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03ー② 王都

本日2回目の投稿です!


ミュゲは穴が空く程見られていたが、女性はいきなり深々とお辞儀をした。


「私はアスラン王太子専属侍女長のロスベータ・ヘイツと申します。数々の無礼をお許しください」


どうやら、追い返されずにすみそうである。

「私のあとについて来て下さい・・」

そう言うと、侍女長はカツカツと靴音を響かせて、早歩きで歩きだし、人から隠れるように他の建物に入っていく。


ミュゲは早歩きと、たまに駆け足で後に続いた。

訳の分からない緊張感で、ミュゲはどこに行くのか質問することさえできない。


侍女長執務室と書かれた扉の前に来ると、ミュゲは存在を隠すように押し込まれる。

その時のミュゲは、不安で掌が汗でベットリになっていた。


部屋に入ると、ようやくロスベータ侍女長が口を開く。

「この手紙は本物だと判断しました」

侍女長がミュゲに手紙を返してくれた。


改めてホッとするミュゲ。


「でも、なぜダンメルス家のご令嬢が侍女なのです?」

侍女長は訳が分からないと頭を横に振った。

それもそうだ。辺境伯のご令嬢が侍女として、しかも下働きの侍女として王宮を訪ねるなんて大問題だ。

つい、ロスベータの口調も強くなる。


しかし、その疑問はミュゲにも分からない。

「えっと・・・それはこの手紙に助けて欲しいって書いてあって・・」

ミュゲは呼ばれたから来たのであって、「どうして来たの?」と問われても答えられない。


「あの、こちらの侍女の服が手紙と一緒に送られて来たので、えっと・・侍女として王太子殿下をお助けするものだと思って来たのですが・・?」

鞄から、きちんと畳んであった侍女服を取り出した。


「・・・なぜ、侍女服が? しかもダンメルス辺境伯のご令嬢に?・・もしかして・・」

侍女長は頭に雷が落ちたように侍女服を見て、衝撃を受けている。


侍女長がショックを隠しきれない面持ちで、わなわなと震える手を口に当てた。


侍女長に問われたところで、ミュゲにも分からない。

そんなことはこっちが聞きたい。

とは思うが、侍女長があまりにも動揺しているので、彼女が落ち着くのを待った。


だが、頭を抱えて唸っている侍女長の様子を見て、ミュゲは自分の状況を把握した。

ここまで来たが、どうやら何もかも間違いだったらしい。

そう思ったミュゲは、広げた侍女服をもう一度きちんと畳み直し、鞄にしまって帰り支度をする。


「すみません、なんか間違えてここまで来てしまって・・。帰ります」

ぺこりと頭を下げて踵を返した。


が、侍女長の手が異様に早く動いた。

ミュゲの運動神経もビックリの素早さだ。


侍女長はミュゲの鞄をガバッと掴むと機敏に動き、彼女を椅子に座らせた。


「貴女の元に宰相はドレスを送るはずだったのです。ですが、途中で侍女服にすり変わってしまった」

侍女長は説明をすると同時に、深くため息をついて、更にボソッと呟く。

「宰相の所まで、ザラ様の手が回っているなんて・・何て事なの」


悔しそうにしていたが、再びミュゲを見ると少し微笑んでいるように見えた。


「でも、侍女服を見ても来てくれたミュゲ様には、誠にありがたい限りです。だって、ミュゲ様はあの(○○)ダンメルス辺境伯のご令嬢なんですもの!! こんなに心強いことはありません」

ダンメルス領の特殊な使命を理解して、更にはその子孫が受け継ぐ強さを、ロスベータ侍女長は知っていた。


深く頭を下げる侍女長。

と、ガバッと頭を上げミュゲが逃げないように眼光鋭く、必死ですがる。

「ミュゲ様にお願いがあります。本来、ミュゲ様にお願いするような事ではありません。ですが、そこをなんとかお願いします!! どうか侍女となってアスラン殿下をお守りして欲しいのです。そのためにはいかなる手を使っても構いません」

侍女長の圧が物凄くて、一瞬怯んだが、ミュゲはここまで来た決意を思い出した。

「はい。勿論、そのつもりです!」

ミュゲははっきりと言いきった。

すると、侍女長は安堵の表情で体の力が抜けたようだった。

「よかった・・」

侍女長がドサッと椅子にへたり込んだ。だが、すぐに背筋を伸ばし、今のアスラン王子の状況を語り始めた。


ロスベータ侍女長の話を聞くと、本当に厳しい環境で、ミュゲは驚きを隠せない。

ロスベータ侍女長の話は、今後の説明になる。


「私は王子の専属侍女長とは名ばかりで、現在は思うように、お側でお仕えすることもままならない状況なのです。今後ミュゲ様にお会いしても、横柄な態度を取るかも知れませんし、呼び捨てにしまう事もあるでしょう。どうぞお許し下さい」

彼女は長く頭を下げ続けた。


「はい、勿論覚悟してます」

ミュゲの決意の返事に、ロスベータ侍女長は嬉しそうに頷き、言葉を繋げた。


「ありがとうございます。更にもうひとつお願いが・・。この王宮で暮らす上で大事なことを沢山覚えて頂かなければなりません。時間がないので、駆け足での授業となりますが、頑張ってついて来てくださいね」


ミュゲは勉強と聞くとさっきまでの勢いはなくなるが、それでもなんとか頷いた。



侍女長のヘイツ家は代々王太子殿下を守る家系で、その古くからのしきたりは流石のザラも手だしが出来なかった。

だが、侍女長の知らぬ所で王宮の侍女がどんどん入れ替わり、もはや侍女長一人の力では、アスランを守れなくなっていた。

しかも、ロスベータに、一人ではこなせない量の仕事が割り振られるのだ。

少しでもアスランの傍にと思っているが、この仕事量。なんとか仕事を終えアスランの様子を覗きに行こうとすると、邪魔が入り、食事を運ぶだけで精一杯だ。思うようにお世話ができない日が続く。


そんな時にミュゲが現れたのだ。

すぐにこの喜びを宰相に知らせようとしたが、ロスベータは思い止まる。


彼の身近な人物で、間違いなくザラに通じている者がいるのだ。

しかも、一人ではないかもしれない。孤立無援の侍女長にとって、せっかく出来た味方を失う訳にはいかないのだ。


侍女長は辺境伯の高位のご令嬢を、王宮に仕える者の中で、最下層に当たる職務につける。

この判断に、さすがのロスベータ侍女長のサインする手が震えた。


その後、ロスベータ侍女長が信頼している女性にミュゲを任せることになった。

その女性は下級侍女を取り纏めているので、ミュゲは表向き、下働き侍女としてすんなり登録された。


流石のザラも、末端も末端の床磨きの侍女まで目を光らせてはいないはず。

そして、ミュゲはその日から二日間、王宮の危険人物を詳しく教わり、徹底的に王宮の間取り図を覚えさせられた。

秘密の抜け穴も・・


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