電車の中で愛を叫ぶ。
幸せな恋人同士が突然彼女が病気で余命3ヶ月と宣告されて残りの時間を描いた映画を見た。
感情移入して効果音で涙を誘う。
確かに涙は出るが、もしその二人がそのまま何事もなく結婚して子供が二人産まれ、
彼女はぽっちゃりオバさんになり彼氏は頭がハゲ、メタボオヤジになる。
夫婦仲は最悪で旦那に多額の保険金を掛け
何かを企む彼女、、、
そんな事を考えて帰りの電車に揺られていた
ふと前に座る女の人と目が合った。
足が不自由なのか杖を抱きしめている。
きっと同い年くらいなのだろう、、、
しかし化粧もしていないし顔面蒼白だ。
美希、、、俺の頭の中で失われた記憶が蘇る。
美希、、美希だろ! 俺はさっき見た映画に負けないくらいのシチュエーションで叫んでいた。
その女性はうつ向いて顔を上げようとしない
俺は思わず彼女の肩に手をやり顔を覗き込むと突然首根っこを掴まれ反対の座席まで吹っ飛ばされた。
ガッチリした体型の男が凄い形相で睨んでいた。
その男にも見覚えがある。美希の兄さんの
清君だ。
清君!俺だよ。将斗! 美希と付き合ってた
将斗だよ!
、、、将斗、、、覚えてるよ。
だけど美希の事は忘れてくれ。
今日の事は二度とおもいだすな。
そう言うと美希は清君に肩を預けて次の駅で降りて行った。
俺は、家に帰ってからも心臓の鼓動が太鼓を叩いている様で落ち着かない。
そして、美希と付き合っていた日々を、、、
二度と思いださないと誓った過去を思い出していた。
そしてある一つの疑問が浮かび上がった。