40.お父さん達に話したらダメ
僕は森で果物を取って、お肉はお祖母ちゃんが捕まえた。お母さんと一緒に水浴びも済ませる。いつベル様が帰ってきても平気。
水浴びの時に、ベル様が入れてくれた温かい湯の話をした。お母さんの大きさだと入れないけど、お風呂も見せる。土魔法で作ったそれをじっくり眺め、お母さんは大きいお風呂を作った。慣れた様子で水を満たし、見ていた耳長のお姉さんが沸かす。
「同じだ!」
凄いと喜ぶ僕を見て集まった人達が、お風呂に驚いていた。でもすぐに納得している。温かいお湯に入ると、体がぽかぽかする。さらに眠くなるんだ。だから眠る前に入るんだよ。そう説明したら、お母さんに言われた。
「オリアス……お父さんに話してはダメよ」
「そうなの?」
頷く顔は真剣なので、僕も真面目な顔で首を縦に振る。そっか、お風呂に入った話はお父さんにはしない。じゃあ、お祖父ちゃんは?
「ラウムは平気だと思うけれど、婿殿にバレるだろうね」
お祖母ちゃんがそう呟いたので、お祖父ちゃんにも内緒になった。男の人はお風呂嫌いなの? でも皆は楽しそうだし、ベル様もお風呂好きみたいだけど。
大きく首を傾げる僕を、ひょいっと背中に乗せたお母さんがお風呂に入る。お祖母ちゃんが外からお湯をかけてくれた。大きいから沈まないように気をつける。温まって、外へ出ると風で乾かしてもらった。
「ありがとう」
魔法が得意な吸血鬼のおねえさんにお礼を言う。可愛いと頭を撫でられた。僕は可愛いじゃなくて、カッコいい奥さんになりたい。ベル様と並んでも見劣りしない立派なドラゴンになるぞ。
ぐっと拳を握っていたら、お父さんの声がした。遠くから「帰るぞ」と知らせる声だ。細くて甲高い声は、吸血鬼の人達も聞こえたみたい。凱旋だと喜んだ。
「がいせんって、なぁに?」
「勝ったのよ」
きょとんとした後、嬉しくなってぴょんと飛び上がる。勝った! さすがは僕の旦那さん、ベル様は本当に強い。最強の旦那さんがいる僕は幸せだ。くるくると回っていたら、吸血鬼のおねえさんが手を叩いてくれた。その音に合わせて、またくるりと回る。
縦穴から大きな影が降ってきた。お祖父ちゃんがすぐに翼を畳み、お父さんが続いた。その背中からベル様が飛んだ。ふわりと着地し、僕へ手を伸ばす。屈んで微笑む旦那さんへ、僕はぺたぺたと走った。
広げた手を掴んで、抱っこしてもらう。いつもの腕、いつもの温かさ、いつもの綺麗なお顔。ベル様に会う前のことを忘れちゃうくらい、僕の中はベル様でいっぱいだ。
長くて黒い髪はさらさらだし、艶のある黒い肌も好き。綺麗なお顔は僕を見ると微笑んでくれる。
「おかえりなさい、ベル様。大好き」
「帰ったぞ、ウェパル」
ベル様に頬を擦り寄せていると、小さな文句が聞こえた。
「俺も帰ったんだが」
お父さんだ。
「邪魔したらいけないわ、あなた」
お母さんに引っ張られて、少し先でぎゅっと抱き合った。お祖父ちゃんも、お祖母ちゃんに口付けしている。他の人達も仲間同士で挨拶したり、肩を叩き合ったり、抱きしめ合う人もいた。
「ベル様が勝って嬉しい」
「しばらく、人間の襲撃の心配はいらないだろう」
僕を抱っこしたまま、ベル様は魔族の皆に説明を始める。安心したのとお風呂入って温かいのと、僕はうとうとと目を閉じた。眠っちゃいそう。




