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アズの村 その2

「コーイチは村の救世主じゃ」

 夕食の時、酒を飲みながら村長は何度も同じ事を口にした。そういう酒癖を持っているらしく、フォドなどは「2回目からは聞き流してくれ」と言っている。

 しかし、食事場所の雰囲気は悪くはなかった。


 実際に、グロテスクな魚の腹から村の宝が現れたということで、村人たちの間に安堵の雰囲気が広がる。

 晃一もこの展開にほっとした。最悪の事態は免れたのだ。

「急ぎの旅でなければ泊まってくだされ」

 そう村長に言われたとき、彼は空を見上げた。いつの間にかオムニアムの太陽は大地に沈みつつある。

 夕暮れだ。異世界は夜の時間になろうとしている。彼は一瞬迷った。

 しかし、旅行会社からも絶対に無理はするなと言われている。

「今夜はこの村に泊まった方がいい。最近は獣たちも少し凶暴になっているし、たまに変な怪物も見かけるようになった。」

 フォドの提案により晃一は速攻でアズの村に泊まることを決意した。何しろ彼らの言う"変な怪物"というものには絶対に会いたくはない。むしろ今のうちに色々と話を聞いてみようと考えた。

「では、お願いしても良いですか?」

 その返事に村長は嬉しそうだった。


 村長のところで出された食事は、穀類と野菜のスープに肉まんの皮部分が実はパンみたいなものが出される。

 美味しそうな薫り。大丈夫かもと思うと、胃が空腹を訴える。

「いただきます」

 恐る恐るスープを飲んでみると、塩味が効いていて美味い。

「美味しいです!」

 すると料理を出してくれた女性が嬉しそうに「たくさん食べてね」と言った。 


「ところで、コーイチはこれからどうするんじゃ?」

 フォドに尋ねられて、晃一はどこから説明するべきか考えた。

 そして彼は意を決して旅の目的を口にする。

「実は友人が行方不明でして、こっちの方に向かったという話を聞いて探しているところなんです」

「家出か?」

「分かりません。ある日、突然いなくなったのです」

 確かに親友は好奇心が強いところがあったが、まさか異世界旅行をする会社を見つけて実際に旅立つとは思っても見なかった。

 しかも、この旅行会社は客の安全に関しては、一切関知しないという姿勢なのだ。


「異世界を旅するのですよ。自分の命は自分で守ってください」


 実際のところ水土中みとなか旅行企画というのは異世界に繋がる通路の番人のような会社で、それ以上の手助けはあまりしない。担当者から彼は面と向かって言われたのである。

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