うちのパーティーのリーダーが勇者一行の仲間だと神託が下ったらしい
ジャンル別短編日間3位
ジャンル別全て日間4位
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うちのパーティーのリーダーである剣士が勇者一行の仲間だと神託が下ったらしい。
迎えに来た王都からの使者がそう宣言し、街はお祭り騒ぎになった。
明日街を発つ剣士の為に彼のパーティーは酒場で送別会を開く事にした。
「どうだ!俺はお前ら愚民とは違うんだぜ!」
意気揚々とそう言ってエールを勢い良く飲み干す剣士の姿に魔法使いが言った。
「お主、大分人格破綻者じゃが、勇者の仲間で本当に間違い無いのか?何か不正とかやっておらぬよな?」
「やってねーよ!人聞き悪いな!」
「元仲間に向かって愚民とかいう奴に世界が救えると思えない」
「責任とか誰かの為と言う言葉から一番遠い男」
「不敬罪で訴えても良いんだぞ?あ、そうだ」
何かを思い出した様子で荷物を漁った剣士は「あったあった」と彼が趣味で貯めている『自分にナメた態度を取った奴の前歯』が入った瓶をテーブルに置く。
「居なくなる俺の形見にお前らにやるよ」
「それが形見で本当にええんか?」
「いらなすぎる」
「形見と言う言葉に対する冒涜」
「ボロクソ言うやんけ、お前らの前歯をこの中に加えても良いんだぞ?」
散々な言われ様に剣士の額に青筋が浮かぶがそれを気にも止めずに「てかさー」とシーフが話を続ける。
「勇者さまって噂によると滅茶苦茶高潔な人だって話だけど、剣士そんな人とやってけんの?ドブで生きる生物は清流では生きられないんだよ?」
「誰がドブ暮らしじゃ!」
「公表されている他のお仲間はいずれもお貴族様なのじゃろ?お主、馴染めるのか?」
「剣士は高潔とは程遠い存在」
「そーゆーこと言っちゃうか、お前ら」
「嘘は吐かない主義」
「何かっこつけてんの?ブッ潰すぞ?」
「にぎゃ~」
ヒーラーの頭を両サイドから拳で挟み、力を入れてぐりぐりと傷め付ける剣士の粗野な姿にこれが本当に神託の下った選ばれし人物なのかと魔法使いとシーフが呆れて肩を竦める。
「ほれ、新しいエールが来たぞ、ヒーラーを放してやらんか」
「お、きたきた」
ヒーラーの頭から手を放し、ジョッキを受け取り旨そうに眼を細めてエールを飲む剣士。
そんな彼を涙目で頭を押さえながらヒーラーが指差す。
「野蛮人」
「もう一回行っとくか?」
「こいつが粗野で野蛮人なのは今更じゃろ」
「そうそう、オマケにガサツでデリカシーも無いってのは今更だよね」
「俺への悪口が上乗せ方式なのは何なの?勇者の仲間に選ばれたからって嫉妬は止めて貰えます~?あーあ、これだから愚民は」
「……でも剣士が居なくなるのは寂しい」
「ヒーラー、虐めてごめんな。次何食う?コカトリスのから揚げ食うか?」
「食べる」
「すみませーん!」と店員にから揚げを注文する剣士を見ながら「それにしても」と魔法使いが口を開く。
「お主が抜けるとなると寂しくなるのう」
「剣士が居たから助かった事も多かったもんね」
「賑やかで良かった」
「お、何だかんだ言いながらお前ら俺の事大好きだな」
「今生の別れだからね」
「初めて入ったパーティーがこのパーティで良かった」
「口は悪いし、粗野じゃし、乱暴じゃが戦闘中は頼りになるリーダーじゃったよ」
「剣士は剣を持ったらピカ一だったよね。新しく剣士を募集して同じ位の人が来るとは思えないよ」
「まあ、実際勇者の仲間として選ばれる位じゃしな」
「今後が不安」
「おっと、俺はだんだん調子に乗るからそこら辺で煽てるのは止めときな」
「よせやい」と鼻を擦る剣士にもうこのやり取りは無いのかと仲間達はしみじみする。
ジョッキを置いた剣士はキリッと表情を引き締め宣言した。
「見てろよ、俺は勇者の仲間になって富、名声、金、女、全てを手に入れてみせる!!」
「そこは嘘でも魔王を倒すとか平和を取り戻すとか言おうよ」
「目指すは酒池肉林!」
「お主、本当に世界救う気あるのか?」
「先行きが不安」
我欲全開の様子に「大丈夫かコイツ」と仲間達は胡乱な目になる。
「まあ……あまり気負い過ぎても良くないからの、これくらい私欲にまみれた思考の方が丁度良いのかも知れぬ」
「まあ、世界を救いに行くんだしねぇ」
「丁度良いの、かな?」
「大船に乗った気で俺の活躍を期待してろよ!」
ガハハハと豪快に笑う剣士と仲間達は彼の今後の活躍を願って乾杯をし、翌朝早朝に彼は街を後にした。
そうして一年後、魔王が無事に討ち取られ凱旋する勇者一行の姿が乗った新聞が号外として街に配られた。
写りは荒いが元気そうな元リーダーの姿にあれからそれぞれに別のパーティーに移籍した三人は久しぶりに集まり、彼の無事の帰還祝いを行う事にした。
何やかんや言いつつも剣士の事を心配はしていたので無事に彼が生還したのが嬉しかったのだ。
いつぞやの酒場で魔王討伐と彼の無事を祝って乾杯する。
「よ、久々!」
「あれ、元リーダーじゃん!」
「久々!」
「おお、元気そうじゃな!」
それぞれの近況を話しながら飲んでいた三人の前に正に時の人である剣士が現れた。
思わぬ人物との再会に三人は驚く。
無事に魔王を倒し、世界を救った英雄達の一人が何故こんな所にいるのかと驚きと困惑で首を傾げる三人を余所に自身の荷物を漁っていた剣士がテーブルの上に瓶を置いた。
「あ、これお土産」
瓶の中には金や紫や黒といったカラフルな色合いの四角かったり三角だったりする指の第一関節幅程の大きさの固形物達が入っている。
「なんじゃコレ?」
「喧嘩売って来た魔族の幹部と魔王の前歯」
「本気か?」
「世界一キショいお土産」
「お土産と言う言葉に対する冒涜」
「よせやい、照れるじゃねぇか」
「「「褒めてない(とらん)」」」
嫌すぎる初志貫徹に三人がドン引きする。
魔族は歯の色や形が人間と違って個性的だと今後の人生で最もいらないであろう豆知識が三人に齎された瞬間だった。
そもそも、何故彼はここに居るのか。
「凱旋パーティーやったって昨日街で配布された号外に載ってた」
「ああ、パーティーは二週間位前にやったぞ。ここは王都から離れてるから号外も遅いんだよな」
「剣士は魔王倒したから富、名声、金、女を手に入れて王都で夢だった酒池肉林するんじゃなかったの?」
「お主なんでここにおるんじゃ?」
元パーティーメンバー達からの疑問に剣士は気まずげに視線を逸らし、小さな声でポツリと言った。
「……道中の素行の悪さで祝賀会で勇者パーティーから追放された」
剣士の言葉に元パーティーメンバー達は腹を抱えて爆笑した。




