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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

された側の結合

作者:

軽いノリで書いたものです。頭からっぽ状態で読んで下さると嬉しいです。

 俺の名前は上崎うえざき 章平しゅうへい

 全寮制のとある山奥に位置する男子校の一般生徒、高等部二年生だ。

 バイやホモの多いこの学園。

 見目麗しい方々を崇拝する親衛隊渦巻くカオス地。

 そんな中で平凡容姿、同性にでさえ見向きもされなかった俺に同室者の恋人が出来たのはもう数ヶ月前の話だ。

 イケメンちっくで、話上手。

 ついでに床上手だったあいつと俺はそれなりに上手くいっていたカップルのように思えた。

 それが今現在。


「あっ、あっ、あぁっ…!もっと、もっとぉ……!!」


「くっ、お前っ……アイツよりも良い声上げんじゃんッ!」


「あんなへい、ぼっ……んと……いっ、一緒にしなぃ……でぇ……!!」


 浮気現場に遭遇中。


     ○


「え、えぇ~………」


 幸いにも喘ぎ声は浮気真っ只中な恋人……啓次けいじの部屋の中から聞こえてくる。

 これが扉開けっ放しのオープン状態でヤられてたら俺は発狂してた。

 確実に。


 ……ってか、この場合って俺……怒鳴り込んじゃえば良いの?それで良いのかなっ!?


 啓次の部屋から聞こえてくる行為中の会話達は全部俺に対する侮辱の言葉だらけ。


「ほんとっ、あんな色気の無いヤツっ、恋人になんかっ、するんじゃなかったっ…あぁっ……!」


「性欲……しょり、の、ためにっ……つきあ、て……たんでっ…しょ?あぁん!」


「あいつって、こんな良い声っ、出さねぇから、なっ……!んっ……」


「ひゃああっ!は、はげしっ……!」


 俺をダシにして良い感じに盛り上がってるっぽい。

 ヘナヘナと床に座り込んで俺は涙を流した。

 こうして平然っぽく状況を呑み込んでいる様に見えるけど、それはただの現実逃避。

 恋人が突然『俺、実は浮気してたんだ……』なんて言ってこられるよりも、確実に今の現状が目の前で起きれば理解せざる得ない。

 つまりは、だ。


 ……ショックがでかすぎて……上手く頭回ってない。


 力が抜けきった身体を無理矢理立たせ、俺は静かに部屋から出て行った。



 特に行くあてもなくブラブラと。

 だって友人と呼べる数名は今頃恋人と部屋でイチャコラしてるだろうから、部屋に泊めてだなんて絶対言えない。

 ああっ、リア充爆発しろってこういう時に出てくるのかも。

 苛立ちに壁でも殴りそうになった時、奥の方から誰かが歩いて来るのが見えた。

 あれって………。


「会長さん?」


「あれ?こんな時間にどうしたんだ?」


 キョトン、と首を傾げながら生徒会長の坂中さかなか 胡衣こいが俺の方へと近寄って来て立ち止まる。

 全校集会で遠くから見るだけだった綺麗な顔をこんなにも間近で見られるなんて……さっきまでのショックも半減しての驚きに俺はぽかんと間抜けにも大口を開きっぱなしで気の抜けた返事をした。


「おい、本当にどうしたんだよ。酷く青い顔をしているけど………」


「えっ?あ、ああ……うん。………実は、」


 会長に愚痴っても仕方ないと思ったけど、けれどこの時の俺は本当に誰かに吐き出さなきゃどうにもならない状態になっていたんだと思う。

 馬鹿にされるかもしれない……お前みたいなのに美形が付き合ってくれてたんだからその位我慢しろと言われるかもしれない。

 少しの不安が俺にそう訴えてきてたけど、もう自棄になってた。

 談話室で、俺は一時間は延々と啓次の愚痴を吐きまくった。


     ○


「まぁ……その。お前も大変だなぁ………」


「うん。ホント、俺みたいな平凡なのはただの性欲処理って……だったら“付き合う”って形を取らなきゃ良かったんだよ!」


「まぁ、普通はそう思うよな……」


「でしょう!?」


 あースッキリ!

