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アズの村へ その4

「盗賊ですか?」

 出来れば出会わずに済ませたい職種の人たちだと晃一は思った。

「そうなんじゃ。そいつは村の祠に安置されていたセキリュウのウロコを盗んだそうだ」

「ウロコですか……」

 それはどんな物なのかと晃一は考えたが、フォドの方は何やら彼の反応を訝しげに見ている。

「コーイチ。あの有名なセキリュウを知らんのか?」

 その問いかけに、晃一は“しまった”と心の中で叫ぶ。セキリュウというのは、この世界ではかなり有名なものらしい。

 どう誤魔化そうかと、彼は慌てて言い訳をした。


「あの、俺の住んでいた場所には、そういう話が伝わっていなかったから……。よければ詳しい話を教えてください」

 一気にまくし立てたら、フォドは納得したらしい。それ以上、詮索をしたりはしなかった

「あの戦争が伝わっていないということは、随分と不便な場所から来たようじゃな」

 そう言って彼は、セキリュウの話をし始める。


「記録によると今から約300ネーウ前に、ルーティン公国というところで一匹の赤い竜が現れたのだ」


 竜はとても凶暴で、ルーティン公国に甚大な被害をもたらした。

 そしてルーティン公国には宗教上、とても重要な大神殿があった。

 ゆえに各国から選りすぐりの武人たちが竜退治に向かったが、誰一人として生きては戻っては来ない。

 神の威光も赤き竜の前では無意味かと人々が嘆いたとき、一人の勇者が竜を退治した。


「このときの勇者の一太刀で赤竜セキリュウの身体から離れたウロコが、アズに伝えられていたんじゃよ」

「そうだったのですか」

「その宝は2ネーウ前に突如として行方不明になったんじゃが、村人はその事実を隠してしまったんじゃ」

「えっ」

「村はもともとウロコという勇者のいた証を守り、他の地域の人々は祠と村に寄付をすることで伝説となった勇者の加護を願っていた。

 だから収入が無くなるような事実を公表できなかったんじゃ。

 ところが最近、隣のカレスト国で掴まった盗賊がウロコをアズの村から盗んで近くの沼に捨てたと言い出した」

「……」

 信仰の対象が既に盗まれていて、祠の中に存在しないというのは確かに村にとって大問題であった。

「明日にはカレストの役人が村へ来る。あそこからの寄付は結構多かったらしいから、本物が無ければ村人はただではすまんじゃろう」

 歩き続けた二人は、ようやく森へと到着する。


 ところが、いくら森の中を探索しても、沼どころか水たまりすら見つけられなかった。


「逃げられたようじゃ……」

 フォドは悔しそうに呟く。

 晃一も村に襲いかかるであろう災難を想像して、憂鬱になってしまった。

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