ヘンゼルとグレーテル(だと森で暮らす魔女は言った)
ある村に貧しい樵一家が住んでいました。
お父さんとお母さん、そして兄と妹のきょうだいが、固い黒パンひとつを4人で分け合い、牛乳は水で10倍希釈して飲んで生活する様な、貧しい家でした。
その年は日照り続きで、お母さんは少しでも食糧を保存させる為に腹を痛めて産んだきょうだいを森に棄てる事にしました。
「子供なんて、また此処から産み落とせばいいのよ」
お母さんは自分の腹を力強く叩いて言いました。
お腹が空いて眠れずにいたきょうだいはこのババ((ry…、お母さんに一泡吹かせてやろうとこっそり外に出て庭の小石を拾い集めました。
お父さんが趣味で毎日磨いている庭の小石は、月明かりを浴びるとピカピカと白く光り輝く事を知っていたからです。
これで例え森に捨てられても安心だ、ときょうだいはニコニコと笑っていました。
次の日、きょうだいはお母さんに連れられて森で野いちごを摘む事になりました。野いちごの季節は過ぎようとしているので、お母さんがふたりを森に棄てるつもりでいるのは火を見るよりも明らかでした。
1mくらいの間隔で小石を道に落としながら歩いていたので、日が沈んで夜になり、月明かりが差す頃になればきょうだいは仲良く手を繋いで帰宅する事が出来ました。
驚いた表情を顔いっぱいに浮かべているお母さんを見て、きょうだいはお腹を抱えて笑い転げるのでした。
庭の小石が無くなっている事に気が付いたお父さんは、子供達が石切り遊びをして無くしてしまったに違いないと思って庭に残っていた小石を蔵の中にしまい込みました。
こちらの発言に耳を傾けず、決め付けて掛かるジジ((ry…、お父さんに愛想を尽かしたきょうだいは、お父さんが仕事をしている横で木の実を集める―――フリをして、森の最奥を目指して歩きました。
村人は、子供達に「森には恐ろしい人食い狼が出る」と教えて聞かせますが、森の最奥には、きょうだいのおばあさんに当たる女性が住んでいる事を知っていたからです。
転んで怪我をしたり、空腹で歩けなくなりながら、ふたりはやっとの思いでおばあさんの家に辿り着きました。
「シュタイン、ヴィントレーゼ。良く来たわね。さあ、中に入って頂戴。長い事ロクに食べていないのでしょう?温かいスープと麦がゆがあるわ。焦らず、ゆっくり食べなさい」
おばあさんは魔女で、収穫した作物や牛乳に長期保存を可能とする魔法を掛ける事で不作を乗り切る事が出来ます。
久しぶりのまともな食事に、ふかふかの布団でぐっすり眠った後、家での出来事をおばあさんに伝えました。
森に子供を棄てる事に躊躇の無い母親や、子供の発言に一切耳を傾けない父親の傍にいたくはないと言うと、おばあさんはふたりを養育する事を決めました。
「森の子供になるからには、新しい名前が必要ね。―――ヘンゼルとグレーテル、なんてどうかしら?」
ふたりは喜んでおばあさんの手伝いをしながら暮らす事になりました。
ヘンゼルはおばあさんの家畜や畑の世話をして、グレーテルはおばあさんと家の中の仕事を覚えました。
ふたりが良く働いてくれたので、家の中には村人に振る舞う事が出来る程の食べ物の貯蓄が出来ました。
そこでおばあさんは食べ物を持って森を出て、村人達に振る舞いました。
村人達の列をかき分けて、息子夫婦が近付いて来ました。
「子供達がいなくなった。何か知らないか」
「あら、恐ろしい魔女の手助けは無用と孫達が産まれた時にそう言ったのは貴方達でしょう?」
それなのに魔女に助けを求めるのか?とおばあさんが言うと、息子夫婦は苦虫を噛み潰したような顔で去って行きました。
暫くして、国の役人がおばあさんの家にやって来ました。
どうやら息子夫婦は、おばあさんが孫を連れ去ったと役人に泣き付いた様です。
ヘンゼルとグレーテルはおばあさんの魔法で姿が変わっていたので、役人は気が付く事はありませんでした。
こうして、ヘンゼルとグレーテルはおばあさんと仲良く末永く暮らしたのでした。