 会長も嫌な顔一つせずに俺なんかの愚痴に付き合ってくれて。

 噂ばかりが飛び交っていたから、どんなに傲慢で俺様な人物なんだろうと思っていたけど、これは予想外。

 頼りになる同級生。

 なんて兄貴肌な人なんだろう!


「会長は?」


「ん?俺?」


「俺の愚痴、こんなにも聞いてもらっちゃったからさ……会長は愚痴というか吐き出したいこととか無いのかなぁ?って思って……」


 余計な御世話だったかな?

 そう問い掛けたら、何だか会長の瞳がギラッギラしたように見えて……。


「聞いて……くれるか?」


「う、うん………」


 な、なんだろう。

 会社運営とか関係とかだったら、確実に俺、分かんない。

 どんな愚痴を吐き出すんだろうと期待半分恐怖半分な気持ちで会長の言葉に耳を傾けた。



 えぇっと………。

 会長も彼氏に浮気され、たった今その現場に出会してしまったとの嘆きの言葉だった。

 俺と同じ体験を今してきたなんて……これって凄い偶然だね☆なんて言えない。

 もう言えない。

 ちょっとこれは…………。


「俺、風紀委員長のたくと付き合ってんの知っているだろう?知らない?結構有名なんだけどもな。まぁ、前々から浮気とかんなのしょっちゅうで……あれは一種の病気?病気か。とりあえず俺という恋人がいながら他のヤツらに手を出さないと興奮が持続してしまうという真性のセックス依存症。俺一人でも受け止められると言ったんだが、どうやら一人というのが駄目らしくってな。それで何人も……それも親衛隊全員を一日一日でヤり回して……怒っても無駄。泣いても無駄。別れるという脅し文句も無駄というか反応しない。これってもしかしなくとも俺って恋人じゃなくてセフレの内の一人なんじゃないだろうか?あ、そうだ。俺もセフレの一人に過ぎなかったんだろうな……ふふふ」


 どうしよう、会長が壊れ始めちゃったよ。

 というかそんなことになってたなんて俺知らなかった。

 風紀委員なのに風紀乱しまくってるじゃないか。

 分かってたことだけどこの学園もう駄目だ!


「うっ、うぅ………」


 ……っ!?


「かっ、会長………」


「ごめっ、ごめん……少し、見ないフリして欲しい…………」


 肩を震わせて涙を静かに流す会長の姿。

 こんな弱り切った会長を知っている人なんて、学園の中でも極少数じゃないかな?

 俺も浮気を今知って傷付いていたけれど、会長なんてもっと前から浮気に気付いて、怒って、泣いて……それでもまた浮気されたんだもんなぁ……。

 悲しみは比べるものじゃないと分かっていても、でも、きっと会長は彼氏が浮気してるなんて、知りたくはなかったんだと思う。

 勝手な俺の想像だけど。

 俺と同じくらいの背の高さなのに、泣いている会長の姿はまるで小動物のように見えて……。


「あ、」


 気付いたら、頭を撫でていた。


     ○


 それからがもう怒涛の展開。

 こうなりゃ浮気されたんだからこっちも浮気してやるってことで俺と会長はその……談話室でいたしてしまったわけで………。

 俺は彼氏に抱かれるままのネコだったけれど、泣いている会長を見ていたら……こう、なんだかムズムズ……いや、ムラムラってきちゃって。

 キスして舌を舐め合ってさぁヤルぞって時に俺は思いっきり会長……胡衣を押し倒して。


 ……知らなかった。俺、タチの方がなんか自分にしっくりと来たんだ!


