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初心者専用宿屋 その3

 そんな晃一の様子を見て、仕事で尋ねている方はあっさりと話題を変える。 

「まぁ、そんな事は本人にしか分からん話だ。質問を続けるぞ」

「はい」

「この世界について“外"から説明を受けているとは思うが、ここではそれなりに仕事で報酬を得ないと旅を続ける事は出来ない。

 何かやりたい職業はあるか?」

 この問いに晃一は緊張で胸が痛くなった。

「それが、俺は武器とか使えないんです」

 異世界を探索するには、身を守る事も考えなくてはならない。

 この説明は元いた世界で何度も聞いた。

 それでも諦められず、強引に送り込んでもらったのである。

 あの時は何とかなると思っていたが、実際に異世界へ来ると問題の重大さが重くのしかかってくる。

 しかし、ボルボロアは紙に何かを書きながら軽く返事をした。

「身を守れれば、一人で旅を続けられる。その能力がないのなら、誰かと協力して旅をすればいいだけだ。

最初から悲観するのが趣味なら止めないが、まずはやれる事をやってみてはどうだ」

「やれる事ですか?」

「実は兄ちゃんが捕まえた“運試しの魚"なんだが、あれは食えない。

 ジュデイボという魚なんだが、俺のような料理人でも美味い料理が作れない代物だ。

 だが、ここから南に3チリ行った所にある『アズ』の村に持っていけば面白い事が起こる」

 楽しそうに言われても、晃一には何の事だか分からない。

 それに、ボルボロアの料理の腕も信じきれないところがあった。

 ただ、1チリは4キロメートルだと前もって説明を受けていたので、おおよその距離を頭の中で計算する。

「どんな事ですか?」

 彼の言葉にボルボロアは豪快に笑う。

「この場で言ったら面白くないだろ。行けば分かる話だ。

 ジュデイボは運試しの魚なのだから、兄ちゃんのこれからの旅を占う意味もある。

 こことアズの村を往復して、よく考えてみるといい」 

 彼はそう言って立ち上がると、晃一を部屋に案内した。

 外は既に夜となっており、初心者が出歩くのは死を意味する時間になっていたのである。


 彼に用意されていた部屋は簡素な内装だったが、ヘトヘトに疲れている晃一にはどうでも良かった。

 安心して眠れる場所がある。

(なんだか旅行会社が説明してくれた所と違っている気がしたしたけど……、良かった……)

 緊張で眠れないかもと彼は思ったが、実際にベッドに潜り込むと直ぐに瞼が重くなった。


 そして次に晃一が目を覚ました時、窓からは光が差し込んでいた。

 彼はおおよその時間帯に気がつく。

(もしかして……もう朝なのか!)

 異世界に来る前は、宿屋に泊まっても眠れるのかと考えていた。

 だが実際は熟睡しており、夜中に一度も起きなかったのである。

 彼は慣れない服を何とか着替えると、慌てて部屋を出た。

 昨日は宿屋を目的としたが、今度は場所もよく分からない村へ行かなくてはならない。

 もしかすると不慣れな自分では、民宿の主人の言う移動距離・約12キロメートルでは済まないかもしれないのだ。

 晃一は素直に、弁当について宿屋の主人に尋ねてみようと思った。 

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