報告書
「はい?」
アリスから出た第一声は気が抜けたものだった。
俺はあの後、二人を一応拘束してギルドに戻った。
そして、起こった経緯を話した。
そしたら、出た声がさっきの気の抜けたものであった。
「………アトスちゃん、私の報告書は山のようにあります。」
「普段からしないからね。」
「私、過労死しちゃうよぉ〜!」
「普段からしないのが悪い。」
ふえぇぇ、と半泣きになりながら報告書をまとめていく。
………泣きながら作業をするとは意外に器用だな。
「アトスちゃん。二人の面倒はしっかり見るのよぉ。」
「分かってるよ。しっかりとしますよ。もしもの時は、魔力と体力、筋力を全て削いでゴブリンの巣に打ち込みますよ。あ、自殺もできないようにしてね。」
後ろにいた二人は冷や汗を凄まじい勢いで流していた。
「そんなのダメよぉ〜。どうせなら、ダルマにして少しずつ溶岩に浸していくほうがいいわよぉ〜。」
さらに二人の冷や汗が増えた。
((ヤバイ。絶対に逆らってはいけない。確実に殺されるより嫌な目になる。))
虚飾と色欲は心に深く刻んだ。
「んで、こいつらはどうするのさ?」
「私的には、学園に入ってもらうのがいいんだけどぉ、生徒としては無理があるわぁ。」
「なるほどな。」
「「どこがダメなんだよ!」」
「「いや、あんたら見栄と性欲の塊じゃん。」」
「「うぐっ!」」
何も言えない二人は胸を押さえてその場に膝をついた。
「それに、傲慢と色欲と虚飾はぁ、幹部の中でも最年長でしょう? そんな、ジジイとババアを生徒の中に入れるわけにはいかねぇだろうが。あ?」
あ、若干スイッチ入ってる。
多分報告書によるストレスだろうな。
あれだけ普段からしておくと楽だよって言ってるのに後回しにして、結局苦労しているんだからな。
「まあ、教師としても入れようかと思ったんだけどぉ、教えることできないわよねぇ?」
「確かにな。」
「私達が使うのは、人からしたら邪道の魔法だものね。」
そう、魔人がよく使うのは闇魔法、変化魔法、暗黒魔法、破壊魔法、殺戮魔法等と人間からは忌み嫌われている魔法ばかりだ。
逆に人間は光魔法、元素魔法、法術、極光術、創造魔法等と治療や助けになる魔法がメインである。
人間と魔人は正反対の魔法を使用している。
だから、人間は魔人を毛嫌いしている。
だが、魔人は人間とは友好的になりたいと思っている。
これが発展した国としてない国の違いだな。
まあ、発展してるのは魔人の方だけどな。
長くなるから切るけど、現実を見た方が確実に発展するということだな。
「いや、方法ならあるぞ。」
「「「はい?」」」
「そいつら二人を闇魔法の”影闇”で、俺の影の中に入れさせればいいんじゃないか?」
「「「それだ!!」」」
うおっ、びっくりした。
いきなり声出すなよ。
「うるさいなぁ。」
「なら、早速!」
そう言うと色欲はそのまま影に飛び込んだ。
「あ、おい!」
続いて虚飾も飛び込んだ。
「こいつら………。」
「アトスちゃん。しっかりとよろしくね?」
「分かってるよ。じゃ、書類片付けろよ?」
「あ、アトスちゃーーーん!」
いつの間にか更に積み上がった書類が机の上に置いてあった。
ちなみに帰ったら嫉妬が仁王立ちで待っていて、かなり怒られた。
その時に二人の存在がバレて、ちょっと乱闘になったのは言うまでもない。
あと、色欲がシルヴィで、虚飾がヴァニティと言うらしい。