 泣きながら気持ちよさに喘ぐ胡衣を思いっ切り甘やかして、快感が頂点に達した時に同時に果てた。

 荒くなった呼吸を整えながら胡衣は俺を真っ直ぐ見て、


「俺達……付き合うか?」


「うん」


 二つ返事で俺は頷いた。

 身体の相性がばつぐんに良かったのも要因かも。

 もう互いの身体しか感じないんじゃないかってくらいに、気持ちよくなっちゃったから。



 それで今、とある会議室を借りて俺と胡衣……そして風紀委員長と啓次とその浮気相手と話し合いという名の別れ話をすることにした。

 なんで啓次の浮気相手がいるかっていうと、俺と別れた後に啓次とスムーズに付き合えるようにとの配慮だ。

 うん、立つ鳥後を濁さずってね。

 あれ?違うか。


「卓。俺はもう浮気ばかりしまくっているお前に愛想が尽きた。というか、お前は俺と付き合っているという感覚も無かったようだから……まぁ、セフレ達と仲良くな」


「はぁっ!?えっ、おいっ……胡衣!?」


「啓次もごめん。俺みたいな平凡に付き合わせて……俺も良い人を見付けたから、その子と仲良くな」


「えっ!?ちょっ、そんな……!」


「啓次っ!どーゆーことっ!?なんでこんな平凡の横に会長さまがいるのっ!?」


 カオス状態になってきたなぁ……と思ったけど、これでもう後腐れ無く終わる筈だ!

 俺はこれから胡衣と一緒にイチャコラしながら弁当を二人で突き合う予定。

 勿論、胡衣の手作り弁当だ。


「おい待て!お前、本当にそこの平凡なヤツとっ……」


「平凡って言わないでくれるか?章平は俺の大事な恋人なんだからさ」


 二人で仲良く会議室を出ようとしたところに、風紀委員長の低い声が掛かる。

 なんだろう。平凡平凡って……。

 浮気なんかする人よりよっぽどマシ。


「会長さま!本当にそこの平凡なのが彼氏で良いんですか!?ぼっ、僕じゃ……ダメなのっ!?」


「はぁっ!?俺とヤっておいてそれはないだろう!うみ


 啓次の浮気相手だった女の子みたいな男子生徒……海が胡衣に縋り付く。


「このビッチが!俺の胡衣に触ってんじゃねぇ!」


 風紀委員長……卓が海を引き剥がしながら威嚇するような声を発し、睨み付けた。


「章平!そこの海とはただの浮気だ!俺にはお前だけしかいないっ!」


「でも、『あんな色気の無いヤツ、恋人になんかするんじゃなかった』って言っていたのは、他でもないお前の口からだろ?そんなに気を遣わなくても良いから。俺の顔なんて、俺が一番良く知っているし………」


 ぺちぺちと自分の頬を自分の指先で軽く叩いていたら、胡衣がその手の上から手を添えて、俺にもたれ掛かって、


「そんなことないぞ。俺は章平の顔含めて全部に安心するし……大好きだし……いつまでもこうしていたいし……」


「胡衣……」


 胡衣と俺とでデレデレっとしていたら卓が俺の胸ぐらを掴んでギリギリと歯を鳴らし始めた。


「俺の胡衣にナニしやがった」


「ナニって……ナニ?」


「ふざけんなっ!」


 それ、本気で言ってる?

 あれ?カッチーンと来るよ、いくら俺でも……それは無いだろう。


「風紀委員長。確かに俺と胡衣はまだ恋人がいるっていう状況でセックスしましたよ?けれど、それを責め立てる言葉を言えた義理ですか?貴方が?俺と胡衣が何処でナニをしていようと、貴方がそれを責める権利なんて無いと思いますよ。セフレで目一杯楽しんでいた貴方には」


「てっ、めぇ……!」


 否定をしないってことは、本当にセフレで目一杯楽しんでいたんだぁ……。

 うわぁ………。


「おいやめろ!これから俺と章平は昼にするんだから、殴ったりなんかしてみろ。風紀副委員長とタッグ組んでお前を委員長の座から引きずり降ろすからな。それに章平は俺の手作り弁当が食べたいって言ってくれたんだ。絶対に今日は章平の願いを聞いてやるって俺は決めているんだからな。邪魔をするな!」


「べ、べんと……俺にだって作ってくれたコトなんか……」


 あ然って感じの卓に、胡衣が憮然に言い放った。


「何を寝言を言っているんだ。前に作っただろう?それに対して何て言ったか覚えているか?『弁当だぁ?気色悪ぃコトしてんじゃねぇよ。俺は食わねぇから、ソレ捨てとけよ』だ。弁当なんて、男が作るものじゃないって言っていたな。だから俺はそれから一切作っていなかったんだ」


