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【完結】僕の大事な魔王様  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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65.産まれてまた産まれる

 飛んできたのは、ほんのりピンクの丸い物体で。僕は両手を目いっぱい伸ばした。ベル様は僕を抱っこするのに片腕を使っている。だから僕が抱っこすればいい。


「うわぁ!」


「よし、掴まえた」


 僕が両手で受け止めたのが、たぶん卵だ。落ちそうになったところを、ベル様が魔法で固定した。ふわふわと浮いている丸いピンクに、僕の弟か妹が入っている。大きさは僕の半分くらいだった。


「ん? 変だね、まだ何か」


 お祖母ちゃんが、ぐいと鼻先でお腹を押す。お母さんは「いてて」と顔を歪めた。


「まだ奥にいるの」


 あるんじゃなくて、いるの! そう訴えた。慌てたお祖母ちゃんが、手も使ってお腹を揉み始める。お母さんもぐっと力を入れて、ぽんと音がした。さっきより小さいけど卵だ! 今度は水色だった。これも僕が受け止める。ベル様の魔法に包まれて、卵は干し草に並べられた。


「二つだ……」


「二人だな」


「ああ、ふた……え、えええ?!」


 僕の呟きをベル様が修正し、お父さんが大騒ぎした。お祖母ちゃんに「静かにしなさい、魔王陛下の御前だよ」と叱られる。大人になっても叱られるんだね。大人は注意されなくて、注意する側の人だと思っていた。


「疲れたぁ」


 お母さんがぐったりと横たわる。お父さんは駆け寄って、汗の滲んだ鱗をぺろぺろと舐めた。あれは知ってる。愛情表現って言うんだ、お祖父ちゃんが教えてくれた。得意げに胸を張ってベル様に説明すると、お祖母ちゃんが「おやおや」って笑う。


 小さい方が水色、大きい方がピンク。どっちもつるんとして、まん丸より長細い。近づいて撫でたら、ピンクは熱くて水色は冷たかった。


「温度が違うね」


「並べて孵すのは難しそうだ」


 ベル様もそう思う? 僕も同じだよ。だって冷たい方は温かくなっちゃうし、熱いのは冷めちゃう。お料理と同じだよね。そう言ったら「ああ、まあ……」と変な顔をされた。お料理に例えたらダメなのかな。次は違う物……お風呂のお湯で表現しよう。


 両方の間に僕を座らせ、ベル様は頭を撫でる。温かいのも冷たいのも平気だから、僕が間にいると元気なんだって。でもお家に帰る時はどうしよう。


「熱いピンクの卵は、火竜の巣で孵す方が早そうだ」


 お父さんはそわそわしながら、ピンクの卵を抱き寄せる。水色の方をお母さんが抱えた。卵が二つだけど、お母さんは一人。でもお父さんもいるから足りる。指を折って数えた僕は、にっこり笑った。


「お父さんとお母さんが抱っこすればいいね」


 僕はベル様に抱っこされるから平気だよ。ヤキモチしたりしない。そう言ったら、お父さんは変な顔をした。寂しがるからそんなこと言ってはダメよ、とお母さんが僕に告げる。そうなの? 寂しい……卵がいても? 首を傾げる僕に、ベル様が違う例えで教えてくれた。


 お祖母ちゃんと仲良くしてても、お祖父ちゃんが遊んでくれなかったら寂しい。そういうお話なんだ。それなら分かるよ。僕はベル様と一緒に暮らしてるけど、お父さんやお母さんも大好きだから。

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