲に覆われ武装された。

 鏡の様な装甲に黒色のラップコーティングしたような表面に、あらゆる武器とセンサーを身につけた軍事用機動歩兵装備の集合体。

 先ほど使ってたライフルも、ケイの体の一部だったのだ。

「これって……」

「ケイの正体は汎用戦術戦闘システム『K-6700』……その戦力は一個中隊に匹敵するそうだ。」「警部?」

 ガブリエルが説明した。

「無論、違法だがね……」

 武装したジェイは機動用ロケットモーターを点火させ、驚異的なスピードで立ち去った。

 その先では銃声が聞こえた。爆発音もした。壮絶な戦闘が繰り広げられているのは想像される。

 そして静かになった。

 遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。

「どうやら助かったようだな……」

 クレアは緊張の糸が切れたように座り込んだ。

 そして思い出した。

「チェックメイト……やっぱりあの時も……」



「ガブ!なんだこれは?」

 ジェイの探偵事務所にガブリエルがいた。

「何って、報酬だよ。」「約束が違う。」

「え?だって七百ドルでいいって言ってただろう?」

 ジェイはガブリエルが持ってきた小切手をつまみ上げて言った。

「俺は七百ドル、プラス必用経費といったはずだ。」

「必用経費って言われてもなあ……例の『魔法』は、どう必用経費として請求すればいいってんだ?」

「それはそっちで考えろ。」「しかしだなあ……」

 あんな事があった後にも関わらず、ジェイとガブリエルは揉めていた。

「ジェイ!訊きたい事があります!」

 そこへクレアがやって来た。

「ジェイ!これは何ですか?」

「あたし?」クレアはケイを指差して質問した。

「ああ、俺の助手だ。」

「そうじゃなくて!この殺戮破壊兵器の法的問題を訊いているのです!」

 クレアは話を続けた。

「私と警部は、今回あなたに命を救われました。そして先日のカーネルケイマンの件でも、私はあなたに命を救われたと確信してます。感謝します。ありがとう……」

「そうか……」

「でも、それとこれとは話は別です!」

 何て頭のカタいやつだ……

 ジェイは言葉を失った。

 助けた事を、ほんの少し後悔したジェイであった。

 それでも容赦なく追求するクレアに、ジェイがポツリと言った。

「そんなんだから未だに処女なんだよ……」「えっ……」

 クレアの顔が青ざめた。「ん?」

「どうして……どうして知ってるんですか?……」

「えっ?」

 周りの空気が重くなった。

「本当に、処女だったのか?」「はっ!」

「いや、冗談のつもりだったんだが……」

 クレアの顔が真っ赤になり、さすがのジェイも気まずい空気を感じた。

「クレア……」「ジェイのばかー!」

 クレアはソファーのクッションを投げつけ、非常階段を走って降りた。

「ジェイ、謝れ!」「そうよ!今すぐ行って謝りなさい!」

 俺が悪いのか?二人の目はジェイを厳しく非難していた。

 ジェイは納得いかなかったが、クレアを追って外に出た。

 あとに残されたガブリエルとケイは笑いながら、

「ジェイのやつ、ルーキーからクレアと呼ぶようになったな!」とか、

「ホント、二人ともカワイイ!」などと楽しんでいた。


 ジェイがクレアをどうなだめたか、あるいはなだめられなかったのかは想像にお任せしよう。


「気にいらんな……」

さて、スターダスト コネクション

第6話です!

いやぁ難しいです!

何が難しいって、思い通りに話が進まないのです!

私が目指したのはSFハードボイルドのはずなのですが、

書き上がった作品を読み返すと、これラブコメですね!

根がいーかげんなのか、

書いてるとストーリーが最初と変わってきちゃうんですよね!

第5話もそうでしたが、特にクレアの存在が大きいんです!

主役を喰っちゃうんです!

まあ女にハードボイルドなんて理解できないんでしょうね!

仕方がないです!


私は登場人物をどう動かすか?というより、どう動いてくれるかに留意して書いてます!

キャラが出来上がっているので、舞台を作ってキャラを配置すれば、勝手に動いてくれるのです!

後はどう表現するか?表現力が今後の課題です!

最後までお付きあいいただければ幸いです!

ではまた!

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