 胡衣の言葉を聞き終わった卓が、意気消沈の様子で会議室の椅子に座り込んだ。

 というか、そんなことをしでかしておいて、良く胡衣と関係が続くなんて思っていたなぁ。

 胡衣の手作り弁当……考えただけで胸がわくわく浮き立っちゃうよ。


「会長さま!だったら僕が弁当を作って差し上げます!」


 海って子も逞しいのか図々しいのか。

 めげずに押せ押せしてるのは良いけれど、その相手は俺の恋人だからね。

 流石に二度も恋人を盗られたくはないよ俺は。


「あの……何か勘違いをしてると思うけど。俺、ネコだから」


「………え?」


 普通だったら風紀委員長と俺と胡衣のやり取りで分かるもんなんだけど。

 海って頭弱い方なのかな?


「可愛いんだよ。胡衣って肌を触っただけで身体中赤くなっちゃって……」


「わっ!わわわっ……言うな!それはお前だけが知っていれば良いんだ!」


 折角胡衣の可愛らしさを教えてあげようと思ったのに。

 でも、確かに俺だけが知っていれば良い話か!

 ごめんね?胡衣。


「しょう……へい。お前……今までネコだったじゃんか………」


「うん?うん、確かに。でも、昨日の啓次と海くんとの浮気してるの見ちゃってからさ、もうネコでいる安心感?ネコの時に感じていた抱擁感なんて………もうなんかどうでも良くなっちゃって………」


 誰かに抱き締められていると、確かに安心してほわほわっとして、相手に全部委ねてしまう程に幸せを感じるけれど……今はそれよりも、もっと大事で俺にとって重大なことを見付けてしまったから。


「なんだろ?胡衣を抱き締めているとさ。支配感っていうのか……この身体全部俺のものだって思うと……もう興奮しちゃってしちゃって……好き勝手するのにも申し訳ないって気持ちあるけれど、胡衣だとお互いがお互いに感じまくってるからお互いがお互いを好き勝手するっていうか……」


 あ、危ない危ない。

 危うく興奮してこの場で胡衣を押し倒すところだった。

 流石に公開プレイは良くないよね。うんうん。

 胡衣の感じている愛らしい姿なんて、誰にも見せてやるもんか。


「そんな、かいちょ……さま………」


 海くんは一体何を期待していたんだろう?

 もし仮に海くんがタチだったとしても、胡衣がタチだったとしても、きっと海くんの扱いは変わらなかったと思うけど。

 それに啓次と浮気するあたり、会長の親衛隊でもないだろうし。


「俺は、まだ諦めねぇからな……胡衣…………」


 いや、風紀委員長は流石に復縁は無理だと……不可能とさえ思うような。

 今の今まで胡衣が耐えていたのだって奇跡に近いんだし。


「そんな……章平もいなくなって………海さえも………」


 うん。啓次、お前はもうどうでもいいや。

 俺には今から胡衣との楽しい楽しいお昼が待っているんだ!


「章平……も、行こう?」


「うんっ」


 腕を絡ませてくる胡衣の雰囲気がエロい。

 とてつもなくエロい。

 ああ、タチとしての薔薇色人生(胡衣とのラブラブライフ)が待っていると思うと心ときめくなぁ!

 スキップでもし出しそうな俺の背後で、“浮気”に振り回され呑み込まれた三人がそれぞれで苦々しい呻き声を上げていた。



END.




*オマケ


「あんなところでエロい雰囲気出すな。俺まであてられて……その………」


「もじもじしてどうしたの?胡衣。これから音楽準備室でも行こうか?あそこなら誰も来ないと思うし……思う存分、可愛い声を上げられるよ?」


「ふ…ッ……」


(涙目で可愛い可愛い!防音設備無駄に整っている学園校舎万歳!カタカタ震えて欲情してる胡衣がエロくて本当に可愛いごちそうさまですいやまだいただきますしてない可愛いかわry)



少しでも笑って頂けたのであれば嬉しい……です?

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